法科大学院に行くな・やめとけは本当か?ロースクールから司法試験に合格する秘訣とは

世間では「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われることがあります。
司法試験の合格を目指している方の中には、「そのように言われるのはなぜなのだろう、このまま勉強を続けても良いのか」と不安に感じる方もいらっしゃることでしょう。
今回は、「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われるのはなぜか、その理由は正しいのかについて解説します。法科大学院ルートを目指すうえでの注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1.「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由
1-1.法科大学院ルートでの司法試験の合格率が低い
1-2.法科大学院を修了するまでに時間と費用がかかる
1-3.司法試験に合格しても弁護士の将来に不安がある
2.「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由は正しいのか
2-1.法科大学院在学中受験者の合格率は高い
2-2.時間を短縮したり費用を抑えたりする方法はある
2-3.弁護士の将来に不安を感じる必要はない
3.法科大学院ルートを目指す際の注意点
3-1.大学入学後の早い段階で予備試験の学習を始める
3-2.法科大学院入学までにひと通りの学習を終える
3-3.司法試験の合格率が高い法科大学院を目指す
4.まとめ
1.「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由
「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる主な理由には、次の3つが挙げられます。
● 法科大学院ルートでの司法試験の合格率が低い
● 法科大学院を修了するまでに時間と費用がかかる
● 司法試験に合格しても弁護士の将来に不安がある
ここでは、実際のデータも参考に、「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由について詳しく解説します。
1-1.法科大学院ルートでの司法試験の合格率が低い
1つ目の理由は、法科大学院ルートでの司法試験の合格が難しいというものです。
下記表をご覧ください。
令和5年度(2023年度)の司法試験合格者数と合格率を表したものですが、法科大学院修了者の合格率は32.61%、令和5年度よりスタートした法科大学院在学中受験者の合格率59.53%を加味した法科大学院合計の合格率は40.67%となり、予備試験合格者の合格率92.63%には遠く及びませんでした。
【 令和5年度(2023年度)司法試験合格者数と合格率】
受験者数 | 最終 合格者数 | 合格率 | |
司法試験全体 | 3,928人 | 1,781人 | 45.34% |
法科大学院合計 | 3,575人 | 1,454人 | 40.67% |
(法科大学院修了者) | 2,505人 | 817人 | 32.61% |
(法科大学院在学中) | 1,070人 | 637人 | 59.53% |
予備試験合格者 | 353人 | 327人 | 92.63% |
次に、過去5年間の司法試験合格率について、法科大学院ルートと予備試験ルートとで比較してみましょう。
下記表をご覧いただくとお分かりのとおり、近年、法科大学院ルートの合格率は上昇しているものの、30%〜40%程度となっており、合格率80%〜90%台の予備試験ルートとの開きはまだまだ大きい状態です。
このように、予備試験ルートと比べて司法試験合格率が低いことが「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる一因であると考えられます。
【法科大学院ルートと予備試験ルートの司法試験合格率推移】
司法試験合格率 | |||||
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
司法試験 全体 | 33.63% | 39.16% | 41.50% | 45.52% | 45.34% |
法科大学院 ルート | 29.09% | 32.68% | 34.62% | 37.65% | 40.67% |
予備試験 ルート | 81.82% | 89.36% | 93.50% | 97.53% | 92.63% |
※予備試験ルートの司法試験合格率が高い理由は、こちらの記事で詳しく解説しています。
→なぜ予備試験合格者の司法試験合格率は高いのか?その理由について解説
1-2.法科大学院を修了するまでに時間と費用がかかる
法科大学院を修了するまでには、最短コースで進んでも時間と費用がかかります。法科大学院ルートで合格しても、時間と費用に見合った結果が得られないというのが「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる2つ目の理由です。
これまでは、大学の学部から法科大学院に進学すると、卒業までに既修者コースで6年、未修者コースだと7年かかる状況でした。法科大学院の学費は、国立大学でも2年で約190万円となっており、決して安価とは言えません。
なお、2020年に法曹コースが導入されてからは、最短で司法試験を受験するまでの期間が2年短縮されました。
それでも、16歳で予備試験に合格し、司法試験の受験資格を得た受験生もいる予備試験ルートと比較すると、法科大学院ルートは司法試験合格までに多くの時間と費用を必要とする選択肢であるといえるでしょう。
※法科大学院の学費については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【必見!】学費が安い法科大学院(ロースクール)は?各法科大学院の費用総まとめ
1-3.司法試験に合格しても弁護士の将来に不安がある
司法試験合格後の不安も「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由の1つです。
近年、「弁護士が増えすぎている」「弁護士は稼げない」などと報道されることも増えています。実際、新司法試験がスタートした2006年は2万2,000人ほどであった弁護士の人数が、2024年現在では4万5,000人を超える人数にまで増加しています。
日弁連が10年ごとに実施している「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」によると、弁護士収入の平均値、中央値は、下記表のとおり減少傾向が見られ、弁護士の将来に不安を感じる要因となっているのかもしれません。
【弁護士収入の平均値、中央値】
年 | 平均値 | 中央値 |
2010年 | 3,304万円 | 2,112万円 |
2020年 | 2,558万円 | 1,437万円 |
2.「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由は正しいのか
前章では、「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる理由について解説しましたが、果たして、法科大学院に進学することは本当にやめておいた方がよいのでしょうか。
下記視点から考察すると、法科大学院に行くメリットは十分にあることが分かります。
● 法科大学院在学中受験者の合格率は高い
● 時間を短縮したり費用を抑えたりする方法はある
● 弁護士の将来に不安を感じる必要はない
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2-1.法科大学院在学中受験者の合格率は高い
令和5年度の司法試験の結果をもう一度見てみましょう。
令和5年度は、初の法科大学院在学中の司法試験受験が行われたわけですが、在学中受験者の合格率は59.53%となり、法科大学院修了者の合格率32.61%を大きく上回りました。
【 令和5年度(2023年度)司法試験合格者数と合格率】
受験者数 | 最終 合格者数 | 合格率 | |
司法試験全体 | 3,928人 | 1,781人 | 45.34% |
法科大学院合計 | 3,575人 | 1,454人 | 40.67% |
(法科大学院修了者) | 2,505人 | 817人 | 32.61% |
(法科大学院在学中) | 1,070人 | 637人 | 59.53% |
予備試験合格者 | 353人 | 327人 | 92.63% |
法科大学院に進学して在学中に受験すれば、約6割が司法試験に合格できるとなれば、法科大学院を目指す方々のモチベーションも上がるのではないでしょうか。
ただし、ここで注意しなければならないことがあります。それは、令和5年度の法科大学院在学中合格者の多くは、予備試験受験経験者もしくは学部生の頃から予備試験の学習を続けてきた学生だということです。
それは、令和5年度の法科大学院修了者の合格率が32.61%であること、また、過去5年間の法科大学院ルートでの合格率が20%〜30%台であることを見れば、簡単にご理解いただけるでしょう。
したがって、法科大学院在学中に司法試験に合格するための重要なポイントは、法科大学院入学前から予備試験の学習を始めておくこと。そうした準備をした上で法科大学院に進学することは、司法試験合格に大きく近づく懸命な選択となるでしょう。
2-2.時間を短縮したり費用を抑えたりする方法はある
法科大学院に進学する場合でも、時間を短縮したり費用を抑えたりする方法はあります。
法学部に設置されている法曹コースでは、大学の学部を3年で卒業して法科大学院に進学、法科大学院2年目に司法試験を受験することが可能です。
さらに、予備試験には受験資格の制限がないので、法曹コースを選択しつつ予備試験を受験することもできます。大学在学中に予備試験に合格できれば、翌年から司法試験を受験できるので、さらに受験までの期間を短縮できるでしょう。
法科大学院の学費の面では、奨学金や特待生の制度を利用すれば、費用の心配をせずに進学することも可能です。特に私立の法科大学院では、特待生になれば授業料が全額免除されるところもあるので、学力さえあれば費用をかけずに法科大学院を修了できます。
※法科大学院の学費免除や奨学金などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【2023年度】学費免除や奨学金など法科大学院(ロースクール)の経済的支援総まとめ
2-3.弁護士の将来に不安を感じる必要はない
弁護士の将来を不安視する報道を気にしすぎる必要はありません。弁護士の仕事は、これから先も無くなることはないでしょう。
弁護士の年収は減少傾向にあるものの、2020年の中央値でも1,400万円を超えており、他の職業と比較すると高収入の職業であることは間違いありません。現在でも働き方によっては、1億円を超える年収を稼いでいる弁護士も多くいます。
弁護士の数が増えたことで、弁護士になれば誰でも稼げる時代では無くなったのかもしれません。それでも、弁護士は働き方次第で十分に稼げる職業です。
実際、筆者の周りでも「暇で仕事がない」と言っている弁護士は、ほとんど見たことがありません。コンプライアンスが重視される現代社会において、訴訟外での弁護士需要は高まっています。AIが弁護士の代わりになる状況も現状では考えられず、弁護士の仕事がなくなるという不安を感じる必要はないと言ってよいでしょう。
※弁護士の将来性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→弁護士の仕事がなくなる?AIの登場による弁護士の将来性を徹底解説!
※弁護士の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→弁護士の年収はどのくらい?平均年収や中央値・仕事の魅力を検証しました
3.法科大学院ルートを目指す際の注意点
これまで述べてきたように、「法科大学院に行くな・やめとけ」という意見は正しいとは言えないものの、法科大学院ルートを目指す際は、次の点に注意が必要です。
● 大学入学後の早い段階で予備試験の学習を始める
● 法科大学院入学までにひと通りの学習を終える
● 司法試験の合格率が高い法科大学院を目指す
法科大学院に入学さえすれば司法試験に合格できるということはありません。
法科大学院ルートを目指すのであれば、「法科大学院入学」を目標とするのではなく、「最終的な司法試験合格」を目標として学習を続ける必要があります。
それぞれの注意点について詳しく解説します。
3-1.大学入学後の早い段階で予備試験の学習を始める
最終目標である司法試験合格のためには、法科大学院ルートであっても、予備試験合格を目指して大学入学後のできるだけ早い段階で学習を開始することが重要です。
予備試験合格者の司法試験合格率からすると、予備試験合格レベルの学力を身に付けることは、司法試験合格に直結することがわかります。
また、早期に予備試験の学習を始めることは、学部試験で好成績を収め、高いGPAを獲得することにも繋がります。その結果、司法試験合格率の高い法科大学院に入学できる可能性が高くなるほか、好成績で法科大学院入試を突破できれば、全額学費免除の特待生として進学することも可能になります。
予備試験の合格を目指して学習することは、たとえ予備試験に合格できなかったとしても、さまざまなプラスの効果を生むことになるのです。
3-2.法科大学院入学までにひと通りの学習を終える
司法試験に合格するには、法科大学院入学までにひと通りの学習を終えておくことが重要です。
司法試験の合格率が高い、いわゆる上位校には在学中の予備試験合格を目指して学習してきた人が多くいます。したがって、法科大学院入学までにひと通りの学習を終えていない場合、周りに付いていくのが難しくなるかもしれません。
学力が不十分な状態で法科大学院に進学すると、法科大学院の学習で手いっぱいとなり、司法試験の学習に十分な時間を割けなくなる可能性もあります。
法科大学院ルートを選択する場合でも、「本格的な学習は法科大学院に入学してから」と考えるのではなく、入学前の段階で十分な学習を済ませておかなければ司法試験合格は厳しくなるでしょう。
3-3.司法試験の合格率が高い法科大学院を目指す
どの法科大学院を修了しても司法試験の受験資格は得られます。ですが、司法試験に合格する可能性を少しでも高くするには、司法試験の合格率が高い法科大学院を目指しましょう。
上位校に進学するには、入学試験の段階で高い学力が求められます。法曹コースを選ぶのなら、学部成績も重視されます。法科大学院の入試までに十分な学力を身に付けるには、学部の授業だけでなく、大学入学直後から自主的に学習を進める必要があるでしょう。
法科大学院ルートを選択する場合でも、早い段階から上位校を目指して本格的な学習をスタートするようにしてください。特に、法曹コースを目指すのであれば、多くの大学で1年次に配置される憲法・民法・刑法の成績を上げるためにも、大学入学直後からのスタートダッシュが重要です。
※大学在学中から予備試験の学習を始め、2023年に法科大学院在学中受験にて司法試験に合格した伊藤塾受講生の体験談をご紹介します。
自分の血肉となった伊藤塾での知識が、司法試験本番でも役に立ちました船越 遼さん
立命館大学法学部卒業
早稲田大学法科大学院(既修)3年時 司法試験合格
◆受講講座/司法試験入門講座本科生+リーガルトレーニング、TKC全国統一模試など
私は、法学部に入学し一年間法律の授業を受け、法律の勉強がとても面白く感じ、自分の興味・関心がある法律を使った仕事をしたいと考えるに至りました。そして、その中でも幅広い仕事ができる法曹に魅力を感じ、司法試験を目指すことにしました。そして、受験指導校がたくさんある中で伊藤塾を選択した理由は、圧倒的な合格実績を誇る受験指導校であることと、同じ時期に伊藤塾に入塾することを決めていた大学の友人に誘われたことにあります。
法科大学院の授業は、進学先にもよるのかもしれませんが、場合によっては相当に難しい内容も求められます。しかし、入門講座で得た知識が基盤にあれば、大抵の内容はプラスαで何とかなります。
司法試験科目の試験については基本的には伊藤塾で行ってきた司法試験対策がそのまま活きると思いますので、過度に怖がらなくて大丈夫です。
また、司法試験は法科大学院在学中受験ができるようになり、法科大学院に入学するとすぐに司法試験の本番を迎えることになります。よって、とにかく学部時代にできるだけ早く基礎マスター、論文マスターを自分のものとしてください。これは、早ければ早いほどいいです。
※船越 遼さんの勉強法や司法試験対策など、さらに詳しい内容はコチラをご覧ください。
4.まとめ
「法科大学院に行くな・やめとけ」と言われる主な理由として、次の3つを挙げて解説しました。
● 法科大学院ルートでの司法試験の合格率が低い
● 法科大学院を修了するまでに時間と費用がかかる
● 司法試験に合格しても弁護士の将来に不安がある
しかし、法科大学院ルートを選択した場合でも、時間と費用をかけずに司法試験合格を実現することは十分可能です。
法科大学院ルートから司法試験に合格するために必要なことは以下の3つです。
● 大学入学後の早い段階で予備試験の学習を始める
● 法科大学院入学までにひと通りの学習を終える
● 司法試験の合格率が高い法科大学院を目指す
大学入学後の早い段階で、予備試験の学習を始める場合、どこから手をつけていいのか分からなかったり、不安や迷いで勉強に身が入らなかったりするかもしれません。
そんな時は、ぜひ伊藤塾にご相談ください。
たくさんの先輩が伊藤塾を活用し、司法試験合格をつかんできました。
次はあなたの番です。
伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。
無料の体験受講や説明会も実施していますので、司法試験の受験に興味をお持ちの方は、ぜひ一度伊藤塾までお問い合わせください。
2024年 司法試験合格者1,592人中 1,436名(90.2%)※12024年 予備試験合格者 449人中 405名(90.2%)※2
が伊藤塾有料講座の受講生でした。
※1(講座内訳:入門講座698名、講座・答練337名、模試401名)
※2(講座内訳:入門講座231名、講座・答練126名、模試48名)
なぜ、伊藤塾の受講生は、これほどまでに司法試験・予備試験に強いのか?
その秘密を知りたい方は、ぜひこちらの動画をご覧ください。

著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

伊藤塾 司法試験科
司法試験入門講座
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