司法試験に最短で合格するための効率の良いスケジュールの立て方

「司法試験に合格するためにはどういうスケジュールを立てればいいんだろう」
「法科大学院を卒業した後や、予備試験を合格した後、司法試験までどうやって過ごせばいいだろう」
など、勉強のスケジュールの立て方で迷われている方も多いかと思います。
司法試験は法律の勉強を開始してから合格までは数年かかる試験なので、計画の立て方に苦労されている方も多いでしょう。
また、予備試験に合格した場合や、法科大学院に合格した後にどのように勉強を継続して行けばいいのか分からない方もいるかと思います。
本記事では、司法試験に合格するための効率の良いスケジュールの立て方をご紹介していきます。
【目次】
1.司法試験の試験日程
2.最短で司法試験に合格するために抑えるべきポイント
2-1.効率のいい勉強をするために予備校を利用する
2-2.アウトプット重視の勉強法
3.スケジューリングのコツ
3-1.ゴールから逆算して考える
3-2.目標を細かく設定していく
3-3.計画は毎日見直す
3-4.目標の再確認
4.科目ごとの関連性と勉強の優先順位
5.最短で合格するための具体的なスケジュール
6.年内の勉強方法
6-1.論文式試験対策
6-1-1.予備校のインプット講座の受講
6-1-2.論文講座の受講
6-1-3.過去問・問題演習
6-2.短答式試験対策
7.年明け~4月までの勉強法
7-1.論文式試験対策
7-2.短答式試験対策
8.直前期の勉強法
8-1.論文式試験対策
8-2.短答式試験対策
9.まとめ
1.司法試験の試験日程
2023年(令和5年)より、毎年5月に行われていた司法試験は7月に行われることとなりました。
※詳しくはこちらもご覧下さい。
→司法試験制度とは
司法試験の合格率は平均45%程度と聞くとそこまで低くない数字に聞こえるかもしれませんが、45%前後というのはあくまでも法科大学院修了者や予備試験合格者など実力のある受験生の中での数字であり、法科大学院入試や予備試験からの合格率を計算するとかなり低い数字になるため、無計画に勉強していてはいつまでたっても合格することはできません。
しかし、逆に受験資格を得る事さえ出来れば4~5割程度は合格できる試験であり、予備試験に合格すれば9割以上が合格することができる試験です。
そのため、綿密な計画を立てて、コツコツと勉強を継続していれば誰でも突破できる試験であるとも言えるのです。
2.最短で司法試験に合格するために抑えるべきポイント
2-1.効率のいい勉強をするために予備校を利用する
司法試験では、むやみやたらに使用教材を増やさないというのも、合格における重要な要素の一つです。
司法試験に関連するいわゆる基本書や演習書は山のように存在します。試験への不安から、新しい知識を入れるために様々な方法で知識を学びたくなる気持ちは分かります。
ただ、限られた時間の中で結果を出すためには、100の曖昧な知識より10の確実な基礎知識を付けることが重要になります。
使用教材や判例集はできる限り一つに絞り、むやみやたらに手を広げないようにしましょう。
その点、予備校の提供する講義・教材は、学習すべき重要なポイントがまとめられており、自分で教材を吟味する手間を省く事が出来ます。
また、答練等を定期的に利用する事で、受験生の中での現在の自分の立ち位置を確認することができ、また答練スケジュールを勉強のペースメーカーとして利用する事も出来るでしょう。
スケジュールに関しても、予備校のスケジューリング制度を利用すれば、効率的にスケジュールを立てることができます。
予備校にも様々なコースがあるので、合格するために効率良く各講座や制度を利用しましょう。
2-2.アウトプット重視の勉強法
知識の穴をなくす為に、インプットを完璧にしてからアウトプットの勉強に移行しようと考える方が多いかと思います。
たしかに、知識を網羅的に身につけることは、他の論点を理解し、その深度を深めるためにも重要であることは間違いありません。
しかし、司法試験、特に論文試験は単に知識の量を吐き出すだけの試験ではなく、法律をもって具体的な事案をどのように解決するのかを検討させる試験です。
そのため、いかに知識をインプット出来ていたとしても、それを具体的な事案と結びつけ、問題を適切に処理することが出来なければ司法試験に合格する事はできません。
また、法律の勉強は抽象的で無味乾燥な部分が多いため、アウトプットを通じて具体的な事案を解決する過程で知識を蓄えたほうが記憶に残りやすいということもあります。
そのため、司法試験の勉強としては、まずインプットを出来る限り早く終わらせる必要があります。
学習初期の段階から、いち早く答案を書く練習をすることが司法試験合格の鍵と言えるでしょう。
また、演習書を何冊もこなすよりも、まずは予備試験・旧司法試験の過去問を解くことが最重要であると言えるため、とにかく過去問を重視した勉強をすることを心がけましょう。
※過去問については、こちらもご覧ください。
→司法試験や予備試験における過去問の使い方総まとめ
3.スケジューリングのコツ
【スケジューリングによる効果】
◉勉強の効率化
◉最短での合格
◉集中力の向上
◉自己認識が高まる
◉自信がつく
実際に、自分でスケジュールを立ててみようとすると、どのようにしたらよいのか分からないという方が多いと思います。
最初に誤ったスケジュールをたててしまうと、そのまま間違った方向で勉強を進めて行ってしまうことにもなりかねません。
ここでは、実際にスケジュールを立てる際のコツをご紹介していきますので、スケジュールを立てる際の参考にしてみてください。
3-1.ゴールから逆算して考える
まずは具体的なゴールである「司法試験合格」から逆算して計画を立てることが重要です。
司法試験合格に向けて具体的な目標を書き出す際に、以下のような事を意識すると良いとされています。
◉出来る限り具体的に
何をすれば司法試験に合格することが出来るかを、出来る限り具体的に書き出す事が必要です。例えば「来年の4月までに平成以降の論文の過去問を全て2回以上解く」など、出来る限り具体的に目標を記載するようにしましょう。
◉達成可能であること
勉強を始める前はやる気に満ち溢れている事が多く、計画を立てる時も予定を詰め込みすぎてしまう傾向にあります。
計画を立てる事が重要なのではなく、立てた計画をやり切る事が重要なので、詰め込みすぎて計画倒れにならないように注意しましょう。
◉期限が明確であること
期限を決めないといつまでも「まだ時間がある」と考えてしまい、計画が停滞しがちです。計画を立てる際にはタイムリーに行動できるよう、期限を明確にするようにしましょう。
3-2.目標を細かく設定していく
1年単位の目標を決めたとしても、それだけでは現状何をすべきなのかが明確ではありません。合格までにやるべきこと、半年後までにやるべきこと、来週までにやるべきこと、というように、目標設定は細かく設定するようにしましょう。
3-3.計画は毎日見直す
計画を着実に進めるためには、定期的に計画を確認することで、現在の自分の立ち位置を確かめ、計画のズレを適宜修正するようにしましょう。
3-4.目標の再確認
司法試験に合格するためには、常に司法試験合格という目標を見失わないことが大切です。
定期的に目標を見つめ直すことで、その目標を設定した最初の動機を思い出すことにもなり、モチベーションを維持することにも繋がるでしょう。
司法試験合格まで走り抜けるためにも、適宜目標を見つめ直すようにしましょう。
4.科目ごとの関連性と勉強の優先順位
司法試験の試験科目は法律基本7科目および選択科目の合計8科目になります。
基本となる法律は憲法、民法、刑法のいわゆる上三法となりますので、まずはこれらの法律のインプットから勉強を始めましょう。
選択科目は選択する科目によって相性のいい科目が変わってくるため、選択科目に併せて理解しやすい科目と並行して勉強するようにしましょう。
5.最短で合格するための具体的なスケジュール
それでは、具体的にどのようなスケジュールを立てればいいのでしょうか。
予備試験合格者および法科大学院修了者の場合、司法試験対策としてどのように勉強を進めるべきかは、各々の学習の進度によって異なります。
基本7科目の基礎固めが完成しているが司法試験特有の傾向に対応できないのであれば、司法試験過去問の演習・復習を中心とした勉強をすることになります。
これに対し、基本7科目の基礎固めが完成していないのであれば、司法試験過去問に入る前に、インプット講座や短文事例問題演習による基本7科目の基礎固めをすることになるでしょう。
期限 | 基礎固めが完了している人の場合 | 基礎固めが完了していない方の場合 |
7月~12月(年内) | ・最新の過去問を解き、 現在の立ち位置の確認 ・過去問を徹底してやりこむ ※司法試験・予備試験・旧司法試験 ・短答の過去問も徐々にやり始める | ・基礎的な法的知識のインプット ・論文の書き方に関する基礎を徹底する 重要なポイントのインプットを 素早く終わらせて、 いち早く答案を書く練習をする。 |
年明け~4月 | ・過去問、問題演習を繰り返す →アウトプット重視で、ひたすら過去問、 演習問題をこなす。 ・短答の過去問も少しづつ頻度をあげていく ・予備校の公開模試を受けるオススメ →2023年 TKC 司法試験 全国統一模試 | ・インプットの残りを仕上げ、 なるべく早めに論文に移行出来るようにする ・過去問、問題演習を繰り返す →アウトプット重視で、 ひたすら過去問、演習問題をこなす。 ・短答の過去問を徐々にやり始める |
5月~7月(直前期) | ・今までにやってきた論文の問題の総復習・予備校の公開模試を受けるオススメ →2023年 TKC 司法試験 全国統一模試 |
1年単位で見るとこのようなスケジュール感になります。
このスケジュールでは、それぞれ年内、年明け〜短答4月まで、直前期、の3つに分けてスケジュールを立てていますが、勉強の進捗状況に併せて自分に合うようなスケジュールを立てるようにしましょう。
6.年内の勉強方法
それでは、1年単位での勉強スケジュールについてそれぞれ詳細を確認していきましょう。
ますは、年内にすべき事を確認していきます。
6-1.論文式試験対策
6-1-1.予備校のインプット講座の受講
基礎固めが終わっていない人の場合、まずは各科目の基礎知識をつけるところから始まります。
出来る限り素早くインプットを終えてアウトプットに移行することが重要なので、効率よく勉強を進める必要があります。
予備試験合格や法科大学院の修了見込など、受験資格を得ているのであれば、1年後の司法試験に向けてゼロから知識を組み立てる必要まではありません。ただし、その時点で知識が不足しているのであれば、司法試験を知り尽くした先輩や指導者から助言や指導をいただくことが必要不可欠です。
(知識が不足している方向けの講座を予備校は用意しています。)
もちろん独学での学習は不可能ではありませんが、限られた時間の中での苦労や費用対効果を考えると、多くの合格者がしたように予備校を利用することをおすすめします。
予備校の講座であれば、無駄なく効率のいい勉強をすることができ、かつ基本書や問題集を取捨選択する時間を省くことができます。
一方、基礎固めが終わってる人は、まず令和4年度の司法試験過去問を何も参照しないで時間内に解いてみて、自分の現在の立ち位置を把握してみましょう。
自分にとって足りていない部分をもとにして、科目ごとにどういった勉強をすればいいのか、勉強の方向性を明らかにしてから過去問に望むことで効率的な勉強を心がけましょう。
6-1-2.論文講座の受講
論文の問題を解くにあたり、まずは論文の書き方を学ぶ必要があります。
予備校の入門講座や基礎講座を受講するのであれば、一緒に基礎的な問題演習を行うコースがセットになっているかと思います。
論文の基礎講座に関しては、入門講座と並行して受講するのが効果的です。
インプット講座と並行して受講することで、インプット講座で学んだ知識が実際にどのように論文式試験で問われるのかということを知ることができます。
6-1-3.過去問・問題演習
基本的な知識のインプットが終了した後は、合格までとにかくひたすら司法試験の過去問や問題演習を繰り返します。
余裕があれば予備試験や旧司法試験の過去問を解いてみるのも勉強になるでしょう。
論文試験では、各科目によって答案の型や流れが存在するため、まずはその型や流れを覚えるところから始めます。
最初に問題を解いたときには全く書けなくて落ち込むかもしれませんが、合格者も皆最初は書けません。
過去問を繰り返し解いていく内に自然と合格レベルの答案を書くことが出来るようになっていくのでご安心下さい。
とにかく重要なのは諦めずにコツコツと解き続ける事が大切です。
はじめのうちは答案構成(答案作成のための論文の構成メモ)レベルで構いません。ただし、時間が許すのであれば実際に答案を作成し、予備校に添削してもらうようにしましょう。
6-2.短答式試験対策
論文の勉強がある程度進んできた科目については、徐々に短答の勉強も始めていきます。
短答の得点が伸びないのであれば、予備校はその対策講座を用意していますので、そちらの講座の受講も並行して行うようにしましょう。
短答では論文で使う知識よりも細かい知識を問われるため、インプットで学んだ知識を問題演習を通じて定着させていくことになります。
短答では、短答プロパーと呼ばれる短答式試験のみで問われるような細かい知識も問われることもありますが、あまり深追いしないようにすることが大切です。全問正解する必要まではありません。
この時期一番重要なことは、インプットが終わってないのであればインプットをなるべく早く終わらせることで、インプットが終わったのであればできるだけ多くの過去問に触れることになります。
短答対策はほどほどにして、論文の勉強に比重を置くようにしましょう。
7.年明け~4月までの勉強法
7-1.論文式試験対策
とにかく問題演習をひたすら行います。
予備校で支給された問題と司法試験の過去問を繰り返すことになりますが、余裕があれば予備試験の過去問や旧司法試験の過去問もチャレンジしてみましょう。
7-2.短答式試験対策
短答式試験ではコンスタントに8割程度得点できるようになることが理想です。
全体の概ね6~7割が短答合格のラインに設定されている事が多いのですが、司法試験では短答式試験の点数が最終合格の点数に反映されるため,短答式試験で出来る限り高得点を取ることが出来れば、その分他の受験生に対して優位に立つことが出来ます。
過去問を解いて、本番でも8割程度得点できる実力を付けましょう。
ただし、あくまでもメインは論文の試験なので、論文の勉強が疎かにならないよう注意が必要です。
ちなみに、予備試験に合格している場合や令和4年司法試験の短答式試験に余裕をもって合格している場合など、現時点で短答合格レベルに到達している場合には、2〜3か月前から復習すれば問題ありません。
8.直前期の勉強法
8-1.論文式試験対策
試験当日に最高の状態に持っていくために、1週間前、前日、試験期間中という3段階に分けて勉強計画を立てると効率良く勉強を進める事ができると思います。
勉強方法は変わらず、過去問をひたすらこなすとともに、今まで解いてきた論文問題でできなかった問題を総復習します。
苦手な範囲の問題の復習を重点的に行うようにし、基礎的な知識の抜けがないか再度確認しましょう。
あくまでも今までやってきた復習を行うのであって、新しい問題集などに手を付けて手を広げすぎないよう注意が必要です。
また、試験当日に試験会場で見返すことができるように、自分の弱点ノートなどを作成しておくのがオススメです。
また、各予備校では、この時期に公開模試が実施されます。
模試受験者の声◆MOさん(国立大学法科大学院・既修)
地方で勉強をする場合、どうしても全国の受験生のレベルが分からないため、その感覚を肌でつかむためには、全国統一模試の受講は役に立ちますし、また、本試験と同じタイムスケジュールで行われるため、本番と類似体験ができるというメリットもあるので、全国統一模試の受講はマストだと思います。
試験本番の厳しい時間制限に慣れるため、できる限り本番に近い環境に身を置いて制限時間内で答案を仕上げる訓練をしましょう。
8-2.短答式試験対策
試験当日に見返すために、間違えた問題やポイントなどをまとめたノートを作成しておくと効率良く復習をすることができるでしょう。
なお、短答知識の大部分は、訊かれたら分かる程度で足りるため、短答の勉強に時間を使いすぎないよう注意しましょう。
9.まとめ
司法試験に最短で合格するためのスケジュールの立て方をまとめます。
◉基本7科目の基礎固めが完成しているが司法試験特有の傾向に対応できない人→司法試験過去問の演習・復習を中心とした勉強をし、ひたすらアウトプットを繰り返す。模試も積極的に利用する。
◉基本7科目の基礎固めが完成していない人→司法試験過去問に入る前に、インプット講座や短文事例問題演習による基本7科目の基礎固めをする。出来る限り素早くインプットを終えてアウトプットに移行することが重要。模試も積極的に利用する。
基本7科目の基礎固めが完成している人も完成していない人も、いち早くインプットを終わらせ、論文のアウトプット中心の勉強に移行することが大切です。
最短で司法試験に合格するためには、無駄なく効率のよいインプットができる仕組みが必要で、また、論文のアウトプットでは添削など正しく評価してもらえる機会が必要不可欠です。
これらは独学では難しく、多くの司法試験合格者と同様に、予備校を利用することを強くおすすめしたいと思います。
当記事が、あなたの司法試験合格への一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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