弁護士には種類がある?仕事内容・法律事務所・勤務形態による違いを解説

弁護士の業務内容には、民事事件や刑事事件、企業法務などさまざまな種類があります。弁護士が所属する法律事務所についても、規模や取り扱う業務内容による違いが見られます。
弁護士を目指す方は、弁護士にはどのような種類があるのかを知っておくと、未来の自分の姿をイメージしやすくなるでしょう。
今回は、弁護士の種類について、業務内容、法律事務所の種類、勤務形態に分けて解説します。将来弁護士を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1.弁護士資格を取得する方法
2.弁護士の仕事の種類
2-1.民事事件
2-2.家事事件
2-3.刑事事件
2-4.企業法務
2-5.公益活動
3.法律事務所の種類
3-1.法律事務所の規模による違い
3-1-1.弁護士法人
3-1-2.弁護士法人ではない法律事務所(共同事務所)
3-1-3.個人事務所
3-1-4.企業内弁護士
3-2.取り扱う業務内容による違い
3-2-1.総合法律事務所
3-2-2.専門法律事務所
3-2-3.公設法律事務所
3-2-4.渉外事務所
3-2-5.外資系法律事務所
4.勤務形態による弁護士の種類
4-1.法律事務所の所長
4-2.パートナー弁護士
4-3.勤務弁護士(アソシエイト弁護士)
5.まとめ
1.弁護士資格を取得する方法
弁護士の種類は、仕事内容、法律事務所、勤務形態などによって異なります。しかし、どの種類の弁護士を目指す場合でも、日本国内の弁護士資格を取得するには、司法試験に合格して司法修習を修了する必要があります。
予備試験からの最短ルートでも、弁護士資格を取得するには数年間は必要です。長く学習を継続するには、モチベーションの維持が欠かせません。弁護士の種類を知り、自分が目指す弁護士の姿をイメージすることは、学習のモチベーション維持にきっと役立つことでしょう。
※弁護士になるまでの流れについては、こちらの記事も併せてお読みください。
→弁護士になるには?必要な学力や最短で何年かかるのかなど弁護士になるまでの流れを解説
2.弁護士の仕事の種類
ここでは、弁護士の業務内容の種類を紹介します。弁護士の主な業務内容としては、次の5つが挙げられます。
◉民事事件
◉家事事件
◉刑事事件
◉企業法務
◉公益活動
多くの弁護士は、これらの業務のうち1つではなく複数を取り扱っています。
2-1.民事事件
多くの弁護士にとって、取り扱う事件数が最も多いのが民事事件です。民事事件の例としては、次のようなものが挙げられます。
◉貸金請求事件
◉交通事故
◉労働事件
◉損害賠償請求事件
◉債務整理
民事事件は、人と人、会社と人など私人間(しじんかん/一般市民の間)の紛争を取り扱う事件です。民事事件の業務としては、法律相談、書面作成、示談交渉、訴訟代理などがあります。弁護士は、当事者間では解決が難しい問題について、法律の専門家として適切な助言、サポートを行い、紛争を解決に導きます。
2-2.家事事件
家事事件は、主に家庭裁判所で手続がおこなわれる事件です。家事事件の例としては、次のようなものが挙げられます。
◉離婚
◉相続
◉養育費
◉成年後見
家事事件とは、家族間や親族間など家庭についての問題を取り扱う事件のことです。家事事件は、弁護士をつけずに当事者間の話し合いで解決されるケースもあります。しかし、家事事件は人間関係が崩れて、紛争が長期化するケースも多いです。弁護士は、冷静な話し合いが難しい当事者に代わって、法律の専門家としての立場から依頼者の権利を実現させるために活動します。
2-3.刑事事件
刑事事件における弁護士の役割は、被疑者・被告人の弁護活動です。弁護人は、被疑者・被告人の立場から捜査機関への対応や裁判の進行についての助言をおこないます。
被告人が無罪を主張する場合には、被告人の無罪を立証すべく、被告人の主張を裏付けるための証拠収集などをおこないます。被告人が犯罪の実行を認めている場合でも、示談交渉や情状立証など、被告人の罪が少しでも軽くなるような活動が必要です。
刑事事件の弁護人には、私選弁護人と国選弁護人の2通りがあります。
私選弁護人は、被疑者・被告人から直接依頼を受けて弁護活動をおこなう弁護人のことです。
国選弁護人は、経済的な貧困などを理由に弁護人を選任できない刑事事件の被疑者・被告人に対して、国が費用を負担し裁判所によって専任される弁護人のことです。
私選弁護人と国選弁護人とでは、選任方法が異なるだけで、刑事事件において求められる役割は基本的に変わりありません。
2-4.企業法務
企業法務では、企業が抱える法律問題全般を取り扱います。企業法務で取り扱う機会の多い業務には、以下のようなものが挙げられます。
◉契約書の作成
◉契約締結の立ち会い
◉株主総会の立ち会い
◉労使間紛争の代理人
企業法務を担当する場合は、企業と顧問契約を締結するケースが多いです。企業法務を専門とする法律事務所では、顧問先の企業以外からの依頼は受け付けていないところもあります。
企業法務に対応するには、業界特有の慣習や顧問先企業の情報など法律以外にも幅広い知識と教養が求められます。
2-5.公益活動
弁護士には、公益活動をおこなう義務が課されています。そのため、他の業務と並行して公益活動もおこなわなければなりません。公益活動の例としては、次のようなものが挙げられます。
◉国選弁護
◉法律扶助事件
◉弁護士会や市役所での法律相談
◉法律の教育業務
◉弁護士会の活動
国選弁護や法律相談などの公益活動は、弁護士会から各弁護士への割り当てがおこなわれます。公益活動に積極的な弁護士は、弁護士会の活動や大学での教育活動などにも積極的に参加しています。
3.法律事務所の種類
弁護士は、基本的には法律事務所に所属して業務をおこないます。ここでは、法律事務所の規模や取り扱う業務内容に着目して、法律事務所の種類を紹介します。
3-1.法律事務所の規模による違い
法律事務所の規模による法律事務所の種類としては、次のものが挙げられます。
◉弁護士法人
◉弁護士法人ではない法律事務所
◉個人事務所
◉企業内弁護士
以下では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
3-1-1.弁護士法人
弁護士法人とは、法人化した法律事務所のことです。弁護士法人を設立すると、複数の法律事務所を設置できるようになります。弁護士法人の設立が認められたのは、2002年の法改正以降です。現在では、大規模事務所の多くが弁護士法人を設立しています。
弁護士法人に所属する弁護士は、弁護士法人の社員として弁護士業務に従事します。取り扱う業務は、弁護士業務全般を取り扱う法人、企業法務を専門とする法人など弁護士法人によってさまざまです。
3-1-2.弁護士法人ではない法律事務所(共同事務所)
複数の弁護士が所属している法律事務所でも、全ての法律事務所が法人化しているわけではありません。複数の弁護士が共同経営する法律事務所は、共同事務所と呼ばれています。
共同事務所の経営は、各経営者が経費のみを共同で負担する場合と、収入を共同として各経営者に分配する場合の主に2パターンがあります。
共同事務所についても、取り扱う業務内容は事務所によってさまざまです。
3-1-3.個人事務所
個人事務所とは、1人の弁護士が経営する法律事務所です。個人事務所でも、従業員として弁護士を雇用している場合もあります。
共同事務所や個人事務所の場合、弁護士が複数所属していても設置できる法律事務所の数は1つだけです。
3-1-4.企業内弁護士
法律事務所には所属せず、一般企業の社員として勤務する弁護士を企業内弁護士(インハウスローヤー)といいます。
企業内弁護士の業務内容は、所属する企業の企業法務全般です。社員が法律問題を抱えている場合には、民事事件の代理人や刑事事件の弁護人となることもあります。企業内弁護士として勤務することには、毎月一定の給与を得ながら就業規則に従って業務をおこなえるため、ワークライフバランスを保ちやすいというメリットがあります。
近年、企業内弁護士を採用する企業は増加しており、2023年現在では3,000名を超える弁護士が企業内弁護士として活動しています。
※インハウスローヤーの詳細については、こちらの記事も併せてご覧ください。
→年収1,000万!?インハウスローヤー(企業内弁護士)の気になる年収をご紹介
3-2.取り扱う業務内容による違い
法律事務所は、取り扱う業務内容によって分類することもできます。業務内容によって法律事務所を分類すると、次のようになります。
◉総合法律事務所
◉専門法律事務所
◉公設法律事務所
◉渉外事務所
◉外資系法律事務所
続いて、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
3-2-1.総合法律事務所
総合法律事務所は、民事事件、家事事件、刑事事件など弁護士業務全般を取り扱う法律事務所です。日本の法律事務所の多くは、総合法律事務所となっています。
3-2-2.専門法律事務所
専門法律事務所は、特定の分野に特化した法律事務所です。特許関係の事件を取り扱う特許法律事務所、交通事故専門法律事務所、債務整理専門法律事務所などがあります。
専門法律事務所では、幅広い業務には対応しない代わりに特定の分野に特化して、強い専門性を発揮します。弁護士であっても、特許関係の法律に強い弁護士は少ないのが実情です。そのため、特許関係の事件については特許法律事務所が活躍するケースが多いです。
一方、交通事故や債務整理は、総合法律事務所でも対応できますが、専門事務所では、多くの事件を取り扱ってきたノウハウの蓄積により、迅速に事件を解決できるケースが多いようです。
3-2-3.公設法律事務所
公設法律事務所は、弁護士会などの支援により弁護士過疎地域に設置された法律事務所です。公設法律事務所では、法律扶助事件や国選弁護事件など公益活動となる事件を中心に取り扱います。
3-2-4.渉外事務所
渉外事務所は、外国企業との契約関係などを取り扱う事務所です。
日本では、五大法律事務所(西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所、TMI法律事務所)が有名です。
渉外事務所に勤務する弁護士は、外国語や外国の法律の知識が不可欠で、海外留学や時差の影響による深夜労働など、一般的な弁護士とは働き方に大きな違いがあります。
※五大法律事務所については、こちらの記事も併せてご覧ください
→五大(四大)法律事務所とは?日本を代表する大手法律事務所で働く方法を解説
3-2-5.外資系法律事務所
外資系法律事務所は、外国法律事務所の傘下にある、あるいは事務所名の使用などの点で提携関係にある日本の法律事務所のことをいいます。
主なクライアントは日本に拠点を置く海外の大手企業や、海外に拠点を置く日本の大手企業で、企業法務やM&A、ファイナンス案件などにおいてグローバルな法的サービスを提供していることが特徴です。
基本的には英語を共通言語としているため、外資系法律事務所に勤務するためには高い英語力が必須です。
4.勤務形態による弁護士の種類
最後に、勤務形態の違いによる弁護士の種類を紹介します。
◉法律事務所の所長
◉パートナー弁護士
◉勤務弁護士(アソシエイト弁護士)
以下、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
4-1.法律事務所の所長
法律事務所の所長とは、弁護士法人の代表、共同事務所の代表、個人事務所の代表など法律事務所のトップの地位にある弁護士のことです。「ボス弁」と呼ばれたりもします。
近年では、弁護士資格を取得してすぐに個人事務所を設立して所長となるケースも増えています。
4-2.パートナー弁護士
パートナー弁護士とは、共同事務所での所長以外の共同経営者のことです。パートナー弁護士は、代表弁護士と共同で経費と負担する、もしくは、共同で収入を管理することで、事務所の経営をおこないます。
パートナー弁護士には、弁護士業務に取り組む能力以外にも、営業力など経営者としての能力が必要です。
4-3.勤務弁護士(アソシエイト弁護士)
勤務弁護士とは、法律事務所に雇用されている弁護士のことで、「イソ弁」(居候弁護士)と呼ばれたりもします。
勤務弁護士は、所長やパートナーから与えられた業務を担当し、固定給で勤務します。事務所の方針によっては、勤務弁護士自身で事件を受任することも可能です(個人事件)。個人事件の受任が許されている場合には、固定給以外にも個人事件での収入を得ることができます。
勤務弁護士は、将来的には独立して個人事務所を設立したり、所属する法律事務所の共同経営者(パートナー)となったりするケースが多いです。
5.まとめ
ひと言に弁護士といっても、取り扱う仕事内容や働き方はさまざまです。自分の目指す弁護士の姿は、イメージできたでしょうか。
どのような弁護士を目指すとしても、まずは司法試験に合格しなければなりません。
自分の将来をイメージし、強いモチベーションを維持して受験勉強に取り組んでいきましょう。
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著者:伊藤塾 司法試験科
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