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【予備試験の選択科目】どの科目を選ぶべき?合格しやすい選択科目とは?

2025年03月04日

 
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「予備試験の選択科目ってどの科目を選択すればいいんだろう」
「選択科目の勉強の仕方って司法試験と同じなのかな」
「予備試験にいい成績で合格するのはどの科目がおすすめなんだろう」

予備試験の論文試験では、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法のほかに、選択科目を受験する必要があります。

しかし、予備試験の選択科目は令和4年度の試験から導入されたばかりで、まだ過去問の蓄積がないうえに、ネットで検索してもなかなか情報が出てきません。

そのため、どの科目を選べばいいのか分からないという方や、勉強の仕方がわからないという方もたくさんいらっしゃるでしょう。

この記事では、予備試験に合格するためにはどの科目が有利でどの科目が不利なのか、科目ごとの特性や、どんな勉強法でどのくらいの勉強時間が必要なのかなど、受験生のみなさんが気になる疑問について解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
1.そもそも予備試験とは
2.予備試験の選択科目って何?
 2-1.令和4年度(2022年)から予備論文に選択科目が追加された
 2-2.選択科目の重要性
 2-3.1番人気は労働法
3.司法試験の選択科目と何が違うの?
4.選択科目の今後の出題傾向について
5.選択科目ってどうやって勉強すればいいの?
6.科目ごとの特徴について
 6-1.労働法
 6-2.経済法
 6-3.倒産法
 6-4.知的財産法
 6-5.租税法  
 6-6.環境法
 6-7.国際関係法(私法)
 6-8.国際関係法(公法)
7.選択科目を選ぶ7つのポイント
 7-1.受験者数や合格者数
 7-2.コストパフォーマンスに優れた科目かどうか
 7-3.将来の仕事に役立つか
 7-4.充実した講義があるか
 7-5.興味・関心がある科目がどうか
 7-6.自分の得意な科目かどうか
 7-7.迷ったら人気の科目を選びましょう
8.まとめ

 

1.そもそも予備試験とは

裁判官、検察官、弁護士などの法曹三者と呼ばれる職業に就くためには司法試験に合格する必要がありますが、司法試験は誰でも無条件で受験できるわけではなく、①予備試験に合格するか、②法科大学院を修了することで、受験資格を得る必要があります。

予備試験は、司法試験の受験資格を得るための試験で、「法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する」(司法試験法5条)試験になります。

つまり、司法試験を受験するだけの基礎的な学力が、法科大学院を修了した者と同じくらいあるかどうかを見極める試験が予備試験なのです。

予備試験に合格することができれば、法科大学院に行く必要もないため、時間もお金もかからずに司法試験を受験することができるため、経済的に法科大学院への進学を迷っている方にはありがたい試験制度といえるでしょう。

予備試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験と3段階に分かれており、短答式は1日(7月)、論文式は2日間(9月)、口述は1日(1月)でそれぞれ行われます。

短答式試験に合格すると論文式試験を受験することができ、論文式試験に合格すると口述試験を受験することができます。

短答式試験の試験科目は、法律基本7科目(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法)、一般教養(人文科学、社会科学、自然科学、英語)の計8科目。

論文式試験では、法律基本7科目(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法)に加えて、選択科目、法律実務基礎科目(民事系および刑事系)の合計10科目が試験範囲になります。

※予備試験については、こちらもご覧ください。
 → 予備試験とは

 

2.予備試験の選択科目って何?

ここからは、司法試験でも同様に試験科目になっている選択科目について、詳しく解説していきます。

 

2-1.令和4年度(2022年)から予備試験の論文式試験に選択科目が追加

【選択科目一覧】
 ◎倒産法
 ◎租税法
 ◎経済法
 ◎知的財産法
 ◎労働法
 ◎環境法
 ◎国際関係法(公法系)
 ◎国際関係法(私法)

選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法)の8つの科目の中から1科目を選択して受験します。

これまでは、予備試験の論文式試験では一般教養科目の論文試験が実施されており、選択科目は司法試験にしかありませんでしたが、令和4年度の試験から、予備試験論文式試験の一般教養科目が廃止され、選択科目が導入されました。

そのため、予備試験独自の試験科目である法律実務基礎科目(民事系、刑事系)以外は、司法試験と同様の試験科目となっています。

 

2-2.選択科目の重要性

 

科目配点試験時間
憲法各50点満点2科目あわせて2時間20分
行政法
民法3科目あわせて3時間30分
商法
民事訴訟法
刑法2科目あわせて2時間20分
刑事訴訟法
選択科目1時間10分
法律実務基礎(民事系)2科目あわせて3時間
法律実務基礎(刑事系)


予備試験の論文式試験では、それぞれの科目が50点満点で採点されるため、合計で500点満点の試験となります。

予備試験において選択科目はまだ導入されたばかりの科目となりますが、他の法律科目と同様の点数が振られているため、選択科目だからといって対策を疎かにすることはできません。

試験は、公法系、民事系、刑事系、選択科目、法律実務基礎科目で分かれて行い、選択科目以外は、2〜3科目を同時に行うこととなります。

均等に分割するのであれば、試験時間はそれぞれ1時間10分となりますが、法律実務基礎科目のみ1時間30分となります。

各科目毎にA4サイズの答案用紙4枚を書き上げることになりますが、試験時間だけ見れば、1時間以上ある解答時間は十分なように感じるかもしれません。

しかし、実際に答案を作成してみると時間的にまったく余裕がない事がわかります。

このことから、選択科目に対する基礎的な知識の有無や理解はもちろんこと、今まで見たことがない問題に対して、いかに迅速に分析し、適切に処理することができるかという、法律実務家としての基本的な能力を問われている試験であるといえるでしょう。

さらに、下記表の通り、選択科目は2日間ある論文式試験の1日目最終時間に解く科目なので、それまでの科目で良い感触だったとしても、選択科目の出来によっては2日目に悪い影響が出てしまう可能性があります。

選択科目で良い感触を掴むことができれば、そのまま良い流れで2日目の試験に臨むことができるため、そういう意味でも、選択科目は非常に重要な試験科目であるといえるのです。

【令和5年(2023年)予備試験論文式試験の時間割及び試験科目

 集合時刻着席時刻試験時間試験科目
1日目8:309:009:30〜11:50(2時間20分)憲法・行政法
13:0013:15〜15:35(2時間20分)刑法・刑事訴訟法
16:1516:30〜17:40(1時間10分)選択科目
2日目8:309:009:30〜12:30(3時間)法律実務基礎科目(民事・刑事)
13:4514:00〜17:30(3時間30分)民法・商法・民事訴訟法

令和5年司法試験予備試験受験案内(司法試験委員会)

 

2-3.一番人気は労働法

予備試験の選択科目の中で、一番人気があるのはどの科目なのでしょうか。

まずは、令和4年度における予備試験の出願状況(法務省)から各科目の受験者数を確認してみましょう。

 受験者数割合人気順位
労働法5,546人34.35%
倒産法2,923人18.11%
経済法2,288人14.17%
知的財産法1,921人11.90%
国際関係法(私法系)1,639人10.15%
租税法912人5.65%
国際関係法(公法系)496人3.07%
環境法420人2.60%


この表を見ていただけるとわかるように、選択科目で最も受験者が多かったのは労働法となっています。

続いて人気の科目は、倒産法、経済法、知的財産法、国際関係法(私法)となっており、いずれも受験者数が1,000人を超える数字となっています。

1位の労働法から5位の国際関係法(私法)で全体の9割近くを占めており、令和4年度の予備試験の選択科目においては、租税法、国際関係法律(公法)、環境法は受験者が比較的少なかったという結果となりました。

ただし、予備試験における選択科目は導入されたばかりであるため、人気科目の順位は今後入れ替わる可能性があります。

選択科目の受験者の動向には今後も目が離せないといえるでしょう。

ここで、同じ選択科目が試験科目にある、令和4年度の司法試験における選択科目別の受験者数合格者数もみてみましょう。

 受験者数受験者数
の割合
受験者数
順位
合格者数合格者数
の割合
合格者数
順位
労働法990人29.65%435人31.00%
経済法636人19.05%276人19.67%
知的財産法505人15.12%219人15.61%
倒産法452人13.54%207人14.75%
国際関係法(私法系)336人10.06%129人9.19%
租税法225人6.74%78人5.56%
環境法148人4.43%41人2.92%
国際関係法(公法系)47人1.41%18人1.28%


予備試験と同様に、やはり労働法の人気は相変わらずで、受験者の約3人に1人近くが労働法を選択しています。次に人気なのが経済法で受験者の5人に1人が経済法を選択しています。

予備試験と同様に、租税法や環境法、国際関係法(公法)に関しては受験者数が少なく、合格者数の割合も低くなっていることから、選択科目のなかではマイナーな科目といえそうです。

各科目の受験者数の割合と合格者数の割合に大きな差はないため、どの科目を選ぶと試験が有利になるなどということはないことがわかります。

しかし、労働法や経済法などの選択者が多い科目は、受験者全体に対する割合よりも合格者全体に対する割合の方が若干高い一方で、租税法や環境法、国際関係法(公法)などの選択者が少ない科目は、受験者全体に対する割合よりも合格者全体に対する割合の方が若干低くなっていることが、上の表からわかるでしょう。

そのため、受験者数の多い科目を選択することで、少しだけ合格率が上がることにつながるかもしれません。

受験生の多い人気の科目は、再現答案や問題集が充実していて、過去問研究を行いやすいこと、周りの受験生と情報共有をしやすいことを考えると、もしどの科目を選択すればいいのか迷った場合には、受験生に人気の科目を選択するようにしましょう。

 

3.司法試験の選択科目と何が違うの?

予備試験の選択科目は、司法試験における選択科目と何が違うのでしょうか。

司法試験委員会決定の「司法試験予備試験の実施方針について」によると、予備試験論文選択科目の出題については、「各法分野における基本的な知識、理解及び基本的な法解釈・運用能力並びにそれらを適切に表現する能力を問うものとする。司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提に、予備試験の選択科目においては、基本的な知識、理解等を問うものとする。」と規定されています。

つまり、ここから予備試験における選択科目においては、以下のような能力が問われていることがわかります。

 ◉出題範囲は司法試験選択科目と同様
 ◉司法試験よりも、基本的な知識、理解等を問われる

司法試験の場合、各選択科目の問題が、第1問目と第2問目で出題される分野が明確に分かれていましたが、予備試験の場合、出題される設問が1問のみで、かつ複数の分野の知識を問うような問題ではなく、特定の分野からの出題のみとなっています。

しかし、今後も同じような出題傾向が続くとは限らず、設問が2問になったり、1問で複数の分野を問うような問題形式に変更される可能性もあります。

したがって、勉強する範囲は司法試験と同様の範囲を勉強し、どの分野の知識が問われても大丈夫なように、基礎を固めておく事が重要になるでしょう。

 

4.選択科目の今後の出題傾向について

令和4年度に行われた予備試験の問題を分析してみると、司法試験の出題傾向とほとんど変わりがないようにみられます。

また、司法試験では出題される分野が2つあった科目については、以下のように1つの分野からの出題にとどまっています。

【司法試験で出題される分野】
(太字の分野が実際に予備試験で出題された分野)

科目出題分野
倒産法破産分野と民事再生分野
知的財産法特許分野と著作権分野
労働法個別労働関係分野と集団的労働関係分野
国際私法家族関係分野と財産関係分野


このように、令和4年度の試験においては一つの分野からの出題しかされませんでしたが、来年以降も今年と同じ分野からの出題になるのかどうかはまだ分かりません。

司法試験予備試験の実施方針について」にあるように、試験範囲が基本的には司法試験と同様であることを考えると、今後は複数の分野を一つの大問で問うような特殊な出題形式になることや、一つの大問の中で、複数の分野について小問形式で問うような出題形式になることも考えられるでしょう。

そのため、受験生としては、司法試験と同様に各科目の全分野を勉強していくことが、今後の試験対策としては重要になってくるでしょう。

今後の出題傾向
◎出題範囲は司法試験と同様に全分野
◎出題形式は変わる可能性があるため、全分野の勉強をする

 

5.選択科目ってどうやって勉強すればいいの?

選択科目と聞くと、ほかの法律科目と違う何か特殊な勉強法をとる必要があるように感じてしまうかもしれませんが、実際はほかの法律科目と同様の勉強と同じで、論文中心の勉強をすることになります。

具体的な勉強方法は省きますが、選択科目の勉強方法についてポイントを3つあげてみました。

 ◉アウトプット中心の勉強をする

 ◉とにかく過去問をひたすら解き続ける

 ◉予備校の答練を行い第三者に添削してもらう

ほかにも、「趣旨・規範・条文を意識して勉強を進める」「法的三段論法を意識する」など細かい勉強方法はたくさんありますが、まず押さえておくべき重要なポイントとしては、アウトプット中心の勉強をすることになります。

予備試験受験生の場合、ロースクール生のように授業で選択科目に触れることがないため、その科目になじみが薄いことが多く、まだ試験に導入されたばかりということで対策が手薄になりがちな部分になることが多いでしょう。

インプットがなかなか追いつかず、教科書を理解するのに時間がかかってしまい、アウトプットの時間がなかなか取れないこともあるかと思いますが、予備試験の論文式試験に合格するためには、とにかく数多くの答案を書くことが必要不可欠であり、それは基本法律科目でも、選択科目でも変わりません。

とくに、選択科目の場合、ほかの受験生も対策が手薄になっていることが多いため、試験現場では細かい知識や難しい議論を答案に書ける必要はなく、むしろ試験を受けている全員が書ける基本的な部分を、当たり前のように書けるだけで、相対的に評価があがり、高得点をとることができるのです。

選択科目だからといって何か特別なことをするのではなく、司法試験と同じ範囲の分野の問題を、司法試験や予備試験と同じようにアウトプット中心の勉強をするように心がけましょう。

 

6.科目ごとの特徴について

選択科目の受験者数や合格者数の人気度だけでは、どの科目を選択すべきかの決め手に欠けてしまうのではないでしょうか。

自分に合う選択科目を見つけるために、それぞれの科目ごとの特徴を確認していきましょう。

なお、令和4年度の予備試験で実際に出題された試験問題はこちらになります。

 

6-1.労働法

労働法は、労働に関するさまざまな分野の法律の総称です。

長時間労働をして過労死してしまったニュースや、働き方改革により残業時間を規制したりするニュースをよく見かける昨今、私たちの生活とも密接に関わっている分野の法律であり、労働者が未払いの残業代を請求する場合だけでなく、使用者側の立場から、企業法務という形で労働法の知識を活かして仕事をする場面もあるなど、司法試験に合格して実務家になったあとに、最も役に立つ法律の一つであるといえるでしょう。

アルバイトなどの経験から、基本給や残業代、有給など、知らず知らずのうちに労働法に関わっていたり、大学の授業で履修する機会が多かったりと、法律自体に興味を持ちやすく、誰でも勉強に取り掛かりやすい科目であるといえるでしょう。

また、受験生が選択科目の中で一番多いため、教材や講義が非常に充実しており、かなり学習がしやすい環境にあるため、選択科目に迷ったら労働法を選択するようにするといいかもしれません。

その一方で、試験範囲の分量がほかの選択科目よりも多いため、例えば選択科目にあまり時間をかけられない受験生などにはあまりおすすめできない科目になってしまうかもしれませんが、民法や憲法などの知識との親和性が高いため、これらが得意科目であるというような方には最適な選択科目であるといえるでしょう。

 

6-2.経済法


出典:独占禁止法の概要(公正取引委員会)

経済法では、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」いわゆる独占禁止法について勉強することになりますが、独占禁止法の目的は、「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」です。

つまり、それぞれの事業者は、互いにいい商品を低価格で作ろうと競い合うことで、より優れた価値のある商品を生み出し、消費者はその競争が進めば進むほど、自分達のニーズに合った商品を選択することができますが、そのような消費者の利益にもつながるような企業同士の競争に悪影響を与える行為を規制する法律なのです。

経済法は労働法に次いで人気が高く、年々受験者数が増加しています。実務家になった後に企業法務をやりたいと考えている人にとっては、興味を持ちやすい内容の法律になっています。

経済法は、選択科目のなかでもインプットに必要な分量が少なく、扱う法律の条文の数もかなり少ないため、選択科目を効率良く学びたいと考える人にとって人気の高い科目となります。

刑法の考え方に近いところがあり、刑法が得意な方は、経済法も得意である可能性が高いです。

ただし、会社同士の合併やM&Aなど、企業に関する法律としての側面が強く、とくに学生は日常で関わることが少ない分野の法律であるため、社会人経験のある受験生であれば取り組みやすい科目ですが、学生にとってはイメージが掴みづらい科目かもしれません。

 

6-3.倒産法

倒産法では、破産法と民事再生法について勉強します。

予備試験では、労働法につぐ人気を誇る選択科目となり、司法試験でも例年1割強の方が倒産法を選択するなど、安定の人気をキープしている科目の一つになります。

自己破産や会社の倒産など、借金の整理に関する案件は、個人、法人ともに実務家として関わる機会の多い案件になります。そのため、事前に破産法や民事再生法を学んでおくことで、自身の活躍の幅を広げることができるかもしれません。

倒産法は、民法や民事訴訟法、商法などの民事系の科目と親和性が高く、あてはめ能力が非常に重視されるため、それらの科目が得意であれば倒産法も得意である可能性が高いでしょう。

判例や覚えるべき論証はそれほど多くはなく、そこまで多くのインプット量が必要な科目ではありません。試験の現場で六法を引いて、条文をうまく使うことができればそれだけで得点を伸ばすことができるため、民法の基礎的な知識を使うことで効率良く勉強ができる点なども併せて考えると、民事系が得意な人にとってはタイムパフォーマンスの良い科目であると言えるでしょう。

 

6-4.知的財産法


出典:知的財産権について(特許庁)

特許法と著作権法について勉強するのが、知的財産法となります。

経済法と同様、実務家になったあとに企業法務などの分野で活躍したいと考えている人にとっては興味を持ちやすい科目であるといえるでしょう。

また、特許や商標、著作権などは日常でも関わることがある分野の話でもあり、もともと興味がある人にとってもなじみやすい科目であるといえるでしょう。

インターネットの普及により著作権など知的財産法がかかわる分野の案件も多いため、近年注目度が上がっている知的財産法ですが、教材や講義などは充実しており、勉強しやすい環境も整っていると言えるでしょう。

インプットの量は選択科目の中では多いほうですが、労働法ほどは多くありません。ただし、知財分野については近年法改正が頻繁になされているため、毎年知識のアップデートが必要になってくる点が、ほかの選択科目よりも注意が必要な点かもしれません。

過去問に当たる際には、その部分の法改正がなされていないか、あらかじめ確認する必要があります。

 

6-5.租税法

租税法では、おもに所得税法について学びます。

生活するうえで必ず関わることになる税金は、受験生の段階から試験科目としてしっかり勉強しておくことで、今後の日常生活が有意義になるかもしれません。

しかし、受験科目として考えてみると、司法試験では例年受験者数は1割にも満たないどころか、予備試験でも人気順位は6位となっており、受験生に人気な科目とはいえないでしょう。

租税法の人気があまり高くない理由として考えられるのは、そもそもほかの科目に比べて興味を持ちづらい分野の科目であること、租税についての専門家は税理士や公認会計士などの士業であり、租税について専門で扱っている法律事務所が少ないことを考えると、将来的に有用な科目を選ぶという観点からも選択しずらい法律であるといえるかもしれません。

税理士試験や公認会計士試験以外で、司法試験専用の教材や講義、講座が少ないということもあります。

勉強量という観点でみると、租税法は他の科目に比べて比較的インプットの量が少ないと言われています。そのため、定番の基本書を読み込み、税金関係の生活に身近な判例を理解すれば、試験でもある程度の点数をとることもできるでしょう。

税金に興味がある方や、公認会計士などの資格試験とのダブルライセンスを目指す方は選択されるといいかもしれません。

 

6-6.環境法


出典:循環型社会白書 平成16年度版(環境省)

環境法では、環境10法と呼ばれる環境に関するさまざまな法律を勉強します。具体的には、「環境基本法、環境影響評価法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、循環型社会形成推進基本法、廃棄物処理法、容器包装リサイクル法、自然公園法、地球温暖化対策推進法」の10個の法律です。

環境法は受験者数が少ない科目として知られています。民法や行政法と密接に関係するため、民法や行政法に興味がある方や得意な方が選択する傾向にあります。

勉強量は比較的少ないですが、法律としての歴史が浅く、司法試験用の教材が少なく、勉強する分野も受験生にとてはなじみが薄い分野のため、試験対策としての勉強がしづらい点が、受験者数が少ない理由の一つになります。近年法改正が頻繁に行われている点も、勉強がしづらい理由の一つであるといえるでしょう。

実際、予備試験の人気順位でも7位となっており、受験仲間も見つけづらいかもしれません。

また、たとえば環境対策を行っている企業の法務部で働く場合など、直接環境に関する問題に触れる場合以外では、労働法や倒産法と違い直接使う機会の少ない法律であるといえるでしょう。

しかし、選択者が少ないということはその分ライバルが少ないということでもあり、ある程度の点数をとることができれば、相対的に上位の評価を受けることができる可能性が高いです。

なかなか馴染みのない法律かもしれませんが、環境保護への関心が高まっている昨今、そうした取り組みを行う法曹の需要も高まっていくことが考えられるため、大学の講義配置など学習できる環境が周囲にあるならば、受験生のうちに勉強しておくことは意味のあることだといえるでしょう。

 

6-7.国際関係法(私法)

例 題
A国国籍の夫と、B国国籍の妻の夫婦が、日本で出会い結婚し、そのまま日本で生活しています。あるとき夫の浮気が原因で、妻は離婚を望むようになりましたが、夫は離婚をしたくないと言っています。 この場合、離婚できるのかどうかを判断するために適用される法律は、どこの国の法律になるでしょうか。また、そもそも日本の裁判所を利用できるのでしょうか。

国際関係法(私法)では、法の適用に関する通則法や訴訟法の国際裁判管轄に関する部分について勉強します。日本とは異なる法律が適用される外国人との間の紛争をどう解決すべきかなどが勉強の中心になります。

司法試験における出題分野は、国際私法家族関係分野と財産関係分野になりますが、予備試験では家族関係分野からの出題しかされませんでした。

今後の出題傾向がどうなるかはまだわかりませんが、出題範囲や勉強方法など、そのほかの点で司法試験と異なるところがほとんどないため、司法試験の選択科目対策が予備試験の選択科目の対策にもつながるといえるでしょう。

インプット量は他の科目と比べても少ないと言われており、出題範囲や出題パターンの傾向も掴めば高得点も狙えることから、タイパの良い科目とよばれており、近年人気が上がってきている科目の一つになります。

予備試験の人気順位では5位ですが、司法試験の選択科目のなかでも人気が上がってきていることから、今後も人気が上がっていく科目の一つといえるでしょう。

たしかに、日本で過ごしている方にはあまり馴染みのない法律で、実務的にも外国人との問題を扱う渉外系の事務所でなければあまり関わりのない分野かもしれません。

しかし、渉外案件を扱う事務所では必須の法律ですし、グローバル化が急速に進む現代では、国際的な問題も増えていくことが予想され、今後ますます需要が高まっていくと言えるでしょう。

タイパ重視で選択科目を選ぶのであれば、国際関係法(私法)はおすすめの科目になります。

 

6-8.国際関係法(公法)

国際関係法(公法)では、国際法、国際経済法、国際人権法の3つの法律について勉強します。予備試験では人気順位7位、司法試験では最下位と、選択科目の中では選択者が少ない科目になります。

選択科目の中では、唯一、日本の裁判所の判例ではなく国際司法裁判所の判例などを学ぶ必要があります。また、国際機関についての知識も必要になるため、単なる法律の理解だけではなく、国際社会について学ぶことができることから、条約や国際裁判などに興味がある方にとっては非常に学びやすい科目になるでしょう。

勉強量はほかの科目と比べて特別多いという訳ではありませんが、司法試験用の参考書の数が少ないため、他の科目よりも勉強のしにくさを感じてしまうかもしれません。

また、司法試験に合格し法曹となった後も、外務省の職員や国連職員等の国際機関を目指す人など、特定のキャリアパスを考えている人以外は、ほとんど触れる事のない分野の話になるため、実務的な重要度は低いといえます。

しかし、受験者数が少ないということはそれだけライバルが少ないということでもあり、得意とすることができれば相対的に上位の評価を受ける可能性も高い科目でもあることを考えると、大学の講義配置など学習できる環境が周囲にあり、国際政治や国際情勢に興味がある方は選択してみても良いでしょう。

 

7.選択科目を選ぶ7つのポイント

ここまで科目ごとの特徴について解説してきましたが、それでは具体的にどのような基準で選択科目を選べば良いのでしょうか。

自分の中で選ぶ基準を作るために、7つのポイントをご紹介していきます。

 

7-1.受験者数や合格者数

まず、受験生が一番気になるのは、受験者がどれくらいいるのかと、その中でどれくらい合格者がいるのかというところになってくるでしょう。

合格者数に関しては、予備試験では公表されておらず、仮に司法試験のデータを参考にするにしても、合格者数はあくまでもその選択科目を選んだ人の司法試験の合格者数であり、選択科目だけで合否が判断されている訳ではありません。選択科目の点数が高くてもほかの科目で得点を伸ばせなければ合格することはできないため、あくまでも目安の数字として捉えておくのが良いでしょう。

令和4年度の予備試験の受験者数でみてみると、たとえば受験者数1位の労働法と、受験者数最下位の環境法の受験者数を比べると、5,126人も離れています。

受験者数が多ければ多いほどいいと言う訳ではありませんが、受験者数については以下のようなメリット、デメリットを意識しておくと良いかもしれません。

 メリットデメリット
受験者数が多い・先輩や周りの受験生と情報共有が
 できる
・みんな選んでいるから大丈夫とい
 う安心感を得ることができる
・勉強教材が充実していることが多
 く、勉強しやすいことが多い
・ライバルが多いため、相対評価で
 上に行きづらい
受験者数が少ない・ライバルが少ないので、相対評価
 で上に行きやすい
・周りと情報共有がしづらい
・ほかに誰も選んでないんじゃない
 かという不安感
・司法試験用の教材が充実していな
 くて、勉強すづらいことが多い

 

7-2.タイムパフォーマンスに優れた科目かどうか

予備試験では、試験時間、配点ともにほかの法律基本科目と同じなので、選択科目だからといって手を抜くことなくしっかり対策する必要があります。

しかし、予備試験ではまだ選択科目は導入されたばかりで、対策が疎かになってしまいがちな分野でもあるでしょう。

また、予備試験の試験科目は司法試験よりも多く、選択科目にかけることできる時間が限られているという事情も考えると、できる限りタイパ良く得点できる科目を選択しようとする視点が重要になってきます。

この点、合格までに必要な勉強量は、自分の興味関心の程度、ほかの科目との相関関係などによっても、点数の取りやすさは変わってきます。

相対的にインプットの量が少ないと言われているのは、経済法や国際私法と言われますが、実際に合格点をとるためにどれくらいの勉強時間が必要になるかはその人によるところがあります。たとえば社会人受験生で、普段は労働関係の仕事をしているのであれば、勉強量が多いと言われる労働法であってもタイパの良い科目であると言えるでしょう。

自分にとって一番タイパのいい科目を選ぶようにしましょう。

 

7-3.将来の仕事に役立つか

実務に出たときに一番役に立つ科目を今のうちに勉強しておきたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

実際、労働法や倒産法の受験者数が多いのは、この考えに立って選択している人が多いのも要因のひとつであると言えるでしょう。

しかし、実際に実務に出ると、さまざまな案件に触れる中で選択科目以外の法律も勉強しなくてはならないのが普通です。

法律基本科目である民法でさえ新たに学び直さなければいけないことを考えると、選択科目の分野に特化した事務所に勤務しない限り、選択科目で何を選んだかで仕事の幅が狭まることはないでしょう。

つまり、選択科目は「将来役に立つかどうか」という視点ではなく、「試験対策上点数の取りやすい科目はどれか」と割り切って考えるのが得策であるといえます。

実務で必要な能力や知識は合格後に勉強すれば全く問題ありません。

 

7-4.充実した講義があるか

受験生が多い科目であれば、その分需要が多いということでそれに関する教材や講義、講座も充実していることが多く、勉強もしやすいことがあるでしょう。

もっとも、たとえば国際私法や経済法などのようにここ最近で人気を伸ばしてきた科目については教材や講座も充実してきている傾向にありますし、それ以外の科目についても、その科目定番の基本書や判例集も存在するため、昔に比べて特段勉強のしにくさを感じることはなくなってきているかもしれません。

勉強教材の量ではなく、自分にとってわかりやすい参考書があるかどうか、それを補う予備校の講座があるかどうかなど、量より質や学習環境の部分を判断するようにすると良いかもしれません。

 

7-5.興味・関心がある科目がどうか

試験科目が多い予備試験に合格するためには、効率的に勉強する必要があり、効率的な勉強のためには、自分の興味・関心がある科目を選ぶことも重要になります。

選択科目はほかの法律基本科目と違い、自分で好きな科目を選択することができます。興味のある科目であれば、興味のない科目に比べて理解するスピードも早くなるでしょう。

また、長期にわたる試験勉強を乗り切るためには、自分の好きな勉強をすることも重要です。

もし、選択科目選びに迷ってしまったら、楽しんで勉強することができるかを基準にすると、スムーズに選択科目を選ぶことができるでしょう。

 

7-6.自分の得意な科目かどうか

各科目にはそれぞれ特徴があり、関連する基本法律科目がそれぞれあります。

たとえば、労働法であれば民法、経済法であれば刑法など、基本法律科目の得意、不得意で選択科目の得意、不得意も変わってくるでしょう。

自分の得意な科目に関係する科目を選ぶようにすると、選択科目の勉強もスムーズに進むことが多いため、自分の得意な分野の科目かどうかも選択科目選びの考慮に入れるようにすると良いでしょう。

 

7-7.迷ったら人気の科目を選びましょう

ここまで選択科目の選び方をさまざま解説してきましたが、それでも迷ってしまう方もたくさんいるでしょう。

最終的に決まらなかった場合には、受験生に人気のある科目を選んでおけば間違いありません。

受験生が多ければ多いほど参考答案が増えることで、どの程度書くことができれば合格できるのか、逆に不合格となる答案はどのくらい書けているのかなど、周りの受験生との比較をすることができ、相対的に自分の位置を知ることができます。

また、受験生が少なく、データの蓄積がそこまでされていない科目を選ぶと、過去問研究が進んでおらず、当日の試験でまったく知らない問題に対応することができないかもしれない、という漠然とした不安感を抱いてしまうこともあります。

そのため、人気のある科目を選ぶことは精神的にも安心できる結果につながるのです。

もしも選択科目選びに迷ってしまったら、人気のある科目を選んでみるとよいでしょう。

 

8.まとめ

◉予備試験の選択科目は司法試験の選択科目と同様の選び方でOK
◉今後試験範囲は変わる可能性があるため、司法試験と同じ分野の勉強をする
◉選択科目の合う合わないは人それぞれ違うため、自分に合う科目を見つける

ここまで予備試験における選択科目について細かく解説してきましたが、自分に合う選択科目はなんとなく決まりましたでしょうか。

社会人受験生で勉強時間が学生ほど取れない場合には、タイパ重視で試験科目を選ぶことが多いため、自ずと試験科目も絞られてくるでしょう。

労働環境に実際に身を置いていることからこそ、かえって労働法の方が身につきやすく、タイパが良くなるという場合もあります。

しかし、それでも試験科目を一つに絞ることは、なかなか勇気のいることであり、簡単に決めることはできないでしょう。

いろいろな考慮要素があり迷ってしまうかと思いますが、まずはそれぞれの科目の過去問に目を通してみましょう。その中から自分に合いそうな科目を少しでも絞ることができれば、選択する科目を選びやすくなるかと思います。

伊藤塾では、選択科目を担当する人気講師が、科目の特徴や講義の内容について解説しています。

科目選びの参考にしていただければと思います。

伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。

無料の体験受講や説明会も実施していますので、司法試験の受験に興味をお持ちの方は、ぜひ一度伊藤塾までお問い合わせください。

2024年 司法試験合格者1,592人中 1,436名(90.2%)※1
2024年 予備試験合格者 449人中 405名(90.2%)※2
伊藤塾有料講座の受講生でした。
※1(講座内訳:入門講座698名、講座・答練337名、模試401名)
※2(講座内訳:入門講座231名、講座・答練126名、模試48名)

なぜ、伊藤塾の受講生は、これほどまでに司法試験・予備試験に強いのか?
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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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