【最新版】司法試験・予備試験の短答式試験勉強法 総まとめ

予備試験や司法試験において天王山となるのは論文式試験です。そのため、短答式試験対策が後回しになってしまい、結果としてそこまで時間をかけることなく本番に臨んでしまうことで点数が奮わなかった、という人も多いのではないでしょうか。
たしかに、予備試験も司法試験も重要なのは論文式試験であることは間違いなく、短答対策にそこまで時間をかけるのは、試験対策上有効ではありません。
しかし、予備試験では、短答式試験に合格しない限り論文式試験を受けることは出来ませんし、司法試験においても、短答式の結果は総合成績に反映されることを考えると、やはり試験としては短答式の対策も事前にしっかり行うべきであると言えるでしょう。
もちろん、対策にあたっては論文対策の邪魔をしないように、効率良く行う必要があります。
論文の勉強と短答の勉強はリンクしています。論文の勉強をしっかりやれば、短答試験である程度の点数は取れるようになります。
この記事では、効率のいい短答式試験対策をご紹介していきますので、予備試験受験生や司法試験受験生はぜひ最後までご覧下さい。
【目次】
1.短答式試験について
1-1.短答式試験とは?
1-2.短答式試験で問われる知識について
2.短答式試験の勉強方針(総論)
2-1.過去問を徹底的に解く
2-2.コンスタントに8割正解できるようにする
2-3.条文の素読について
3.過去問の有効な使い方
3-1.選択肢ごとに◯✕△マークをつける
3-2.正解に至るまでの理由まで解答できるようにする
3-3.2周目からは△と✕の問題だけを解く
3-4.△と✕が多い分野は基本テキストを精読する
3-5.周辺知識も確認する
3-6.正答率の低い問題は無視する
4.科目ごとの短答式試験の勉強法(各論)
4-1.憲法
4-2.民法
4-3.刑法
4-4.商法
4-5.民事訴訟法
4-6.刑事訴訟法
4-7.行政法
4-8.一般教養
5.短答式試験の勉強スケジュール
5-1.〜12月まで(年内)
5-2.年明け〜4月
5-3.短答式試験直前期
6.短答式試験の点数が伸びない時の対処法
6-1.答えを暗記するだけでなく、その理由を理解する
6-2.普段から未知の問題に対処する思考回路を作る
6-3.本番では捨て問があることを意識する
7.まとめ
1.短答式試験について
まずは、司法試験や予備試験における短答式試験とはどんな試験なのかを簡単にご説明いたします。
1-1.短答式試験とは?
司法試験では、憲法(50分)、民法(1時間15分)、刑法(50分)の上三法と呼ばれる3科目が試験範囲となります。
論文式試験の合計点1,400点と短答式試験の合計点175点の合計により合否が決まります。
論文式試験に比べ、与えられている点数が低い事から短答式試験の勉強を軽視している人もいますが、司法試験には、短答式試験の合格に必要な成績を得た者のみが、短答式試験および論文式試験の成績を総合して判定されるという、二段階選抜制とも呼べる制度が存在しています。
短答式試験が合格点に達していない場合は、いかに論文で素晴らしい答案を書いていたとしても、それだけで不合格とされてしまうことを考えると、短答式試験対策も十分に行っておく必要があると言えるでしょう。
予備試験では、司法試験で出題される基本3科目に加えて、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法、一般教養科目の計8科目から出題されます。
司法試験と比べて科目数が多く、短答式試験に合格しないと論文式試験を受ける事が出来ないため、短答式試験についても論文式試験と同様、本番で確実に合格点が取れるようにしっかりとした対策をする必要があります。
どちらもマークシート方式の試験であり、論文とは違う知識や頭の使い方が要求されますが、短答式試験では 、論文式試験で問われる知識と重なっている知識ももちろん出題されるため、論文の勉強をしっかりやれば、短答でもある程度の点数はとれるようになるでしょう。
しかし、論文式試験では直接問われないような細かい条文知識(短答プロパー)が出題されることも多いため、論文式試験とは別個に対策をする必要があります。
1-2.短答式試験で問われる知識について
司法試験や予備試験の短答式試験においては、論文式試験で問われる知識だけでなく、短答式試験でしか問われないかなり細かい知識(いわゆる”短答プロパー”と呼ばれる知識)を問う問題が出題されます。
そのため、論文式試験で必要な基本的な法律知識だけでなく、短答プロパー知識についてもしっかりと対策していく必要があります。
それだけ聞くと論文よりも短答の方が試験範囲が広い分難しい試験だと思いがちですが、短答式試験では論文式試験ほどの深い理解や高度な思考力は要求されませんし、解答方法も論述ではなくマークシート方式なので、基本的な法律知識のインプットが出来ていれば、ある程度の得点を取ることができます。
もちろん、知識があれば解ける問題だけではなく、現場思考で判断しなければ解けない問題も存在しますし、どうしても記述の正誤が分からない場合に、問題をその場で分析し、直感や法律的な常識に従って判断しなければならない場面もあるでしょう。
そのため、細かい知識が問われる出題形式だからといって、知識だけをひたすら詰め込む勉強をするのではなく、インプットと並行して論理的思考力を伸ばすことを心がけると、論文対策の思考過程を活用して効率良く短答式試験の得点を伸ばすことができるでしょう。
2.短答式試験の勉強方針(総論)
それでは具体的にどのような勉強方法を取れば良いのでしょうか。
短答式試験の勉強法における大きな方針を2つご紹介したうえで、短答対策に有効だと言われている「条文の素読」と呼ばれる勉強方法についてもご紹介します。
2-1.過去問を徹底的に解く
司法試験や予備試験の短答式試験ではかなり細かい法律知識が問われるとはいえ、全ての法律分野から無作為に出題されているわけではなく、実際の出題にはある程度の偏りが見られる傾向にあります。
特に重要度の高い知識は、角度を変えて繰り返し問われているため、過去問を繰り返し解く事は非常に有効です。
ある論点に関して、実際の試験ではどのように問われているのか、重要な分野はどこなのか、これを実際に体感するためには過去問を自分自身で解いてみる必要があります。
一度自分の頭で考えて解いてみないと、問題の本質を理解する事ができないからです。
たしかに、過去に出題された問題がそのまま同じ形で出題されることはありません。
しかし、過去問を解けば、法律や関連する論点を理解するのに重要なポイント、出題者の意図、出題傾向、押さえておくべき部分が見えてきます。
とにかくシンプルに過去問を何度も繰り返し解き続けることがポイントです。
複数の演習書を並行して曖昧な知識の量を増やすよりも、過去問の問題集1冊を徹底的にマスターしたほうが、司法試験合格の力は身につきます。
限られた時間で効率よく合格に必要な力を付けるためにも、できれば現行の司法試験や予備試験の全年度の過去問を中心とした勉強を心がけるようにしましょう。
なお、余力があれば司法試験、予備試験相互の過去問を解くことができれば万全の対策ができるでしょう。最低でも7年〜10年程度の過去問は解くようにしてください。
2-2.コンスタントに8割正解できるようにする
司法試験、予備試験ともに、短答式試験ではコンスタントに8割正解できるようになるのを目標とするのがよいでしょう。
司法試験の短答式試験では、全体の概ね6~7割正解できれば合格できるのですが、司法試験では、短答式試験の点数が最終合格の点数に反映されるため、短答式試験で高得点を取ればそれだけで他の受験生と比較してアドバンテージになるでしょう。
また、予備試験の短答式試験では、全体の6割正解できれば合格できますが、一般教養科目を除く法律科目で8割得点することが出来れば、法律科目だけで合格点に達することが可能なため、一般教養科目分の時間を法律科目の勉強に使うことが最善の選択です。
法律科目でいかに得点することが出来るかが、効率のよい試験勉強をするポイントであると言えます。
2-3.条文の素読について
短答式試験では、条文に書いてあることがそのまま問われることがよくあります。
そのため、「条文を素読する」という勉強法が推奨されることがあります。
六法に書いてある条文をそのまま読むという勉強法なのですが、条文の素読をすると、「膨大な条文の中から該当条文を探す感覚」から「一回全部読んだことあるし、だいたいあの辺の条文のどれかだろう」と、あたりをつけられるようになるという人もいます。
もちろん、勉強法というのは人それぞれで、条文を素読したからといって短答の点数が必ずしも伸びるわけではないので、あくまでも勉強法の一つとしての位置づけとして考えるべきでしょう。
ここでは、条文の素読のやり方を解説しておきます。
【素読の方法】
・該当法律の1条から最後まで読む
・括弧書きは飛ばし、本文だけ読む
・準用条文や関連条文も基本的に戻らない
・1日1時間くらいで継続して行う
【ポイント】
・ただ漫然と読むのではなく,次の点を意識しながら読む
①条文の制度趣旨
②要件と効果
③関連論点や関連判例
条文の素読で得られた知識は論文対策にもなります。
どの勉強法でもそうですが、短答、論文それぞれの勉強法を分離して考えるべきではなく、なるべく両方の勉強法に共通するものとして対策をすべきでしょう。
3.過去問の有効な使い方
短答式試験の勉強における過去問の重要性は前述した通りですが、効率的に勉強をするためには過去問の有効な使い方を理解しておく必要があります。
ここでは、過去問を回す際の有効な使い方をご紹介していきます。
3-1.選択肢ごとに◯✕△マークをつける
マークは自分の好きなものを使っていただいて問題ありませんが、過去問を解く際には選択肢ごとに自分の理解度を示すマークをつけていくと良いでしょう。
例えば・・・
●正解に至るまでの理由まで含めて解答できる場合は〇
●正解はできるが、理由までは回答できない場合は△
●正解がわからない場合は✕
など、選択肢ごとに自分の理解度を示すマークを付けておくと効率の良い勉強をすることができるでしょう。
繰り返し過去問を解く中で、最終的に全ての問題に〇がつくようになれば、本番の試験でも8割以上の得点を取ることが出来るでしょう。
3-2.正解に至るまでの理由まで解答できるようにする
過去問を繰り返し解いていけば、〇か✕の判定をするところまではできるようになるでしょう。
しかし、実際の試験ではまったく同じ文章の問題が出題されるわけではなく、同じ内容の問題が、少し角度を変えて出題されます。
そのため、なぜその解答になったのかという理由まで理解していないと、類似問題や応用問題に対応できなくなってしまいます。
過去問を解く際には必ずその理由付けまで理解するようにしましょう。
3-3.2周目からは△と✕の問題だけを解く
1週目でマークした問題で、〇がついた問題についてはとりあえずやらないでおいて置き、2週目以降は△と✕のマークがついた問題のみ解いて行きます。
そして、2週目以降もマークを付けていき、徐々に△と✕のマークを消していきます。
1週目で〇がついている問題は飛ばす分、2週目で当たる問題数は減っていくため、問題集の回転数も良くなるでしょう。
問題を繰り返す際には、できるだけ期間を空けないようにすると、知識の定着力が高まり、より効率良く知識を吸収することができるでしょう。
3-4.△と✕が多い分野は基本テキストを精読する
どんなに優秀な成績で司法試験や予備試験に合格する人でも、はじめはみんな解けません。
過去問を繰り返し解いていくうちに正答率は上がっていくので、最初に正答率が低いからと言って気に病む必要はありません。
しかし、過去問を解いていくと、△と✕が多い分野や、何回やってもどうしても覚えられない分野が出てきます。
いわゆる自分の苦手分野にあたる部分は、その分野の基本的知識が不十分であることが考えられます。
根本を理解していないといくら問題を繰り返しても覚えることができず、試験本番でも正誤を判断できない可能性が高いです。
このような苦手分野については該当分野のテキストや基本書を精読して、なぜその解答になるのかをしっかり理解するようにしましょう。
3-5.周辺知識も確認する
〇がついた問題の中でも周辺知識まで理解できるようになれば、司法試験や予備試験でより安定して高得点を取れるようになるでしょう。
知識の幅を広げるためにも、当該問題で問われている直接的な知識だけではなく、関連論点までその都度確認するようにしましょう。
ただし、周辺知識まで完璧に理解しようと思うと、本来その問題で学ぶべき知識を置き去りにしてしまう可能性があります。
あくまでも重要なのはその問題に関する直接的な知識なので、周辺知識ばかり追ってしまって、数多くの問題に当たる時間が取れないといった事態は避けるようにしてください。
3-6.正答率の低い問題は無視する
過去問を解いてみると、あからさまにマイナーな知識の問題が出題されていたり、正答率が極端に低い問題が存在します。
正答率が低い問題に関しては、合格者であっても間違うようないわゆる”捨て問”にあたるため、問題が解けなかったからといって落ち込む必要はありません。
正答率の高い問題から解いていき、受験生が落とさない問題を確実に解けるような基礎的な学力をつけるようにしましょう。
最終的には正答率60%〜70%の問題までを確実に解けるようにしましょう。
4.科目ごとの短答式試験の勉強法(各論)
ここまでは短答式試験の総論的な勉強法について解説してきましたが、以下では各科目の勉強法について解説していきます。
4-1.憲法
憲法は、例年正確な判例知識を問われており、重要判例に関する深い理解が求められる傾向にあります。
特に人権分野ではその傾向が顕著で、結論だけではなく、判旨の論理や理由まで理解することは最低限必要で、問題によっては凡例百選に引用されている部分以外のところから問題が出題されることもあります。
また、全ての選択肢の正誤を判断できないと選択肢を絞れない問題がほとんどで、いわゆる受験テクニックのようなものが使えません。
そのため、憲法の短答対策としては、他の科目と比べて普段からの判例学習が非常に重要な科目であると言えます。
また、細かい法律知識を問う問題については、国語力や、常識力、現場思考で判断していき、最低でも部分点を取れるようにすると良いでしょう。
統治分野においては、重要判例の理解を問う問題ももちろん出題されませすが、単純な条文問題も多く出題されます。
統治分野の問題は論文の対策としては後回しにしがちな分野であるので、短答対策をしっかりした上で、単純な条文問題を確実に正答できるようにしましょう。
4-2.民法
民法の場合、どこかの分野に偏った出題ではなく、全分野から万遍なく出題される傾向にあります。
頻出の問題形式は条文知識を問う問題ですが、民法の条文は1000条以上あり、全てを完璧に理解し、暗記することは不可能です。
また、その他にも判例知識を問う問題や、長文の事例問題なども出題されており、その出題形式も幅広いため、短答特別な対策というよりは論文の対策がそのまま短答の対策に直結しやすい科目であると言えるでしょう。
問題自体は基本的なものが多いため、一度知識を定着させてしまえば点数が安定しやすい科目です。
最初はその量の多さに戸惑ってしまいがちな科目ではありますが、他の短答対策と同じく、とにかく過去問を繰り返し解くことで基本的な知識を定着させ、基本的な知識を問う問題に関しては確実に正解して行くことが必要になるでしょう。
物権、債権、家族法(親族法、相続法)の全ての分野について対策が必要になりますが、論文対策として民法の中では重要度の低い家族法の分野に関しては、対策を後回しにしてしまいがちです。
すべての分野につき広く勉強をすることは論文の効率的な学習にも繋がりますので、家族法の分野についても後回しにすることなく勉強を進めるようにしましょう。
なお、民法は平成29年に大改正が行われているため、過去問の中にはすでに成立しなくなっている問題も存在するため、注意が必要です。
4-3.刑法
刑法では、問われるのは理論的な分野の話になります。
判例知識や学説など、具体的な事例や対話形式などさまざまな出題形式でその知識を問われますが、論文式試験と類似の出題がされることも多いため、論文式試験対策をしっかりと行うことが、そのまま短答式試験対策に繋がります。
事前対策としては判例を中心とした、個別の犯罪に関する構成要件該当性(刑法の条文に書かれている「構成要件」に当てはまるか)を正確に理解しておくことが必要になります。
また、複数の学説が示され、それぞれの見解からの結論を問う論理問題が出題される事も多く、反対説まで含めた学説の理解が必要不可欠になります。
しかし、このタイプの問題は、事前の知識がなくても現場思考で解くことが出来る問題が多いため、出題された際には落さないように確実に得点できるよう、過去問を繰り返して現場思考力を鍛えておくべきです。
もっとも、学説に関する理解を問う問題については、どうしても解答するのに時間がかかる問題傾向にあるため、くれぐれも他の問題を解く時間がなくならないよう、ペース配分には十分に注意が必要です。
4-4.商法
商法は、会社法、手形・小切手法、商法総則の分野から出題されますが、メインの出題は、論文式試験でもメインとなる会社法からの出題となります。
会社法は条文知識を問われることが多いため、各条文の正確な知識が必要不可欠であると言えますが、会社法の条文は一つ一つが非常に長かったり、準用(ある事項に関するルールをそれと類似する他の事項についてあてはめること)が多く規定の仕方がそもそも複雑であったりするため、ただ条文のみをそのまま暗記するのが難しいところがあります。
会社法の条文理解のコツは、当該条文の制度趣旨や規制がされた理由を、自分なりに理由を付けて覚えていくことです。
ただ、闇雲に条文のみを覚えるよりも、一言理由をつけるだけで記憶の定着率は格段に上がります。
また、会社法の場合、会社の機関と制度の関係について、自分の分かりやすいように整理しておくと、有効な短答対策になります。
また、事実関係を整理する際に、設問でどのような事が会社で問題となっているかを正確に把握するためには、会社の機関について正確に理解しておく必要があります。
会社にはさまざまな機関があり、問題となっている機関によって対応方法が変わるためです。
公開会社なのか、非公開会社なのか、取締役会設置会社なのか否かなど、会社の機関設計と会社内部の人との関係を整理することで、設問の事案を正確に把握できるようにしましょう。
さらに、条文の勉強をする際には、「目次」も利用すると良いとされています。
会社法は比較的近年に制定された法律であるため、条文の構造が非常に整備されています。
目次を利用する事で条文構造を理解し、なるべく俯瞰で勉強するようにすると、効率良く会社法の全体像を理解することができるようになります。
ただし、会社法の条文は膨大で、準用されている条文まで確認するとなると非常に時間がかかります。
短答の勉強に注力しすぎて論文の勉強を怠るようなことにならないよう注意すべきです。
なお、手形法・小切手法や商法総則・商行為法については、過去問で問われた知識のみ正確に理解し、類似問題がでたら確実に得点するということで十分だと考えるべきでしょう。
また、民法と同じく会社法も頻繁に改正が行われているため、改正法については最新のものを勉強するようにしましょう。
4-5.民事訴訟法
受験業界では、民事訴訟法は「眠素」と言われています。
勉強していると眠くなってしまうくらい漠然とした印象の科目であると言われています。
訴訟に関する法律なので、刑法や民法と違いイメージがしづらいというのも、とっつきづらい理由の一つになっているのでしょう。
民事訴訟は理論的な考え方を基礎とした条文で構成される法律になります。
処分権主義や弁論主義など、民事訴訟法の基礎となる理論や主義を理解すると、条文を深く理解することにつながります。
また、民事訴訟に関する法律になるので、民法との親和性が非常に高い科目になります。
あらゆる場面で民法の基礎知識がベースになってきますので、民事訴訟法を勉強する際には、民法の理解を確かめながら進めると理解が深まるでしょう。
民事訴訟法は、判例知識や条文知識が学説など、民事訴訟法に関する知識が万遍なく問われます。
勉強を進めていくうえで重要なのは、イメージのしづらい民事訴訟の手続きの流れを想像しながら勉強することです。
そもそもの民事訴訟に関する理論の話なのか、訴訟開始段階、審理過程、訴訟の終了の民事訴訟手続どこかの話なのかを、条文や判例をベースにして勉強する必要があります。
常に制度趣旨を意識しながら勉強をするのは全科目共通ですが、重要判例については、結論だけではなく、その理由や論理の流れまでしっかりと理解しておくようにしましょう。
4-6.刑事訴訟法
刑事訴訟法は、大きく分けて①捜査、②公訴提起・公判手続、③証拠、④裁判という4つの分野に分かれ、令状主義や強制処分法定主義など、さまざまな原理や原則が登場します。
これら原則を、条文知識や制度趣旨、判例などを基礎として正確に把握しておく必要があります。
メインで出題されるのは、捜査法の分野においては判例知識が、公訴提起以降の分野においては条文知識が主に問われる傾向にあります。
刑法と同じように論文式試験対策が短答式試験対策に直結するため、短答対策として特別な対策は不要になるため、基本的な短答対策である過去問を繰り返す事が最も有効な対策になります。
4-7.行政法
憲法と同じく判例の知識を中心に問われます。
そのため、重要な判例については、判例の結論だけではなく、その論理構成も正確に理解しておくことが重要ですが、憲法ほど重要な判例の数は多くはありません。
したがって、過去問を繰り返すことによって、繰り返し問われている重要判例がどの判例なのかを理解し、その判例に関する深い理解をするよう心がければ、行政法の判例対策としては十分であると言えます。
また、行政救済法分野の条文知識も問われることが多いのも行政法の特徴の一つですが、民法や会社法のように条文の数があるわけではないので、事前に細かいところまで確認して置く事が重要であるといえるでしょう。
行政法は「行政法」という名の法律はなく、さまざまな行政に関する個別法の仕組みを、暗記ではなく現場で読み解く能力が試されています。
論文でも短答でも、現場思考力を常に意識して過去問をこなすようにしましょう。
4-8.一般教養
法律科目が30点満点であるのに対し、一般教養科目は60点満点であるため、一切勉強しないということは危険であるかのように最初は考えがちなところです。
しかし、一般教養科目は、人文科学、社会科学、自然科学、英語が出題範囲となっていて、その試験範囲が広いだけでなく、難易度もかなり高いため、高得点を取ることは難しい科目です。
また、予備試験の短答式試験のみで出題され、司法試験まで今後一切出題されない科目になるため、勉強をした成果が司法試験合格に直結しない科目になります。
予備試験の短答式の合格ラインは160~170点程度、法律科目は30点満点なので、仮に一般教養が0点だったとしても、法律科目で平均24~25点(8割弱)取ることが出来れば合格することができるため、一般教養科目の点数を上げることよりも法律科目の点数をあげる対策を行った方が効率のいい試験対策を取ることが出来るでしょう。
一般教養には、事前知識が無くても国語力があれば解ける問題が毎年数問出題されています。
まずは問題選択の際にそれらの問題に目星をつけ、時間をかけて確実に正解できるようにしましょう。
予備試験では科目ごとの最低得点数などは設定されておらず、短答式試験の点数は後の論文式試験には引き継がれないため、合格点さえ超えることができれば、高得点でも合格ラインぎりぎりでも、最終的な合否には影響しません。
そのため、一般教養科目は一切対策をしないというのが、予備試験受験生の基本戦略となっています。
一般教養科目の点数はあくまで加点要素として捉え、法律基本7科目(210点満点)だけで8割(168点)を取ることを目指しましょう。
5.短答式試験の勉強スケジュール
5-1.〜12月まで(年内)
あくまでも論文の勉強がメインとなりますが、論文の勉強がある程度進んできた科目については、徐々に短答の勉強も始めていきます。
短答は分野ごとに解くことが可能ですので、学習の進捗にあわせて、短答の問題を並行して解くようにしましょう。
短答では論文で使う知識よりも細かい条文や判例知識を問われるため、インプットで学んだ知識を問題演習を通じて定着させていくことになります。
短答では、短答プロパーと呼ばれる短答式試験のみで問われるような細かい知識も問われるため、正答率の低い問題にはあまり深追いしないようにすることが大切です。
この時期一番重要なことはインプットをなるべく素早く終わらせる事と、できるだけ論文の問題演習をこなすことにあります。
短答対策も論文の知識確認という意識で、論文の勉強に比重を置くようにしましょう。
5-2.年明け〜4月
7月の短答式試験に向けて、徐々に短答を重視する勉強法にシフトする必要があります。
やることは特に変わらずひたすら過去問を解き続けていくことになります。
少なくとも過去問は10年分は解きたいところです。
5-3.短答式試験直前期
勉強方法は変わらず、過去問をひたすらこなすとともに、苦手な範囲の問題の復習を重点的に行いましょう。
当日、試験会場で見返すことができるように、自分の弱点ノートなどを作成しておくのがオススメです。
また、各予備校では、この時期に短答式試験の公開模試が実施されます。
自分の立ち位置と合格ラインとの差を確認することと、さながら試験本番の緊張感ある試験本番の環境に慣れるために、できるだけ模擬試験を受験するようにしましょう。
6.短答式試験の点数が伸びない時の対処法
過去問は何週もしているのになかなか点数が伸びない人もいるでしょう。
そうした人はやり方を少し変えるだけで飛躍的に点数が伸びる可能性を秘めています。
ここでは、短答の点数が伸びない時の対処法についてアドバイスをしていきます。
6-1.答えを暗記するだけでなく、その理由を理解する
短答過去問を繰り返せば繰り返すほど、自然と答えを覚えていってしまいます。
そのため、問題を解く際に「理由を考えて自分の頭で解く」のではなく、「単に覚えた短答の答えを思い出す」作業をしてしまっている可能性があります。
このようなやり方でいくら過去問を繰り返したとしても、試験当日の少し角度を変えた問題には対応できません。
過去問の正誤が判断できるようになるのは重要ですが、一言一句全く同じ問題は出題されないので、前述した〇△✕をマークする勉強法などで、その問題に対する理解度を正確に図るような勉強をするようにしましょう。
6-2.普段から未知の問題に対処する思考回路を作る
過去問の問題はあくまでも過去に本試験で出題された問題であり、今後の試験において、過去問で出題された問題がそのまま出題されるわけではありません。
過去問演習で重要なのは、基本的な知識の定着と、初見の問題に対する対応力となります。
問題の難易を瞬時に判断し、学説問題なのか判例問題なのか事例問題なのかを見極める事で効率良く解答を進め、過去問で出題された基本的な法律知識を用いて正誤を判断する事が必要になります。
未知の問題に対する対応力を鍛えるためには、選択肢ごとにどの部分が間違えているかをしっかり理解することが重要です。
そして、間違えている部分に本来あるべき正解の文章を自分で作ることを意識しながら問題を解いていきましょう。
できれば、その知識の周辺知識まで抑えるようにしましょう。
問題を繰り返し解いていくうちに正誤の判定は覚えていってしまいますが、大切なのはなぜ間違いなのかを正確に理解することです。
過去問を繰り返す際には常に本番と同じ状況を意識しながら、勉強を進める事が重要であると言えるでしょう。
6-3.本番では捨て問があることを意識する
試験当日の対策にはなりますが、他の受験生も落としそうな難問を見極め、その問題を制限時間内に解くことが出来そうにない場合には、きっぱりと解答するのを諦めて次の問題に進んでしまうのも得点を伸ばすためには必要な受験テクニックになります。
順番に解くことに固執してしまい、難問1問に時間がかかりすぎ、他の正解できるはずの問題について解答する時間がなくなり点数を取ることが出来ないのは非常にもったいないです。
短答の合格ラインは全科目を含めても6割前後であり、また論文以降の合否に点数が引き継がれるわけでもありませんので、決して満点を取る必要はありません。
上位合格者ですら間違えるような問題については、落としてしまって構いません。正答率を意識しながら、その試験で解くべき問題を判断できる目を養うことを普段の過去問演習や、模試・答練を通して養うようにしましょう。
7.まとめ
◉短答式試験対策で一番重要なのはとにかく過去問を繰り返す事
◉担当式の最低合格ラインは6割り程度だが、正答率8割を目標にしよう!
◉◯△✕マーク勉強法
◉模試や答練で実践的な訓練を欠かさないこと
いかがでしたでしょうか。
当記事では司法試験、予備試験における短答式試験の勉強法について解説してきました。
短答式試験で上位の成績を収めるには、学習初期の段階から短答式の過去問を並行して学習することが重要です。
また、過去問だけでなく、模試や答練に参加してアウトプットの訓練をしていくことも必要不可欠です。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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