予備試験の一般教養は0点でも合格できる?対策のポイントを解説

予備試験対策で、一般教養科目の対策をどうすればいいのかわからず、困ってしまっている方も多いのではないでしょうか。
予備試験の短答式試験では、一般教養科目が出題されますが、論文式試験以降司法試験まで二度と出題されないため、できる限り時間や手間をかけずに対策するのが得策です。
しかし、一般教養科目の問題の難易度は大学卒業程度と高く、出題範囲も非常に広範囲に及ぶため、日常で身につける知識や付け焼き刃の知識で点数を上げることは困難です。
ここで、もし一般教養科目で0点をとってしまった場合、予備試験に合格することはできないのでしょうか。また、合格者はどのような対策をしているのでしょうか。
この記事では、一般教養科目の対策はどの程度すべきか、0点でも合格することができるのか、本番で少しでも点数をとるためのコツなどについて解説していきます。
【目次】
1. 一般教養科目は0点でも合格できる
1-1. 一般教養科目の配点割合は短答式試験全体の2割程度
1-2. 一般教養科目の対策は効率が悪い
2. そもそも予備試験の一般教養科目とは?
2-1. 予備試験の短答式試験のみに存在する科目
2-2. 一般教養科目が出題される理由
2-3. 一般教養科目の試験範囲
2-4. 一般教養科目の配点
3. 一般教養科目の対策はどの程度すべきか
3-1. 必要以上に時間をかける必要はない
3-2. 本番で少しでも点数をとるためのポイントは?
4. まとめ
1. 一般教養科目は0点でも合格できる
予備試験の一般教養科目は、仮に0点だったとしても合格することができます。
その理由は、短答式試験の配点と、合格ラインにあります。
1-1. 一般教養科目の配点割合は短答式試験全体の2割程度
予備試験の短答式試験では、それぞれの科目に合格点が決められている訳ではなく、全科目の合計点だけの合格ラインが決められています。
短答式試験の各科目の配点や、短答式試験全体に占める割合は、以下の通りとなっています。
科目 | 問題数 | 配点 | 全体に占める 割合 | |
憲法 | 各科目ごとに 10問〜15問程度 | 60点満点 | 2 7 0 点 満点 | 22.20% |
行政法 | ||||
民法 | 90点満点 | 33.30% | ||
商法 | ||||
民事訴訟法 | ||||
刑法 | 60点満点 | 22.20% | ||
刑事訴訟法 | ||||
一般教養科目 | 40題の中から 20題を選択して 回答する | 60点満点 | 22.20% |
このように、一般教養科目は、他の科目と変わらず短答式試験全体の約2割を占めています。これだけ聞くと、ある程度の対策はしておいた方がいいように思えるかもしれませんが、短答式試験の合格ラインを見れば、一般教養科目の対策に力を入れなくてもいいことがわかります。
年度 | 短答式試験 合格者の平均点 | 合格ライン | 合格ラインの 得点率 |
2011年(平成23年) | 184.7点 | 165点 | 61.10% |
2012年(平成24年) | 184.1点 | 165点 | 61.10% |
2013年(平成25年) | 185.3点 | 170点 | 63.00% |
2014年(平成26年) | 185.7点 | 170点 | 63.00% |
2015年(平成27年) | 187.5点 | 170点 | 63.00% |
2016年(平成28年) | 181.5点 | 165点 | 61.10% |
2017年(平成29年) | 174.9点 | 160点 | 59.30% |
2018年(平成30年) | 177.7点 | 160点 | 59.30% |
2019年(令和元年) | 177.0点 | 162点 | 60.00% |
2020年(令和2年) | 173.7点 | 156点 | 57.80% |
2021年(令和3年) | 178.7点 | 162点 | 60.00% |
2022年(令和4年) | 175.0点 | 159点 | 58.90% |
12年間の平均 | 180.5点 | 163.7点 | 60.60% |
このように、短答式試験の合格ラインの得点率は、一番合格点が低い年で57.8%、一番合格点が高い年で63.0%と、おおむね6割前後取れれば合格できる試験になっています。
仮に、一般教養科目が0点だった場合、法律科目が満点だったとしても合計210点となりますが、合格ラインは例年160点前後であることが多いため、法律科目で8割(168点)前後とることができれば、予備試験の短答式試験を突破することができます。
1-2. 一般教養科目の対策は効率が悪い
一般教養科目は、他の法律科目と比べて出題範囲が膨大で、全ての試験範囲を網羅的に学習することは非常に困難です。
また、法律科目の論文の勉強に時間を割かなければいけない予備試験の受験生にとって、短答式試験にしか出題されない科目の勉強に力を入れるのは、非常に効率が悪いといえるでしょう。
2. そもそも予備試験の一般教養科目とは?
ここで、予備試験で出題される一般教養科目について、その概要を確認していきます。
2-1. 予備試験の短答式試験のみに存在する科目
論文式試験でも一般教養科目が出題されていたことがありましたが、現在では、予備試験の短答式試験でのみ出題されます。
また、司法試験では、短答式試験でも論文式試験でも出題されません。
2-2. 一般教養科目が出題される理由
法曹になるための資格を得るための試験で、なぜ法律科目以外の試験が必要なのでしょうか。
司法試験委員会は、一般教養科目の出題趣旨について次のように述べています。
学校教育法に定める大学卒業程度の一般教養を基本とし、法科大学院において得られる法曹として必要な教養を有するかどうかを試すものとし、その出題に当たっては、幅広い分野から出題し、知識の有無を問う出題に偏することなく、思考力、分析力、理解力等を適切に試すことができるよう工夫するものとする。また、法律科目の知識のみで容易に解答できるような出題とはならないよう工夫する必要がある。引用:予備試験の実施方針について|司法試験委員会
法曹として困っている人を助けるためには、法律の知識だけでなく、一定程度の教養や常識を持ち合わせているかどうかが重要です。
一般教養科目を試験科目にすることで、法科大学院修了程度の教養を試すだけでなく、法曹として活躍するために必要な、思考力、分析力、理解力等を問うことができるのです。
2-3. 一般教養科目の試験範囲
一般教養科目の試験範囲は、以下の4つの分野です。
◉人文科学(日本史、世界史、地理、思想、哲学、文学、芸術)
◉社会科学(政治学、経済学、社会学)
◉自然科学(物理、化学、生物、地学、数学)
◉英語
これらの分野の問題が、特定の分野に偏ることなく出題されます。
2-4. 一般教養科目の配点
一般教養科目の配点は1問あたり3点で、約40題の中から20問選択して解答するため、満点は60点となっています。
3. 一般教養科目の対策はどの程度すべきか
一般教養科目が0点でも、法律科目で8割得点できれば短答式試験を突破できるとはいえ、他の法律科目の負担を考えると、少しでも点数をとっておくことに越した事はありません。
では、一般教養科目の対策をする場合、どれくらい力を入れて対策をとるべきなのでしょうか。
3-1. 必要以上に時間をかける必要はない
問題の難度も一般教養科目は難しく、対して、法律科目は基本的な知識が出題されます。基本知識で得点できる法律科目に対策を絞ることが、得点戦略上有効といえます。そのため、もし一般教養科目の対策をするとしても、他の法律科目の勉強に影響が出てしまうくらい時間を割くのは得策ではありません。あくまでも、一般教養科目の得点は法律科目でカバーするのが、短答式試験を効率よく突破するためのポイントであることを頭に入れておいてください。
つまり、戦略的に、一般教養対策には一切時間をかける必要はありません。そのうえで、もし一般教養科目の対策をするのであれば、自分が得意な分野ひとつに絞って勉強することをおすすめします。
法務省のホームページで過去に出題された一般教養の問題を解いてみて、自分が得点できそうな分野を分析してみると良いでしょう。
3-2. 本番で少しでも点数をとるためのポイントは?
ほとんど対策せずに本番を迎えたとしても、適当にマークシートを塗りつぶすだけの作業にするのはもったいないです。
一見しただけではわからない問題も、よく考えてみると、専門的知識なしでも一般常識で回答できるような問題や、内容が分からなくても論理的に考えることで回答できるような問題も存在します。
一般教養科目では、全40問から20問を選択して解答することになるため、自分の手持ちの知識のみで解答できるような問題をいかに選択できるかが、本番で得点を少しでも上げるコツになります。
4. まとめ
予備試験の一般教養科目が仮に0点だったとしても、法律科目で8割得点することで短答式試験を突破することは可能です。合格者の多くも、法律科目の8割を目標としています。そのため、一般教養の対策に力を入れず、その分他の法律科目の勉強に時間を使うのが、試験対策上、得策であるといえるでしょう。
そのかわり本番では、一般常識や論理的に考えれば解ける問題を選択し、その問題に全力で取り組むことで、得点の最大化を目指すのが良いでしょう。
令和4年度(2022年度)より、論文式試験で一般教養科目が問われることはなくなりましたが、今後も試験制度が変わることがあるかもしれません。
今後の動向にも気を配りつつ、法律科目を中心に学習を進めるようにしましょう。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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