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裁判官の仕事とは?仕事内容や1日の働き方・裁判官の種類による仕事の違いを解説

2025年03月04日

 
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裁判官の中心的な仕事は、裁判において公正な判決を下すことです。裁判官は、弁護士や検察官とは異なり、あくまで中立的な立場で法律を適用して結論を導きます。

裁判官が具体的にどのような仕事をしているのかは、一般にはあまり知られていません。裁判官を目指す方は、裁判官の具体的な仕事内容に興味があることでしょう。

今回の記事では、裁判官の仕事内容や働き方、裁判官の種類などを解説します。裁判官の仕事について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
1.裁判官の仕事内容
 1-1.民事裁判
 1-2.家事調停・家事審判
 1-3.刑事裁判
 1-4.その他
2.裁判官の働き方 
 2-1.裁判官の1日
 2-2.裁判官の給与
3.裁判官の種類と仕事内容
 3-1.判事補
 3-2.判事
 3-3.高等裁判所長官など
 3-4.家庭裁判所判事
4.まとめ

 

1.裁判官の仕事内容

裁判官の具体的な仕事内容は、裁判官が担当する事件によって異なります。裁判官が担当する事件の種類は、次のように分けられます

 ◉民事裁判
 ◉家事調停・家事審判
 ◉刑事裁判
 ◉その他

裁判官の仕事をひと言で表すと、公平中立な立場から公正な判断を下すことです。それは、事件の種類が変わっても同じです。裁判官が、それぞれの事件でどのような働きをしているのかを具体的に見ていきましょう。

 

1-1.民事裁判

民事裁判は、人と人、人と法人などの私人間(しじんかん/私人(市民)の間)の紛争を判決によって解決する手続きです。民事裁判の典型例としては、「貸金の返金を求める裁判」「土地の明け渡しを求める裁判」「損害賠償の支払いを求める裁判」などがあります。

民事裁判における裁判官の主たる仕事は、当事者の主張と証拠から事実を認定し、それに法律を適用して正確な判決を下すことです。裁判官は、当事者の主張していない事実を認定してはいけません。あくまで当事者の主張を前提に、中立的な立場で法律を適用します。

民事裁判では、判決にまで至らずに和解で解決する事件も多くあります。裁判に至るまでの交渉では解決しなかった事件が、裁判上の和解で解決するのも裁判官の働きによるものが大きいです。裁判官は、和解による解決が適切と考える事件について、これまでの審理の経過から当事者に和解についての指針を示します(和解勧告)。審理の経過をふまえての和解勧告には、当事者も納得して和解に応じるケースが多いです。

民事裁判には、典型的な訴訟手続以外にも、執行手続や倒産手続などがあります。これらの手続きにおける裁判官の仕事は、命令や決定を下すことによって事件を解決することです。

 

1-2.家事調停・家事審判

家事調停・家事審判は、離婚や相続など家庭内や親族間でのもめ事を解決する手続きです。

家事調停は、話し合いによる解決を目指す手続きとなります。裁判官は、画一的に法律を適用するのではなく、両当事者の意見を聞いて感情面にも配慮したうえで、両当事者が納得できる解決へと導きます。

家事審判は、調停がまとまらないときなどに行われる判決に近い効力を持つ手続きです。審判で解決する場合でも、裁判官としては審判が人間関係に与える影響にも配慮したうえで結論を出すことが重要となります。

 

1-3.刑事裁判

刑事裁判は、検察官が起訴した事件について、被告人の有罪・無罪を判断し、有罪の被告人についてどのような刑罰を科すべきかの判決を下す手続きです。

刑事裁判において、裁判官は、検察官と弁護人の主張と証拠から事実を認定して、法律の適用により刑罰を科します。刑事裁判には、無罪推定の原則があります。そのため、検察官の提出した証拠により、合理的な疑問を残さない程度に間違いないと確信できる場合でなければ犯罪事実を認定することはできません。

刑事裁判での判決は、民事裁判の判決以上に当事者の人生を大きく左右するものです。裁判官は、厳しい視点で証拠を精査し、正確な判決を下さなくてはなりません。

刑事手続きにおける、逮捕状や捜索差押令状などの令状発布も裁判官の仕事のひとつです。令状は、強い効力を持つため、令状の発布要件についても慎重に判断する必要があります。

少年審判における処分を下すのも裁判官の仕事です。少年事件の処分は、保護処分と呼ばれており、被告人を処罰する刑事裁判とは異なり、少年の更生を目的としています。

裁判官は、少年や保護者、付添人の言い分や、家庭裁判所調査官の意見、捜査記録から、少年の更生のために適切と考える処分を下します。

 

1-4.その他

裁判官の仕事は、裁判だけでなく講演会や法律書の原稿執筆、弁護士や検察との意見交流会への参加などもあります。

裁判官のキャリアをスタートする判事補の時代には、民間企業や行政機関での研修を受けたり、海外留学を経験したりする裁判官も多いです。

 

2.裁判官の働き方

ここでは、裁判官の1日のスケジュールや給与など、裁判官の働き方について解説します。

 

2-1.裁判官の1日

民事裁判や刑事裁判を担当する裁判官のスケジュールは、裁判が中心となります。

裁判期日(裁判が開かれる日時)がある日には、記録や争点の確認、合議体(原則として、裁判官3人で構成された組織)の裁判官との協議、書記官との打合せなどを行い、期日に備えます。

裁判期日は、5分程度の短い時間で終わるものから、数日がかりで行われるものまでさまざまです。そのため、裁判官のスケジュールも、1日に複数の裁判期日を担当することもあれば、裁判期日がない日もあります。裁判員裁判や証人の多い事件では、何日間も日中の予定が裁判期日だけで埋まることもあります。

裁判期日がない日でも、裁判官の仕事は多忙です。多くの裁判官は、裁判期日がない日や、退庁時間が過ぎた後の作業に集中できる時間を利用して、記録の読み込みや争点整理、判決の起案を行っています。

日中の期日が重なる時期には、記録の整理や判決の起案のために遅くまでの勤務や休日の勤務をすることも多いです。

 

2-2.裁判官の給与

裁判官の給与は、裁判官の報酬等に関する法律で決められています。

区分報酬月額
最高裁判所長官2,016,000円
最高裁判所判事1,470,000円
東京高等裁判所長官1,410,000円
その他の高等裁判所長官1,306,000円
判事1,178,000円~518,000円
判事補423,000円~244,000円

参照:裁判官の報酬等に関する法律|e-Gov法令検索

司法修習を修了して判事補に任命されると、給与は月額24万4,000円からスタートします。月額報酬以外には、地域手当や期末、勤勉手当なども支給されます。ただし、裁判官には、一般職の職員と同様の勤務時間を観念するのが困難であるため残業代や休日・夜間報酬などは支給されません。

※裁判官の年収については、こちらの記事をご参照ください。
裁判官になるには?気になる年収や向いている人の特徴もご紹介

 

3.裁判官の種類と仕事内容

裁判官に任官すると、判事補からスタートし、判事、高等裁判所長官などへとキャリアを積み重ねていきます。

ここでは、裁判官の種類による仕事内容の違いについて解説します。

 

3-1.判事補

司法修習を修了して裁判官に任官すると、10年間は判事補として経験を積みます。

判事補は、民事裁判、刑事裁判、家庭裁判所などの勤務を順次経験して、裁判官としての基礎的な素養を身に付けます。判事補の期間には、海外留学や民間企業研修、行政官庁勤務など外部での経験を積むことも重要です。

裁判においては、特例判事補の例外を除いて、単独で事件を担当することはできません。判事になるまでの期間は、合議体の左陪席(ひだりばいせき/裁判長から見て左側に座るキャリア5年以下の判事補)として先輩裁判官の仕事ぶりから訴訟指揮を学びます。

 

3-2.判事

判事補を10年経験すると判事になります。判事になると、単独事件を担当できるようになります。判事になると、ようやく一人前の裁判官として認められるのです。

判事としては、高等裁判所での勤務や合議体の裁判長などとして経験を積むことになります。他には、裁判官研修の教官や司法研修所の教官に任命されるなど判事としての職務内容は多種多様です。

裁判官の多くは、65歳の定年までを判事として過ごすことになります。

 

3-3.高等裁判所長官など

判事の上の階級としては、高等裁判所長官、最高裁判所判事、最高裁判所長官があります。

最高裁判所長官は8名、最高裁判所判事は14名、最高裁判所長官は1名となっており、裁判官のキャリアとしての頂点を目指すのであれば狭き門と言えるでしょう。

 

3-4.家庭裁判所判事

家庭裁判所判事は、判事補を3年経験した者の中から任命されます。簡易裁判所判事選考委員会によって選考された裁判所書記官が任命されるケースも少なくありません。

 

4.まとめ

裁判官の仕事は、紛争や事件を解決するための判決を下すことです。裁判官の判決は、当事者の人生に大きな影響を与えます。そのため、裁判官の仕事には公正中立であることと、強い責任感が求められます。

裁判官の仕事は責任が重く、その分だけやりがいの大きな仕事です。裁判官の仕事に興味のある方は、ぜひ司法試験に挑戦してみてください。

 

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著者:伊藤塾 司法試験科

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