法学部の就職先はどこが多い?おすすめの進路について解説

法学部と聞くと、将来的には弁護士や検察官、裁判官などの法曹関係者を思い浮かべる人が多いかと思います。
しかし、近年法曹界でも働き方の多様化が進んでおり、法律を学んだ学生がさまざまな分野で活躍するようになっています。
法学部で学ぶ知識は、社会に出て働くうえで重要になる様々な知識を学ぶことができ、採用する企業側も、将来的に多方面で活躍することを期待して法学部生を採用しているようです。
そこで、この記事ではまず法学部について解説したうえで、法学部生の就活事情について最終的に目指すべき進路を解説していきます。
将来どんな仕事をしようか迷っている方は、ぜひこの記事を参考にして有意義な進路選択をしてください。
【目次】
1.法学部ってどんな学部?
2.法学部は就活で有利になるって本当?
3.法学部の進路とは
3-1.法曹界
3-1-1.弁護士
3-1-2.検察官
3-1-3.裁判官
3-2.民間企業
4.法学部生が目指すべき進路
4-1.司法試験は誰でも手が届く試験
4-2.司法試験はコスパがいい資格?
4-3法学部で学んだ知識を生かす事ができる
5.まとめ
1.法学部ってどんな学部?
法学部は、文字通り法律について学ぶ学部です。
中学・高校で、日本国憲法については簡単に学びますし、民法や刑法など、日常生活に直結するような法律については、日常のタイミングで触れることもあるかと思います。
法学部ではこれらの法律をより詳しく専門的に学ぶことになります。
また、日常生活に関わるけれど詳しく学んだことがない法律や、そもそも日常生活では関わることがない法律についても学ぶことになります。
もちろん、六法全書の内容を丸暗記するというわけではなく、六法はあくまでも辞書として使い、必要なときに条文を参照しながら法律という学問の真髄を理解していきます。
つまり、法学部で学ぶのは「法学」であって、法律を暗記するために講義を受けるわけではありません。
法学部で学ぶべき法学については、大きく「解釈論」と「立法論」の2つに分野を分けて考えることができます。
「解釈論」とは、難解で抽象的に書かれた法律が、どのように解釈されて日常生活のルールを作っているのかを学ぶための分野です。
人によって法律の解釈は違うかもしれませんが、裁判上では一定のルールを設けておかないと、法的安定性を保つことはできません。
法律をどう噛み砕いて、具体的な事件にどうやって適用するのか、裁判例ではどのように判断しているのかを学ぶのが法律の解釈論という分野になります。
【具体例】
公園の立て看板に「車は立ち入るべからず」と書いてありました。
では、車椅子は公園に入ってもよいでしょうか?乳母車はどうでしょうか?
例えば具体例のように、「車の侵入禁止」が掲げられている場所に車椅子で立ち入った場合に罪に問われるのかどうかを、法的に解釈して判断するのが法解釈という分野になります。
立て看板の「車」には、文字通り4輪で走る自動車のみを対象として歩行の補助となる車椅子や乳母車は含まれないと解釈するのか、また、バイクなどの2輪車も含まれないと縮小して解釈するのか、「車」を拡張して解釈し車椅子や乳母車まで対象を広げるのか、車が禁止されてるんだから当然ヘリコプターも禁止されてるだろうと類推して解釈するのかなど、いろいろな解釈の仕方があります。
論理的にはどの解釈もありうるため、法律の趣旨や目的、法律を作った人の意思を考慮して法律を解釈し、妥当な結論を導く必要があります。
具体例で言えば、立て看板の目的は公園内で遊ぶ子供たちの安全を守ることにあるでしょう。そのため、車やバイクなどの侵入は禁止されるけど、車椅子や乳母車までは禁止されていないと解釈するのが、妥当な結論といえるでしょう。
対して、「立法論」とは、つまり行政および司法と並ぶ国家作用の一つである立法について学ぶ分野です。
今ある法律がどのように制定されたのか、過去の裁判ではどのように判断されたのか、現代社会に合っているか、などを学ぶことで、明治時代に作られたような古い法律がそのまま使われている場合に、現代社会に合わせてアップデートする必要性についての議論を学び、法改正の必要性について自分なりに考えていくのが、法律の立法論という分野になります。
このように、法学部では法律の表面的な部分だけではなくもっと根本的、内面的な部分まで深く学ぶことになるため、自分で考える力が身につくのです。
2.法学部は就活で有利になるって本当?
法学部の場合、すでに述べたように、法律の解釈論や立法論を通して、物事への深い理解力や論理的思考力が身に付きます。
また、法学部では、法律の他にも経済学や経営学など、ビジネスに関わるような学問についても、法律を通して学ぶことができます。
社会に出るとさまざまな社会活動は法律に基づいて行われることになります。
もちろんそれはビジネスの場面でも同様で、最低限の法律に関する知識やノウハウはどうしても必要になってきます。法律がまだ整備されていない新しいビジネスの分野もどんどん生まれています。
そのため、最低限度の法律知識がある法学部生は、あらゆる分野で重宝される人材となるのです。
さらに、法律の解釈論や立法論を学ぶことにより、自分で考える力が身についている法学部生は社会に出てからも受け身にならず、何事も積極的に自分の頭で考えて行動する事ができるようになるのです。
業界の垣根を超えて、さまざまなフィールドで活躍している諸先輩方に法学部が多いのも、そのような積極的な姿勢を評価された結果といえるでしょう。
3.法学部の進路とは
それでは、法学部生はどのような進路を選んでいるのでしょうか。
法学部であれば目指すべき法曹界と、それ以外の民間企業に分けて解説していきます。
3-1.法曹界
【法曹三者】
◉弁護士
◉裁判官
◉検察官
まず、法学部生の就職先で1番に紹介しなくてはならないのは、弁護士、検察官、裁判官の法曹三者です。
法曹三者になるためには、まず法科大学院課程を修了(2023年より法科大学院在学中受験が可能)するか、予備試験に合格し、司法試験の受験資格を得る必要があります。
司法試験に合格した後、司法修習を経て晴れて法曹三者として社会に出ることができ、法的弱者を救済する職務に就くことができるのです。
ここからは、法曹三者それぞれがどういう仕事をするのかをご紹介していきます。
3-1-1.弁護士
近年、弁護士をモデルにしたテレビドラマをよく見かけるようになったこともあり、弁護士がどういった仕事なのかは、イメージしやすいかもしれません。
どちらかというと法廷に立ち、鋭い主張を述べている姿を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、弁護士の仕事はそれだけではありません。
日常生活で発生した様々なトラブルに対し、法律の専門家として相談を聞き、依頼者が抱えている問題を適切な解決に導くことも、弁護士の大切な仕事のひとつです。
一般民事から刑事事件まで、取り扱う問題が非常に広範囲なため、弁護士によって得意な分野や注力している分野が違うというのも、弁護士という仕事の特徴といえるでしょう。
近年、一企業の従業員として、法務関係の仕事を受け持つインハウスローヤーという働き方も浸透しつつあり、弁護士としての働き方の多様化が進んでいます。
どんな働き方をするにしても、法律相談、事務処理、裁判など、その仕事はとても責任が重い仕事になるのは間違いありません。
しかし、法律の専門家として一般人の権利を守るのが弁護士の重要な役割であることを考えると、非常にやりがいのある仕事であることは間違いなく、本気で困っている人を助けたいという気持ちを持っているのであれば、喜びを感じる機会がたくさんある仕事です。
3-1-2.検察官
検察官の仕事は、主に犯罪の捜査と裁判をすることです。
事件が発生すると、まず警察組織が捜査をして容疑者を逮捕しますが、犯罪の疑いが濃厚であれば、その後すぐに検察官に身柄を送られることになります。
検察官は、送られた捜査書類や証拠品をもとに容疑者本人への取り調べや関係者への聞き込み、証拠の確認、検討などを行います。
捜査の結果、容疑者が犯人であると判断した場合には、被疑者を裁判にかけ、刑罰を課してもらうよう主張します。
日本において、容疑者を裁判にかけるかどうかを決められるのは検察官のみが持つ特別な権限です。
つまり、容疑者について刑罰をもって罰するためには、検察官の働きが必要不可欠であるといえるのです。
また、条文では幅を持たせて書かれている刑罰上、どれくらいの刑罰を課すべきかを判断するのも検察官の重要な仕事になります。
人々が犯罪に怯えることのない安全で平穏な暮らしを守るために、検察官は非常に重要な役割を果たしているといえるのです。
また、検察官が活躍するフィールドは年々広がっており、検察庁や法務省にとどまらず、さまざまな分野で、法律の専門家としての知見と能力を存分に発揮しています。
厚生労働省、公正取引委員会、証券取引等監視委員会、在外公館、途上国での法整備の支援、リーガルアタッシェ(法律家である外交官)など、その活躍はとどまる所を知りません。
日本政府が司法外交を推進していることから考えると、検事の活躍のフィールドは、今後さらに広がっていくことが予想されます。
3-1-3.裁判官
裁判官と聞くと、木製のハンマーを叩いている姿を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
裁判官は、日本の裁判制度において、当事者や弁護士、検察官が提出する証拠や主張に基づき、公正中立の立場で、法律的な判断を下す役目を担います。
法律や裁判例をもとに、裁判官自身の良心に従った判断をすることにより裁判を進行し、最終的に判決を下すことになりますが、その判断はときに当事者の人生を決めることになる重要な判断になるため、非常に重い責任が伴います。
また、判決を下すために、該当事件に関する事件記録を詳細に読み込んだり、膨大な量の裁判例を調べる必要があります。
そのため、裁判官の仕事は、肉体的にも精神的にも非常にハードな仕事だといえるでしょう。
しかし、裁判官はその職務の重大性および裁判の公正を保つために、一定の条件によらなければ罷免されなかったり、棒給の減額を受ける事はないなどの手厚い身分保障が与えられています。
また、さまざまな境遇の方が当事者となる裁判で、当事者に心から寄り添い、謙虚で思いやりある姿勢をもつ事で、争いを妥当な解決に導くことができるのも、裁判官だからこそできる仕事なのです。
このように、裁判官には大きな責任が伴いますが、だからこそ、裁判官の仕事はとてもやりがいがあるといえるのです。
3-2.民間企業
【法学部が活躍するフィールド】
◉金融業界
◉不動産業界
◉情報通信業界
◉商社
◉公務員
◉コンサルティング
◉起業
法学部生だとしてもすべての人が法曹界に進むわけではなく、民間の一般企業に就職する人もいるでしょう。
たとえば、金融商品を取り扱う金融業界であれば、金利や担保に関する最低限の法律知識が必要になるため、法学部出身で法律に明るく、論理的な思考力に優れている学生は重宝される傾向にあります。
企業が抱えているさまざまな問題を発見し、成長の手助けをするコンサルティングという仕事も法学部生には人気の仕事の一つになります。
コンサルティングには経営、IT、人事などさまざまな分野の専門知識が必要で、ある程度の経験も必要な職種であることは間違いないでしょう。
そこでは法律的な基本知識やノウハウが要求されるだけでなく、未開拓の分野を積極的に開拓していくような姿勢が常に求められます。
この点、法学部生は法律を学ぶうえで、今ある出来事を多角的に考える力が身についており、現存する法律が時代に適合しているのかどうかを常に学ぶことで、既存の概念にとらわれず、新たな分野・領域を開拓し、独創的・革新的な発想を生み出すことに長けています。
そういう意味で、法学部生が培ってきた土台はコンサルティング業界にも活かすことが出来るといえるでしょう。
また、商社であれば、業務の柱であるトレーディングや事業投資には、多くの場面で法律の知識やノウハウが必要とされ、法学部生が大学で学んだ知識を生かして活躍することができるでしょう。
総合商社であれば、海外とのやり取りも多くあり、そこでは幅広い分野の知識が必要になるとともに、それに伴う基礎的な法律知識も必要になるでしょう。
大学で学んだ知識をより実践的に活かすのであれば、商社で働くというのも一つの選択であることは間違いないでしょう。
このほかにも、不動産業界や情報通信業界などがよくある就職先となっています。
なかには、公務員試験を受けて省庁や地方自治体で職員または教師として働く方もいますし、自分で起業して事業を立ち上げる方もいます。
このように、多方面で活躍できる土台を学生時代に身につけることができるため、法学部生の就職先にはさまざまな分野があるようです。
4.法学部生が目指すべき進路
それでは数ある就職先の中で、法学部生が目指すべきはどのような進路になるのでしょうか。
4-1.司法試験は誰でも手が届く試験
結論からいえば、法学部で学んだ知識を活かすのであれば法曹界を目指すのがおすすめです。
司法試験と聞くとそれだけで
「どうせ一部の天才しか受からない試験なんでしょ」
「合格率も1%とかで、有名大学出身者しか受からないでしょ」
などと否定的になる人がいます。
たしかに、法曹三者は人の人生を左右する決断を迫られる仕事なので、簡単に合格させてしまっては法的安定性が保たれなくなってしまうでしょう。
そういう面では、司法試験に合格するためにはある程度の勉強時間を確保するのは必須になってきます。
しかし、令和4年度の司法試験の合格率は45.52%と、かなり高い数字になっています。
これは、司法試験が六法に記載している細かい論点まで正確に暗記できているかを問うような試験ではなく、法学を学んだことのあるものであれば、誰でも知っているような基本的な知識を使いこなす事ができるか、という試験になっている事が関係しています。
つまり、法律の基本的なことさえマスターできれば、誰でも手が届く試験が司法試験なのです。
法学部に入学したのであれば、法学にまったく興味のない方というのは少ないでしょう。
法律で学んだ知識をより実践的に活かすのであれば、弁護士や検察官、裁判がおすすめの進路であるといえるでしょう。
4-2.司法試験はコスパがいい資格?
予備試験・司法試験 |
司法試験合格までにかかる勉強時間は2,000〜5,000時間 |
司法試験:45.5% ※予備試験ルートからの司法試験合格者:97.53% |
勤務弁護士の平均年収:945万3,600円 参照:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況 |
司法試験に合格するまでにかかる勉強時間は2,000〜5,000時間程度と言われています。
この勉強時間は、ほかの資格取得にかかる時間よりも長いかもしれませんが、大学生で毎日ある程度の勉強時間を確保できるのであれば、1日平均約3~4時間程度の勉強時間を確保できるのであれば、大学4年間で5,000時間の勉強時間を確保できる計算になります。
つまり、大学1年生から毎日計画的に勉強すれば、大学生活と両立したうえで、司法試験に合格するだけでの基礎学力を身に着ける事ができるのです。
合格率をみても、司法試験の合格率は45.5%、予備試験合格者の司法試験合格率は実に97.53%です。
予備試験に受験制限はない事を考えると、在学中に予備試験に合格し、翌年司法試験に合格するというルートも夢ではないのです。
また、資格の汎用性という面でみても、司法試験は文系最強の資格です。
法律系の資格には行政書士や司法書士、弁理士や社労士などさまざまなものがありますが、司法試験に合格することができれば、法律に関する業務をほとんど行うことができるのです。
勤務弁護士の平均年収約945万は、民間の平均年収445万(令和3年度:国税庁による民間給与実態統計調査)と比べても、相当高い水準になっていることがわかるかと思います。
ほかの法律資格をみてみると、たとえば令和3年度の行政書士試験の合格率は11.18%、令和4年度の司法書士試験の合格率は5.18%と、司法試験の合格率よりも低くなっていることが分かるかと思います。
これら全ての面から、司法試験は非常にコスパのいい試験であるといえるのです。
司法試験合格に向けて一直線で勉強する事こそが、司法試験に合格するための一番の近道であるといえるのです。
4-3法学部で学んだ知識を生かす事ができる
法学部で学んだ法律知識を、より実践的な場で使うことが出来るのは間違いなく弁護士や検察官、裁判官などの法曹三者になるでしょう。
せっかく法学部に入学したのであれば、そこで学んだ知識を活かした仕事がしたいと思う人は多く、実際に大学に入ってすぐに予備校に入り司法試験の勉強を始める人が多いのも法学部の特徴です。
もし少しでも法律に関する分野で働きたいと感じたのであれば、司法試験の勉強を始められてみてはいかがでしょうか。
5.まとめ
◉法学部生は弁護士・裁判官・検察官を目指すのが最も効率的
◉司法試験は非常にコスパのいい試験
◉司法試験に向けて一直線に勉強しよう
ここまで、法学部生が目指すべき進路について解説してきましたが、様々な進路がある中で方向性は見えてきましたでしょうか。
学びが日常である学生時代だからこそチャレンジしてほしい進路は何と言っても法曹三者です。
最難関と言われている司法試験ですが、だからこそ勉強時間が確保しやすい学生時代に学びをスタートさせ、合格を手にしていただきたいと思っています。
確実な合格のためには、一日も早く受験勉強をスタートさせることが大切です。
そして、効率よく学習することも非常に重要です。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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