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社会人の法科大学院入試|夜間や通信・社会人枠についても解説

2025年03月04日

 
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近年、TVドラマの影響もあり、社会人経験を活かし法曹で活躍したいと考え、法科大学院への入学を考えている社会人が増えてきています。

しかし、社会人の場合、一般の学生と同じように全日制の法科大学院へ通学することは難しい場合が多いでしょう。

もし、通信制や夜間コースの法科大学院があるならば、仕事をしながら法科大学院に通うことができると考えている社会人の方も多いと思います。当コラムでは法科大学院の通信制や夜間コース、法科大学院入試における社会人枠についてなど、社会人が法科大学院に入学するにあたっての必要な情報について解説していきます。

【目次】
1.社会人が法科大学院に通うためには?
 1-1. 通信制の法科大学院は存在しない
 1-2. 夜間の法科大学院は4校しかない
 1-3. 社会人入試特別枠が設けられている法科大学院も
2. 司法制度改革により社会人の入試状況に影響はある?
 2-1. 社会人の入試を取り巻く状況は特に変わらない
 2-2. 社会人の司法試験受験生は今後も増えていく可能性が高い
3. 通学が難しい社会人は予備試験ルートがおすすめ
4. 社会人でも予備試験の勉強と仕事との両立は十分可能
5. まとめ

 

1.社会人が法科大学院に通うためには?

社会人が法科大学院に通学する場合、既修者コース(2年間)か未修者コース(3年間)のどちらかを選択することになります。

法学部出身かどうかは関係なく、時間をかけてじっくり勉強したい人は未修者コースを、なるべく早めに受験資格を得て司法試験を受験したい人は既修者コースを選択することになります。

しかし、平日仕事がある社会人にとって、毎日法科大学院に通学するのは現実的ではないため、通信制や夜間コースのある法科大学院を検討することになるでしょう。

なお、夜間コースであっても既修か未修かの選択はすることになります。

 

1-1. 通信制の法科大学院は存在しない

近年、通信技術の進歩や新型コロナウイルスの影響もあり、通学しなくてもオンラインで講義を受けたり、教授に質問をしたりする制度が普及してきましたが、2023年現在で、完全通信制で修了、卒業できる法科大学院は存在しません。

法律家は一人で仕事をする職業ではなく、周囲の人間や依頼者と密接にコミュニケーションをとりながら進めていく職業であり、通信制の授業では、それらのコミュニケーション能力や問題解決能力が十分に養われないと考えられているからです。

しかし、多種多様な人材を確保するために行われている司法制度改革や法科大学院制度の改革の中で、今後社会人が法曹にチャレンジしやすい環境が整っていくことは十分に考えられるでしょう。

なお、現在でも、社会人が学びやすいように、モバイル遠隔授業(ICT授業)を導入している法科大学院も存在します。

 

1-2. 夜間の法科大学院は4校しかない

働きながら法科大学院に通学するためには、夜間コースのある法科大学に入学するのが一番現実的な選択でしょう。

夜間コースが設置されている法科大学院は、2023年現在で全国に4校しかありません。

 ◉筑波大学法科大学院
 ◉日本大学大学院 法務研究科
 ◉福岡大学法科大学院
 ◉琉球大学法科大学院(※既修者コースのみ)

夜間コースでは、全日制のコースで行うカリキュラムを、平日の夜間の時間帯や土曜日に集中的に行うことで、時間に限りがある社会人受験生であっても、仕事に影響を与えることなく通学することが可能になります。

しかし、夜間コースの場合、どうしても全日制のコースよりも授業の時間数が減ってしまうことから、既修コースでも最低3年間、未修コースになると最長で5年間と、法科大学院を修了までに通常よりも長い年数がかかってしまうことになります。

そうなると、司法試験の受験資格を得るまでに相当長い時間がかかってしまい、モチベーションを保つのがかなり難しいことが、夜間コースのデメリットの一つであると言えます。

また、平日の授業に関しては、基本的に18時〜18時半から始まることが多く、仕事の都合や通学時間の関係で、どうしても授業に間に合わないこともあることから、仕事と授業の両立が難しい点なども、課題として挙げられます。

 

1-3. 社会人入試特別枠が設けられている法科大学院も

社会人経験のある法曹を養成するために、法科大学院の入試において、社会人入試特別枠を設けている法科大学院も存在します。

現在、社会人入試特別枠が設けられている法科大学院は、以下の12校となります。

社会人入試特別枠のある法科大学院
大学院名特別枠の人数備考
筑波大学法科大学院36名社会人を主な対象とした、夜間の法科大学院
創価大学大学院2名大学卒業後1年以上の社会人経験を有する者
東京大学大学院5名程度社会人経験3年以上の者
金沢大学大学院3名大学または大学院卒業後1年以上が経過しており、
その間に学業以外の活動に従事した経験を有する者
なお、学業以外の活動に1年以上従事したあとに大
学へ入学した場合は、大学卒業または大学院修了後
1年未満であっても出願資格を満たす
愛知大学大学院定数なし大学卒業後2年以上経過し、何らかの職歴
(パート・アルバイト等を含む)を有する者、
またはこれに準ずるものとして本研究科が認めた者
名古屋大学大学院5名程度入学時点において、1年程度以上の社会人経験を有
することとなる者
同志社大学大学院出願時点において、官公庁・企業等における勤務経
験や自営業者としての経験等を、通算して2年以上
有している
立命館大学大学院若干名社会人としての実務経験が3年以上の者
大阪大学大学院10名出願時点において、官公庁・企業等における勤務経
験や自営業者としての経験等を、通算して3年以上
有している者
関西大学大学院若干名官公庁・企業等における勤務経験、自営業者として
の経験等が、出願時に合計3年以上有る者
神戸大学大学院他学部と併せて
5名程度
大学卒業後1年以上の社会経験を有する者
福岡大学大学院多角的な視点から多様な人材を選考し、さまざまな
専門知識や社会経験を有する人に広く門戸を開くた
め、社会人および法学系以外の出身者について、一
定の範囲で優先的な特別選考を実施する

参照:法科大学院の紹介(ロースクール)|法務省

各大学院が指定する条件にあてはまれば、特別枠を利用して法科大学院に入学することが可能です。

希望する大学院に入試特別枠が設けられているかどうかやその他細かい条件については、事前にホームページなどで確認するようにしておくと良いでしょう。

 

2. 司法制度改革により社会人の入試状況に影響はある?

2023年(令和5年)に司法試験制度改革が行われ、大学と大学院が一体となった法曹コースが新設され、法科大学院在学中であっても司法試験を受験することができるようになりました。

制度改革の趣旨は、幅広い分野で活躍する、優秀かつ学習意欲の高い人材にできるだけ早く司法試験の受験資格を与えることで、高度の専門的な能力を有する、優れた資質を有する人材の確保を推進することにあります。

 

2-1. 社会人の入試を取り巻く状況は特に変わらない

学生であれば、法曹コースを利用することで、従来よりも1年早く法曹になれる可能性がありますが、社会人の場合、そもそも通学することが難しいことが多いため、法曹コースの設立によって法科大学院への入学がしやすくなることはないでしょう。

また、学費に関しても、社会人であることで学費が安くなることはなく、たとえ夜間コースであったとしても、基本的には全日制と同じだけの学費を支払うことになります。

入試の形式も、全日制のコースと変わりがないことから、社会人が法科大学院に入学するためには、依然として高いハードルがあるものと言わざるをえません。

 

2-2. 社会人の司法試験受験生は今後も増えていく可能性が高い

このように、社会人が法科大学院ルートで司法試験を受験するのは、なかなか大変かもしれません。

しかし、「法曹コース」の導入や在学中に司法試験を受験できる制度など、司法試験を取り巻く諸制度は年々少しずつ見直され、受験生にとってより良い方向に動いています。

多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の法曹界への参入を、歓迎する方向で話が進んでいることは間違いないので、今後行われていく司法制度改革の中で、社会人がより法科大学院に入学しやすいような制度も整備されていくことが期待されています。

 

3. 通学が難しい社会人は予備試験ルートがおすすめ 

現時点で社会人が司法試験を受験するためには、以下の3つの方法が挙げられます。

 ①予備試験ルートで司法試験を受験する
 ②働きながら夜間コースのある法科大学院に通う
 ③仕事を辞め、全日制の法科大学院に通う

③の仕事を辞める決断をするのはかなりハードルが高く、特に家族のいる家庭の場合、専業の受験生となることは難しい場合が多いため、あまり現実的な選択肢であるとは言えません。

また、夜間コースを設置している法科大学院の数は、全国に4校のみと非常に限られているため、そもそも通学圏内に学校がない場合には、夜間であっても通学することは難しいでしょう。

さらに、夜間コースは通常よりも長い年数をかけてカリキュラムをこなしていくため、モチベーションの維持が難しく、途中で挫折してしまうおそれもあるでしょう。

その点、予備試験ルートであれば、法科大学院に通学する時間を省くことができるだけでなく、法科大学院の授業料も浮かせることができます。

また、予備試験合格者の司法試験合格率も、2022年度(令和4年度)で97.5%と、他を寄せ付けない圧倒的な数字になっていることがわかります。

社会人で法科大学院への入学を検討している方は、予備試験ルートで司法試験を受験することをおすすめします。

 

4. 社会人でも予備試験の勉強と仕事との両立は十分可能

予備試験は例年合格率が3〜4%程度と、かなり低い合格率になっている事から、学生よりも勉強時間を確保することが難しい社会人が合格するには無謀だと考える人も多いかと思います。

しかし、方向性を間違えずに勉強を継続すれば、社会人でも予備試験に合格することは十分に可能です。

具体的には、最低限として勉強期間2年間、平日に2時間、土日合わせて5時間程度の勉強時間を確保することができれば、社会人であっても十分予備試験に合格するだけの力をつけることができるでしょう。

社会人が予備試験を選択すべき理由については、こちらの記事もご覧ください。
→法科大学院の夜間コースVS予備試験、社会人にはどちらのルートがおすすめなのか詳細分析

 

5. まとめ

◉2023年現在、夜間コースを設置してる法科大学院はわずか4校しかなく、通信制の大学院は存在しないため、社会人が司法試験を受験するのであれば、予備試験ルートを選択するのが現実的
◉法科大学院の中には、社会人入試特別枠を設けているところもある
◉社会人でも正しい方向の勉強をすれば2年で予備試験合格が可能

社会人が法科大学院入学を目指す場合、通信制は存在しないことから、夜間コースは社会人枠を使って全日制のコースに入学することになるかと思います。

ただし、夜間コースが設置されている法科大学院は全国でも4校しかないため、近くに該当する法科大学院がない場合には、夜間コースでの入学も難しくなってしまうでしょう。

しかし、法科大学院に入学する目的は、あくまでも司法試験に合格することであり、法科大学院に入学することではありません。

限りある時間を有効に活用するためにも、予備試験ルートでの司法試験を受験することもぜひ検討してみてください。

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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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