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国際弁護士とは?国際弁護士になる方法や年収・求められるスキルを解説

2025年03月04日

 
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一般的に「国際弁護士」とは、国際的な案件を取り扱う弁護士のことをいいます。

みなさんも、テレビや新聞などのメディアで「国際弁護士」の肩書で活躍している人を思い浮かべることができるでしょう。

しかし、実際には「国際弁護士」という資格はありません。

国際弁護士の肩書で活動している人には、3つのパターンがあります。

「国際弁護士」を目指すなら、どのパターンの「国際弁護士」を目指すのかをしっかりとイメージする必要があるでしょう。

今回は、「国際弁護士」の3つのパターンや活躍する舞台について触れたうえで、国際弁護士になる方法や年収、求められるスキルについて解説します。国際弁護士を目指す方、国際弁護士に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

【目次】
1.国際弁護士とは?
 1-1.日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う
 1-2.日本と海外両方の弁護士資格を保有
 1-3.海外の弁護士資格のみ保有
2.国際弁護士が活躍する場面
3.国際弁護士になるには?
 3-1.日本の弁護士資格の取得方法
 3-2.海外の弁護士資格の取得方法
4.国際弁護士の年収は?
5.国際弁護士に求められるスキルは?
 5-1.日本の法律知識
 5-2.海外の法律知識
 5-3.語学力
6.まとめ

 

1.国際弁護士とは?

国際弁護士とは、国際的な案件を取り扱う弁護士のことをいいます。国際的な案件の例としては、国内企業の海外進出に伴う法務や、国内企業と海外企業とのクロスボーダーの取引やM&A案件などが挙げられます。

基本的に、弁護士資格は国ごと(アメリカは州ごと)に独立しており、世界中で活動できる「国際弁護士」資格というものは存在しません。たとえば、日本の弁護士資格は、日本国内で弁護士として活動するための資格であり、海外で弁護士としての活動を行うことはできません。

現在、「国際弁護士」という肩書で活動している人には、次の3つのパターンがあります。

◉日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う人
◉日本と海外両方の弁護士資格を保有している人
◉海外の弁護士資格のみ保有している人

以下、それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。

 

1-1.日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う

日本の弁護士資格のみを保有している人で、国際的な案件を多く取り扱う人は「国際弁護士」を名乗ることがあります。弁護士の業界では、「渉外弁護士」とも呼ばれることも多いです。

日本の五大法律事務所や外資系の法律事務所では、日本企業から依頼を受けて海外企業との契約・交渉案件を多く取り扱っています。

渉外弁護士として活躍する人は、時差の関係で業務が深夜にまで及ぶ激務を続けている人がほとんどです。

日本での経験を積んだのちに、海外に留学して両方の弁護士資格を取得する人も多くいます。

 

1-2.日本と海外両方の弁護士資格を保有

日本と海外で複数の弁護士資格を保有している人です。このパターンでも、弁護士資格は国や州ごとで異なるため、全世界で弁護士活動ができるわけではありません。

外資系の法律事務所では、日本の弁護士が事務所に籍を置きつつ、アメリカに留学するなどして海外の弁護士資格を取得する例が多く見られます。

両方の弁護士資格を保有していると、日本で弁護士活動をしつつ、海外での弁護士活動も行えるため、活動の幅は大きく広がります。さらに、海外のクライアントからの信頼も得られやすいでしょう。

日本と海外両方の弁護士資格を保有しているメディアで活躍する有名人としては、八代英輝さんがいます。八代さんは、日本で裁判官を歴任したのちに弁護士登録し、さらにはニューヨーク州の弁護士資格も取得しています。

 

1-3.海外の弁護士資格のみ保有

海外の弁護士資格のみを保有している人も、日本で「国際弁護士」を名乗っていることがあります。

海外の弁護士資格を保有していても、日本の弁護士資格を保有していない人は、原則として日本での弁護士業務を行うことはできません。

ただし、日弁連で「外国法事務弁護士」として登録すれば、日本でも一定条件のもとで自分が資格を有する国の法律事務を取り扱うことができます。なお、この場合でも、日本の裁判所で代理人となることはできません。
参照:日本弁護士連合会「外国法事務弁護士とは」

海外の弁護士資格のみを保有する有名人には、湯浅卓さんがいます。湯浅さんはかつて、国際弁護士としてメディアで多く露出していましたが、ニューヨーク州とワシントン州の弁護士資格を保有するのみで日本の弁護士資格は保有していません。

 

2.国際弁護士が活躍する場面

国際弁護士が活躍する場面としては、次のような案件が挙げられます。

◉日本企業と海外企業との取引・契約案件
◉日本企業と海外企業とのM&A案件
◉複数の国の法律が問題となる案件
◉国際的な特許、商標、ライセンスが問題となる案件
◉語学力が求められる案件
◉国際裁判の代理人として活動する案件

日本の弁護士資格だけを取得している人の多くは、海外の法律や判例についての知識を持っていません。外国人とコミュニケーションするための語学力を持ち合わせていない方もいらっしゃるでしょう。

そのため、海外の法律知識や語学力を有する国際弁護士は、日本の弁護士が取り扱えない案件を取り扱えるという点で大きな需要があります。さまざまな分野でのグローバル化が進む現代においては、国際弁護士の需要は高まり続けることが予想されます。

 

3.国際弁護士になるには?

国際弁護士になるには、少なくとも日本か海外いずれかの弁護士資格を取得する必要があります。

日本を拠点として活動するのであれば、まずは日本での弁護士資格を取得してから必要に応じて海外の弁護士資格を取得するのがおすすめです。

ここでは、日本の弁護士資格の取得方法と、海外の弁護士資格の取得方法をそれぞれ解説します。

 

3-1.日本の弁護士資格の取得方法

日本の弁護士資格を取得するまでの流れは、次のとおりです。

司法試験の受験資格を取得する
(予備試験or法科大学院)

司法試験に合格する

司法修習を修了する


日本の弁護士資格を取得するには、予備試験からの最短ルートでも約3年かかります。

※日本の弁護士資格を取得するまでの詳しい流れについては、こちらのコラムをご覧ください。
 →弁護士になるには最短で何年かかる?弁護士になるまでの流れを解説

 

3-2.海外の弁護士資格の取得方法

海外の弁護士資格は、国や州ごとに分かれており、取得方法もさまざまです。ここでは、アメリカのニューヨーク州を例に、弁護士資格の取得方法を紹介します。

◉日本の大学か法科大学院を卒業して法学の学位を取得する
◉ABA(American Bar Association)認定ロースクールのLL.M.コースを修了して司法試験の受験資格を取得する
◉ニューヨーク州の司法試験に合格する

アメリカでは、司法修習の制度はありません。司法試験に合格し、全州統一法曹倫理試験(MPRE:Multistate Professional Responsibility Examination)で各州の基準点を満たすと、すぐに弁護士として活動できます。

全州統一法曹倫理試験は、ロースクールの在学中に受験する人が多いようです。

※詳しくは、こちらの記事も合わせてご確認ください。
 →米国弁護士資格について

 

4.国際弁護士の年収は?

国際弁護士として活動するには、海外の弁護士資格や語学力などが必要です。また、取り扱う業務の範囲も一般的な弁護士よりも広いため、国際弁護士を名乗る人の年収は必然的に高くなっています。

厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査の令和3年版では、弁護士の平均年収は、945万3,600円となっています。

一方、日本の五大法律事務所では、初年度の年収が1,000万円を軽く超える数字となっています。

特に、渉外弁護士の年収は初年度から弁護士全体の平均を超えており、一般的な弁護士より高い年収を得ていることは明らかです。

※五大法律事務所の詳細については、こちらの記事もご覧ください。
五大(四大)法律事務所とは?日本を代表する大手法律事務所で働く方法を解説

国際弁護士の年収が高い理由としては、
◉取り扱う案件の難易度が高い=報酬が高い
◉国際的な案件に対応できる弁護士が少ない=需要が高い

といった点が挙げられます。需要が高く、1件当たりの報酬が高い案件を取り扱うため、国際弁護士は高収入を得やすいといえるでしょう。

 

5.国際弁護士に求められるスキルは?

日本を拠点として「国際弁護士」として活躍するには、次のスキルが求められます。

◉日本の法律知識(弁護士資格)
◉海外の法律知識(弁護士資格)
◉語学力

日本で「国際弁護士」として活躍するには、日本の弁護士資格を取得したうえで、海外の弁護士資格も取得するのがおすすめです。海外の弁護士資格のみでは、日本での弁護士活動を行えないため、日本で「弁護士」を名乗って活躍することは難しいでしょう。

以下では、それぞれのスキルについて詳しく見ていきましょう。

 

5-1.日本の法律知識

日本を拠点として「国際弁護士」として活動するのであれば、日本の法律知識(弁護士資格)は欠かせない要素です。

日本企業と海外企業との契約交渉や、M&A案件などを取り扱う際も、日本の法律知識があることが前提となります。

日本と海外とでは法律の内容は違いますが、法律を解釈する思考方法や法律を具体的な事例に応じて使い分ける能力は、どの国の法律を取り扱う場合でも必要な能力です。

日本の法律を学ぶ過程で、法律の思考方法や使い方を身に付けておくことが、海外の法律を学ぶ際にも助けとなるでしょう。

 

5-2.海外の法律知識

法律は国や州によってさまざまです。国際弁護士として法律を取り扱う場合、対象となる国や州の法律についての専門的知識は欠かせません。

海外の弁護士資格を取得する場合には、試験に合格するために法律や判例などの知識が必要となるのは当然ですが、日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う場合にも海外の法律について正確に理解する必要があります。

五大事務所や外資系の法律事務所で勤務する弁護士は、海外の弁護士資格を取得していない人でも、取り扱う案件ごとに海外の法律を勉強しています。

 

5-3.語学力

国際弁護士として活躍するには、語学力は必須の要素です。

法律には専門用語が多くありますが、それは海外の法律でも変わりません。専門用語の多い法律を取り扱うには、その国における高い語学力が求められます。

もちろん、海外の弁護士資格を取得するにも高い語学力が求められますので、語学力がなければ国際弁護士としてのスタートラインにも立てないでしょう。

 

6.まとめ

国際弁護士は、国をまたいだ幅広い活躍ができ、高収入も得られる魅力的な仕事です。しかし、国際弁護士として活躍するには、日本の法律知識を前提とした高いスキルが求められます。

国際弁護士を目指す方は、まずは日本の弁護士資格の取得を目指すことをおすすめします。

司法試験に合格する過程で正しい法律の学び方を身に付けておけば、海外の法律を学ぶ際にも大きな力となるでしょう。

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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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