予備試験ってどんな問題が出題されるの?予備試験の試験科目と各科目の特性について徹底解説

「予備試験ルートで法曹を目指したいんだけど、具体的にはどんな問題が出るんだろう」
「短答と論文って聞いたことあるけど、試験科目は同じなんだろうか」
「司法試験とは同じ試験科目なの?」
など、予備試験の試験科目についてさまざまな疑問があるかと思います。
法曹になるためには司法試験に合格する必要があり、司法試験の受験資格を得るためには法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要があります。
予備試験は例年合格率が4%程度とかなり難関な試験となり、合格するためにはそれ相応の対策が必要になるでしょう。
それでは、予備試験では実際にどのような問題が出題されるのでしょうか。
本記事では、これから予備試験合格を目指す方に向けて、予備試験の試験科目やその傾向と対策についてご紹介していきます。
併せて司法試験の試験科目についてもご紹介しますのでぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1.予備試験とは
2.短答式試験の試験科目とは
2-1.憲法
2-2.民法
2-3.刑法
2-4.商法
2-5.民事訴訟法
2-6.刑事訴訟法
2-7.行政法
2-8.一般教養
3.論文式試験の試験科目とは
3-1.憲法
3-2.民法
3-3.刑法
3-4.商法
3-5.民事訴訟法
3-6.刑事訴訟法
3-7.行政法
3-8.民事実務
3-9.刑事実務
3-10.選択科目
4.口述試験の試験科目とは
5.まとめ
1.予備試験の試験科目について
予備試験は短答式試験、論文式試験、口述式試験の3つに分かれており、令和5年度の試験については、それぞれ7月、9月、1月に行われる予定となっています。
それぞれの試験についてその特徴をご紹介していきます。
2.短答式試験
予備試験の短答式試験の試験科目は、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法の法律基本科目7科目に一般教養を加えた計8科目となります。
それぞれ、憲法・行政法が各12問、民法・商法・民事訴訟法が各15問、刑法・刑事訴訟法が各13問出題され、配点は各30点の合計210点満点となっています。
短答式試験はマークシート式で、論文式試験のように試験中に六法を参照することはできません。
判例知識や条文知識を論文式試験よりも詳細に問われる試験となっています。
一般教養からは、英語・日本史・世界史・地理・古典・文学・論理学などの文系科目から、物理・科学・生物・地学・数学などの理系科目などかなり幅広い分野に関する教養問題が出題されるため、範囲は無きに等しいものとなります。
出題形式は選択式で、約50問の中から自分の解けそうな問題を20問選択して解答することになります。
それでは、具体的にどんな問題が出題されるのでしょうか。
令和3年度の短答式試験において実際に出題された試験問題を法務省HPから抜粋しましたので、それぞれ確認していきましょう。
なお、司法試験の短答式試験では憲法、民法、刑法の3科目が試験科目になります。
2-1.憲法
憲法では細かい判例知識を問われる傾向にあるため、判例学習は必須と言える科目です。
問1は正誤問題となりますが、ア〜ウまでの全ての選択肢の正誤が合ってないと点が貰えない形式のため、正確かつ幅広い範囲の知識が必要となる問題形式となります。
なお、問題によっては部分点を貰えるものもあります。
問2は○×問題ですが、これも最終的に全ての肢の正誤が判断できないと解答できない問題となっています。
例えば、3つの肢のうち2つの肢の正誤がわかれば消去法で解答できるような、いわゆる試験テクニックが使えない問題が多いのも憲法の特徴のひとつとなるでしょう。
2-2.民法
民法は登場人物が多く、事案が複雑な事例が多いため、いかに素早く問題を整理することが出来るかがポイントとなります。
問題の整理に時間がかかってしまうとその後に控える科目に時間を割くことができなくなってしまうため、ペース配分には注意が必要となります。
また、民法は条文だけでも1050条もあり、触れる必要がある条文の量は膨大ですが、短答式試験で問われる条文は限られているので、問題を解く際に常に条文を引く癖をつけておくとよいでしょう。
判例知識に関しては憲法ほど需要ではなく、判例についてもそこまで深い理解を要求されることはありません。そのため、問題演習をしながら重要判例の結論を覚えるようにしていくことをおすすめします。
2-3.刑法
具体的な事例から、詳細な判例知識や学説の知識を問われるのが刑法の特徴となります。
他の科目よりも有力説や反対説などの学説の知識を問われることが多いため、自説を用いて妥当な処理を導けばよい論文とはまた違う角度からの学習が必要になるでしょう。
2-4.商法
細かい条文知識が問われる商法、会社法の分野からの出題がほとんどで、商法総則・商行為法分野および手形・小切手法分野からは毎年2~3問程度出題されることが多いです。
会社法の分野がメインの出題となるため、勉強を進める際にはまず会社法の条文知識を正確に理解するところから始める必要があります。
なお、商法総則・商行為法分野および手形・小切手分野については、その出題数の少なさと、論文での出題確立の低さから、十分に対策出来ていない事が多いため、この部分で確実に点数をとれるようになれば、他の受験生と差をつけることができるでしょう。
2-5.民事訴訟法
民事訴訟法では、条文知識・判例知識・学説知識がまんべんなく問われるのがその特徴となります。
そのため、ある分野のみ特化して勉強するのではなく、全体的に幅広く勉強する事が必要になります。
2-6.刑事訴訟法
捜査・証拠・公判手続きなど、刑事事件の手続について幅広く出題されるのが刑事訴訟法の特徴となります。
出題形式は多種多様であり、上記のように引用された判例知識を問うものから、「正しいものの組み合わせを答えるもの」、「正しいものに1誤っているものに2を選ぶもの」、「正しいものの個数を答えるもの」などがあります。
民事訴訟と同じく条文知識・判例知識・学説知識をまんべんなく勉強する必要があると言えるでしょう。
2-7.行政法
実は「行政法」という法律は実在しません。
行政手続法、行政事件訴訟法、行政不服審査法、情報公開法、国家賠償法といった行政にかかわる幅広い分野から出題されるのが行政法の特徴となります。
行政法では条文に関する知識よりも、リーディングケースとなった判例の知識を問う問題がよく出題されるため、判例学習は必須と言えるでしょう。
また、公法系科目の特徴として、消去法が使えない問題が多く、他の科目に比べ正確な判例知識が必要になるケースが多いというのが、その特徴のひとつになるでしょう。
2-8.一般教養
一般教養科目は配点60点と、他の法律科目より高い配点がされています。
しかし、問題を見て頂ければ分かる通り、一般教養といいつつも問題は非常に難しいものが多く、出題は英語・日本史・世界史・地理・古典・文学・論理学などの文系科目から、物理・科学・生物・地学・数学などの理系科目と非常に広範囲に及びます。
司法試験では試験科目になっていないため、時間をかけて勉強するのも非効率です。
その難易度と範囲から、基本的な知識が問われる法律科目と比べて、遥かにコストパフォーマンスが低く、対策の仕様もありません。実際に合格者は、一般教養科目の対策は「一切」していない方が大多数を占めます。
一度全ての問題にざっと目を通し、解けそうな問題から手をつけていき、法律科目の足を引っ張らない程度に得点することを目標にしましょう。
一般教養科目はあくまでボーナスステージとしてとらえ、法律科目のみで全体の合格点を獲得できるように対策をすることが、短答式試験のポイントとなります。
3.論文式試験の試験科目とは
予備試験の論文式試験の試験科目は、法律基本科目7科目に民事実務・刑事実務・選択科目の3つを加えた10科目となります。
論文式試験では、配布される六法を手元に参照しながら、具体的な事例に対し答案用紙に論述形式で解答する試験となります。
基本的な問題が問われる短答式試験と異なり、答えがない試験となるため、正しい勉強法をしてきたかどうかで、合否の差がつきやすい試験となります。
そのため、予備試験や司法試験では論文式試験が一番重要であり、最終的には論文式試験を中心に勉強することとなります。
では、実際にどんな問題が出題されるのでしょうか。
各科目ごとに試験問題を抜粋してみましたので、確認してみましょう。
なお、令和4年度より選択科目が導入され、一般教養科目の論文式試験が廃止となりました。
また、司法試験の論文式試験の試験科目は、基本法律科目7科目に選択科目を追加した計8科目が試験範囲になります。
3-1.憲法
他の問題もそうですが、問題分のボリュームがかなりあるにもかかわらず、1科目おおよそ1時間〜1時間10分で解答する必要があるため、制限時間内に答案を書き上げるタイムマネジメント力も求められるのが論文式試験となります。
憲法では司法試験でも定番な答案の型が存在しており、それに沿って答案を作成していくのが一般的となっています。
地方鉄道維持特措法案における争議行為の禁止規定、争議行為のあおり、そそのかしの処罰規定のそれぞれが憲法第28条に適合するかどうかについて、必要に応じて判例に触れつつ、論じなさい。(司法試験予備試験令和4年憲法参照)このように、ある法律や行為が憲法に適合するかどうかを問うような問題形式となっており、自分の主張だけではなく、相手の主張や判例も加味した解答をする必要があります。
基本の答案の型は以下のようになります。
原告の主張→想定される被告の反論→あなた自身の見解
司法試験とは違い、厳密にこの三者間からの検討が求められてはいませんが、事例を分析するにあたってこの当事者の主張の流れを意識する事は非常に重要になるでしょう。
普段の学習から、さまざまな学説も含めて多角的に勉強を進めていく事が重要になるでしょう。
3-2.民法
この問題の形式も相手方の反論を意識した答案の作成が求められているのが分かるかと思います。
民法の問題で一番のポイントとなるのが事案の整理です。
誰が誰に対して不満を持っているのか、侵害されている権利はどんな権利でどのような請求をしようとしているのかを、迅速かつ的確に把握することが大切です。
短答式試験と同じように登場人物が多い傾向にあり、事案も複雑になることが多いため、自分で図を書いたり、マーキングをうまく活用するなど、いかに素早く事案を整理する事が出来るかが重要になってくるでしょう。
3-3.刑法
刑法の問題はかなり長い詳細な事例問題になっており、問題としては「甲及び乙の罪責について論じなさい」というような単純な出題形式であることが多いです。
そのため、刑法で重要になるのは長い事案を丁寧に分析し、具体的な事実から問題となる行為から法的な論点を抽出する能力が求められます。
そのため、普段の学習から出来る限り具体的な事案を意識することで、本番で適切な事実評価ができるようにしておく必要があります。
3-4.商法
商法の問題でメインで出題されるのは会社法となりますが、会社法はいかにして条文を使いこなすかが重要な科目になります。
会社法は条文の量が膨大で、ひとつひとつの文章は長く、それぞれの条文を引用する準用規定が数多くあります。
実際に条文を引いてみると、他の法律に比べて条文の引きにくさに苦労する人が少なくありません。
そのため、日頃の勉強から出来る限り条文を自分の手で引くことを心がけ、条文を探すことに慣れておく必要があります。
3-5.民事訴訟法
民事訴訟法は実務において最も重要な科目の一つとなりますが、科目そのものは技術的・理論的でかなりとっつきにくいのが特徴となります。
民法や刑法などと違い、訴訟手続に関する法律であることからイメージがしづらく、苦手意識を持っている受験生が多いのもこの科目の特徴でしょう。
制度趣旨を理解し、原理原則をしっかり答案の中で示していくことが必要になってきます。
3-6.刑事訴訟法
こちらも民事訴訟法と同じく訴訟手続に関する科目で、刑事手続の適法性について問われることが基本です。
各手続きの中で時間的制約があるものが多いため、常に手続きの流れや時間軸を意識して解答する必要があります。
刑事手続きは捜査に始まり、最終的には判決の言い渡しまでとなりますが、以下のような流れで進んでいきます。
【事件の発生】・・・事件発生
⇩
【警察による捜査】・・・警察が事件を捜査
⇩
【逮捕】・・・被疑者を逮捕しました
⇩
【検察へ送致】・・・身柄を検察官に送ります
⇩
【勾留請求・勾留決定】・・・怪しいので身柄を拘束したまま取り調べます
⇩
【勾留延長】・・・かなり怪しいので身柄拘束を延長します
⇩
【起訴】・・・検察官が訴訟を起こします
⇩
【公判】・・・裁判で被告人が有罪か無罪かを審理します
⇩
【判決】・・・有罪か無罪かを言い渡します
具体的問題の中で上記のどの段階の話なのかを意識した解答ができないと、ちぐはぐな解答になってしまいがちです。
具体的な事例に即した解答をする必要があるのは他の科目でも共通する重要なポイントとなりますが、刑事訴訟では常に手続きの流れを意識するようにしましょう。
3-7.行政法
長文の事例問題が多く、どちらかというと現場思考型の問題が多いのがその特徴になります。そのため、問題文中に解答の方向性を示す誘導が仕掛けられています。
頻出の訴訟要件を覚えるのはもちろんですが、どちらかというと問題文の誘導にうまく乗り、問題文中の事実をいかにうまく答案の中で表現できるかという事が重要になってきます。
できる限り数多く問題を解くことで、現場志向型の問題に慣れておく事が必要になるでしょう。
3-8.民事実務
実務では必須の知識となるのが、刑事訴訟実務を含めた法律実務基礎科目になりますが、民法・民事訴訟法や刑法・刑事訴訟法の学習が前提となるため、必然的に後回しになり、試験的には比較的対策が手薄になってしまいがちな科目でもあります。
民事訴訟実務で一番重要なポイントとなるのは要件事実になります。
要件事実とは、「一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実」の事を指します。
つまり、民事裁判においては、当事者は法律要件に該当する具体的な事実を主張・立証しなければなりません。
この具体的な事実を答案上で示していくことが、民事実務科目では非常に重要となってくるのです。
文書の申請や法曹倫理に関する問題も出題されていますが、メインの出題は要件事実になっています。
民事に関する知識であることから、民法とリンクさせて勉強を進めると理解が深まるといえるでしょう。
3-9.刑事実務
刑事実務基礎科目では、勾留、保釈、公判前整理手続等の刑事手続、事実認定に加え、証拠方法及び証拠調べ手続などが問われる科目で、とくに重要なのは事実認定の分野になります。
刑法と同じく長文の事例問題から、論点を抽出して解答していく、刑法との親和性が高い科目になります。
勾留、保釈、公判前整理手続等の刑事手続、事実認定に加え、証拠法及び証拠調べ手続の出題が頻出しているため、これらの手続を重点的に勉強する事が重要になります。
事実認定では、問題文中に記載のある具体的な事実を抽出していき、法的三段論法を駆使しながら答案を作成していきます。
刑事訴訟と同じく刑事手続の流れを意識して、各場面で法曹三者がどのような訴訟行為をしているのかといった観点も重要となってくるでしょう。
普段の勉強から実務を意識した勉強をすることが大切です。
3-10.選択科目
参照:令和4年予備試験問題
令和4年から予備試験に加わった選択科目ですが、受験生は8科目の中から、好きな1科目を選んで解答することができ、その選択した科目によって重要なポイントが変わってきます。
ここでは労働法の問題を載せていますが、他にも経済法・知的財産法・倒産法・国際法(私法)・国際法(公法)・環境法・租税法の中から選択することができます。
どの科目でも共通して言えるのが、論理の流れをしっかり答案上で示す事です。
選択科目も他の法律科目と同じように配点されているため、選択科目だからと言って疎かにすることなくしっかり対策を行う事が必要でしょう。
※予備試験の選択科目の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
→【予備試験の選択科目】どの科目を選ぶべき?合格しやすい選択科目とは?
4.口述試験の試験科目とは
論文式試験に合格すると、口述試験と呼ばれる面接形式の試験を受ける事になります。
試験科目は、民事訴訟実務、刑事訴訟実務、法曹倫理、となっており、論文式試験で出題される範囲と同様の範囲のものとなっています。
民事科目では机の上に置いてある事例が記載されたパネルを見ながら受け答えしていくことが多いようです。
聞かれる内容については、要件事実を主に聞かれることが多い傾向にあります。
民法と民事訴訟法についてしっかり理解することが必要です。
問われることは基礎的な事ですが、いざ口頭で解答するとなると緊張から頭が真っ白になる可能性もあるため、事前に予備校等で口述模試など受けておくと安心できるでしょう。
刑事実務科目では、ひとつの事例に関して、前半は刑法に関する実体法の知識、後半は刑事手続きに関する知識を問う問題が多い傾向にあります。
刑法や刑事訴訟法についてしっかり理解する事が重要です。
また、民事と異なり刑事では事案を書いたパネルを用意されていることは基本的にはないため、主査が読み上げる事例から事案を把握する必要があります。
※口述試験の再現例については、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
→ 予備試験の口述試験とは?傾向と対策を徹底解説!
5.まとめ
当記事の重要ポイントをまとめます。
◉法律基本科目とは、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法の7科目
◉論文式の選択科目とは、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)国際関係法(私法系)の8科目から1科目選択
◉短答式試験は法律基本科目7科目+一般教養=8科目
◉論文式試験は法律基本科目7科目+選択科目+民事訴訟実務+刑事訴訟実務=10科目
◉口述試験は民事訴訟実務+刑事訴訟実務=2科目
各科目の特徴についても解説しました。
当記事が、あなたの司法試験合格への一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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