社会福祉士・ケアマネから行政書士へ!福祉分野の経験を活かして活躍できる理由とは

福祉の現場で働きながら「もっと違う形で人の役に立てないだろうか」「専門性を活かしたキャリアアップの道はないだろうか」と考えたことはありませんか?
そこで、福祉業界の経験を活かしたキャリアチェンジ(キャリアアップ)としてご紹介したいのが「行政書士」です。行政書士は、企業や個人が行う許認可申請(例:建設業許可、飲食店営業許可など)や、契約書作成、法人設立の手続き、外国人の在留資格手続きなど、行政に関する手続きのサポートを行う専門家です。
実は、福祉業界での経験は行政書士としての新たなキャリアにおいても大きな強みになります。福祉と法律、2つの分野をかけ合わせることで、新たな可能性を見出すことができるのです。
本記事では、福祉分野での経験を持つ方が行政書士を目指すメリットや、活躍できる業務内容、ダブルライセンスについて詳しく解説します。
福祉業界からキャリアチェンジしたいと考えている方は是非ご一読ください。
※行政書士についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
→【完全版】行政書士とは?結局何をする人?徹底的にわかりやすく解説します!
【目次】
1.福祉業界から行政書士を目指す5つのメリット
1-1.福祉分野の知識や専門性を発揮できる
1-2.将来性が高い
1-3.福祉業界で築いた人脈を活かせる
1-4.相談援助のスキルが活かせる
1-5.自分次第で高収入を目指せる
2.福祉分野の経験を活かして行政書士ができること
2-1.身寄りのない方の支援(成年後見)
2-2.相続・遺言などのサポート
2-3.福祉系サービスの立ち上げ(許認可申請・補助金など)
3.【行政書士×福祉分野】ダブルライセンスに強い資格
3-1.社会福祉士
3-2.ケアマネージャー(介護支援相談員)
4.【動画】福祉分野の行政書士実務にクローズアップ ~成年後見業務の魅力~
5.まとめ
1.福祉業界から行政書士を目指す5つのメリット
福祉の現場で培ったスキルや知識は、行政書士の仕事でも大きな強みとなります。
福祉業界から行政書士を目指すメリットを5つ説明します。
・福祉分野の専門性を発揮できる ・将来性が高い ・福祉業界で築いた人脈を活かせる ・相談援助のスキルが活かせる ・自分次第で高収入を目指せる |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.福祉分野の知識や専門性を発揮できる
福祉分野での経験や知識は、行政書士として活動する際に大きな強みとなります。
例えば、社会福祉士やケアマネージャーとして活躍していたのであれば、福祉制度や介護保険に関する深い理解があるでしょう。この専門知識を活かして、介護施設の立ち上げや障害福祉サービスの指定申請、福祉関連の補助金申請など、福祉分野に特化した行政書士として活躍できます。
法律だけではなく、福祉業界にも詳しいからこそ、顧客のニーズを的確に把握して、具体的なアドバイスが可能になるのです。書類の作成を引き受けるだけではなく、現場経験を活かしたコンサルタント業務なども行えるでしょう
福祉の専門性を活かすことで、「福祉に強い行政書士」としてブランディングをすることができます。現場で培った知識や経験は、行政書士として新たなキャリアを築く上でも、大きな武器となるのです。
1-2.将来性が高い
福祉分野の経験を持つ行政書士は、将来性が非常に高いです。高齢化が進む日本では、「福祉×法律」の両方に精通した専門家のニーズが高まっているからです。
その典型例が「成年後見制度」です。利用者数は年々増えており、2013年に約18万件だった利用者数は、2023年には約25万件まで増加しました。行政書士が活躍するケースも、ますます増えていくでしょう。さらに、1人暮らしの高齢者や認知症患者が増加していることで、介護・福祉関連サービスを立ち上げる人も増えています。この影響で、福祉系の許認可に精通した人材が求められているのです。
「福祉のみ」あるいは「法律のみ」に詳しい人はたくさんいますが、「福祉×法律」の専門性を兼ね備えた専門家はあまり多くありません。福祉業界から行政書士にキャリアチェンジすることで、こうした成長市場の中で、独自の強みを活かして活躍していけるのです。
1-3.福祉業界で築いた人脈を活かせる
福祉の現場では、利用者やその家族、施設職員、ケアマネージャー、医療関係者など様々な人々と関わってきたのではないでしょうか?
こうした人脈も、行政書士として独立した際の大きな強みとなります。例えば、以前働いていた施設から、「成年後見人を立てたいが誰に相談すればいいか」という相談を受けたり、元同僚のケアマネージャーから「利用者の相続で困っている」と紹介されたりすることは少なくありません。
すでに信頼関係が深まっている相手からの紹介は、新規で顧客を獲得するよりもはるかに効率的です。「福祉に強い行政書士」として口コミが広がれば、紹介によって仕事は順調に増えていくでしょう。福祉の現場で築いた人間関係は、行政書士として独立・開業する際の大きな財産になるのです。
1-4.相談援助のスキルが活かせる
福祉現場で身につけたコミュニケーション能力は、行政書士業務でも大いに発揮されます。福祉業界の経験者は、障害のある方や高齢者などとのコミュニケーションに慣れているため、様々な顧客に寄り添った対応ができるからです。
例えば、「単に書類を作りたい」という依頼を受けたとしても、背景には依頼者ごとの様々な事情が存在しています。もしかすると、「認知症の不安を感じている」のかもしれませんし、「家族以外の誰かに財産を残したい」といった本音があるのかもしれません。
言われるがままにただ書類を作成するのではなく、依頼者の本当のニーズを引き出して、最善の提案ができることが、信頼される行政書士の条件です。福祉業界で培った相談援助のスキルは、行政書士としても大きな差別化ポイントになるでしょう。
1-5.自分次第で高収入を目指せる
自分次第で高収入を目指せることも、行政書士になる大きなメリットです。
一般的に福祉業界は給与水準が高くないと言われていますが、行政書士として独立すれば収入の上限はありません。「福祉分野の第一人者」としてのポジションを確立できれば、他の行政書士との差別化が図れるので、安定した顧客獲得にもつながるでしょう。
ちなみに、厚生労働省のデータによると、行政書士の平均年収は551万円で、一般的なサラリーマンの平均年収460万円よりも約100万円高くなっています(出典:令和5年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成)。
さらに、福祉分野の経験を活かして専門性を高めていけば、年収1000万円以上を目指すことも十分にできます。
福祉経験があるからこそ提供できるサービスは、ライバルには真似のできない強みです。自分にしかできない専門領域を確立するほど、顧客からの信頼も厚くなり、より高い報酬を得ることができるでしょう。福祉系行政書士としてのブランディングに成功すれば、1000万を超えるような年収を得ることも決して夢ではありません。
2.福祉分野の経験を活かして行政書士ができること
福祉現場で培った経験は、行政書士として活動する際も大きな強みになります。
特に「高齢者支援」「障害者支援」「福祉事業立ち上げ」などの分野では、福祉と法律の視点を併せ持つことで、できることの幅は大きく広がります。
福祉分野の経験を活かして行政書士ができることを3つ説明します。
2-1.身寄りのない方の支援(成年後見)
行政書士になれば、身寄りのない方が安心して暮らせるよう、様々な法律的サポートができます。
「今は元気だけど将来認知症になったら財産や生活をどうしよう…」
「身寄りがないから、なにかあったときのことが心配…」
こういった不安を持つ方に対して、不安を解消するための対処法を提案できるのです。例えば、よくあるのが「任意後見契約」と合わせて「見守り契約」「事務委任契約」などを結ぶケースです。
・任意後見契約:元気なうちに、信頼できる人に将来のことをお願いしておく契約・見守り契約:定期的に様子を見に来てもらう契約
・事務委任契約:お金の管理などを手伝ってもらう契約
これらは、行政書士にしかできない仕事ではありませんが、信頼のできる法律職にお願いしたいと考える人は多いです。特に、福祉の現場で働いていた経験があれば、口コミや紹介などで、こういった相談を受けるケースは珍しくありません。
「この方は何に困っているのか」「どんなサポートが必要か」などを敏感に察知する福祉職の視点と、行政書士の専門知識をかけ合わせることで、心と法律の両面から支えるサポートができるのです。
2-2.相続・遺言などのサポート
行政書士になれば、相続や遺言についても仕事として取り扱うことができます。
福祉現場で求められる「その人の立場になって考える力」は、相続や遺言業務でも大きな強みになるでしょう。
例えば、認知症ケアの経験があれば、判断能力の変化にも配慮しつつ、認知症特有の悩みや不安を理解した対応をすることができます。障害者支援の経験があれば、障害のあるお子さんの将来を見据えた遺産分割の方法も提案できるでしょう。複雑なケースになるほど、法律知識だけでスムーズに遺言・相続手続きを進めることは難しくなります。
・認知症の方の相続財産管理や遺言の作成・障害のある子どもがいる場合の相続対策
・介護の負担が大きかった家族への遺産分割 など
法律の知識だけでは気づけない細やかな配慮ができるからこそ、依頼者からの信頼も厚くなるのです。
※相続で行政書士ができることは、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 相続で行政書士ができること|相続業務の魅力や報酬も解説!
2-3.福祉系サービスの立ち上げ(許認可申請・補助金など)
デイサービスやグループホームなど、福祉系サービスを立ち上げる方をサポートすることもできます。福祉系サービスを立ち上げるには、自治体への指定申請や許認可手続きが必要ですが、これは非常に複雑で時間がかかります。
例えば、介護サービス事業であれば、「人員基準・設備基準・運営基準」といった基準をいくつも満たさないと指定してもらうことはできません。また、仮にスムーズに指定を受けられたとしても、「実際に使いやすい内容となっているか」は別問題です。法律上の要件を満たしていても、実務上の支障があるケースは十分に考えられるのです。
福祉業界の経験をもった行政書士なら、「この間取りだと利用者が動きにくい」「この人員配置では職員が疲弊する」といった実践的なアドバイスができます。単に書類を通すだけでなく、実際に運営しやすい内容かを踏まえたサポートができるでしょう。さらに補助金申請なども扱えるので、「この事業なら〇〇という補助金が使えますよ」といった資金面での提案も行えます。
「法律」と「福祉」、2つの専門スキルを持った行政書士だからこそ、「開設できるだけ」ではなく「長く続けられる」事業づくりを支援できるのです。
3.【行政書士×福祉分野】ダブルライセンスに強い資格
福祉の現場で活躍している方が行政書士資格を取得すると、「法律×福祉」の専門性をかけ合わせた独自のサービスが提供できるようになります。
特に「社会福祉士」や「ケアマネージャー」は、行政書士とのダブルライセンスによって大きな強みを発揮する資格です。
3-1.社会福祉士
社会福祉士が行政書士資格を取得すると、サービスの幅が大きく広がります。
すでに「相談援助のプロ」である社会福祉士は、相談者の抱える問題を解決するために様々な制度を紹介して、専門機関と連携するスキルを持っています。しかし、法律の問題などで、社会福祉士だけでは十分な支援ができないケースも少なくありません。
一方で、行政書士の資格を取得すれば、これまでの「つなぐ」支援に加えて、「書類作成」や「手続き代行」という具体的な解決策も提供できるようになります。例えば、障害福祉サービスの利用相談だけでなく、必要な書類作成までサポートできるのです。
特に強みを発揮できるのが高齢者支援の分野です。認知症の方や、ひとり暮らしの高齢者を支えるために、社会福祉士の視点から生活支援を考えつつ、行政書士として任意後見契約を提案するなど法律面からのサポートもできるようになります。
社会福祉士から行政書士を目指すことで、経験を無駄にすることなく、キャリアの幅を広げられるのです。「福祉に詳しい法律家」として、需要はますます高まっていくでしょう。
3-2.ケアマネージャー(介護支援相談員)
ケアマネージャーも行政書士と相性の良い資格です。
介護保険のプロであるケアマネージャーが行政書士資格を取得すれば、法律の視点も加わり、高齢者をより総合的に支援できるようになります。
例えば、行政書士として成年後見や遺言作成の相談を受けた際に、介護保険制度の知識を活かした実践的なアドバイスができます。また、認知症の方の任意後見契約でも、将来必要となる介護サービスを見据えた契約内容を提案できるでしょう。
他に、介護事業所の立ち上げなども、ケアマネージャーの経験が発揮される分野の一つです。現場を熟知しているケアマネージャーだからこそ、デイサービスや訪問介護の立ち上げ時に、指定申請や運営規程作成で実践的なアドバイスができるのです。
行政書士資格を取得することで、ケアマネージャーとしての経験や人脈を活かした新たなキャリアが広がります。
4.【動画】福祉分野の行政書士実務にクローズアップ ~成年後見業務の魅力~
ここまで「福祉業界」と「行政書士」の相性の良さについてお伝えしてきました。とはいえ、実際の業務がどのようなものか、具体的なイメージが湧かないと感じる人も多いかもしれません。
そこで現役実務家として、成年後見業務に情熱を持って取り組む梶原亜由子先生に、その魅力と日常、行政書士の真の役割についてお話しいただきました。
行政書士として福祉分野で活躍するリアルな姿をぜひご覧ください。
成年後見業務の魅力〜世田谷こころ行政書士事務所 行政書士 梶原亜由子氏
5.まとめ
記事のポイントをまとめます。
◉福祉分野での経験は行政書士として大きな強みになる
◉福祉業界から行政書士を目指す5つのメリット
・高齢社会によって、「福祉×法律」の需要が高まっている
・福祉業界で築いた人脈を、新たな仕事の獲得に活かせる
・相談援助のスキルは、行政書士の仕事でも大いに発揮される
・専門性を活かした独立開業で、収入アップの可能性がある
◉福祉経験を活かして行政書士ができること
・福祉の視点を活かした相続・遺言などのサポート
・福祉系サービスの立ち上げ支援
◉「社会福祉士」や「ケアマネージャー」とのダブルライセンスも相性が良い
以上です。
福祉分野と行政書士はとても相性の良い組み合わせです。
福祉業界で培った経験や専門性を活かすことで、あなたの可能性はますます広がっていきます。
行政書士試験に挑戦したい方は、ぜひ法律資格専門の指導校である伊藤塾へご相談ください。
伊藤塾では、法律を初歩からしっかり学習していくことができる「行政書士合格講座」を開講しています。
夢の実現に向けて、ぜひ一歩を踏み出してみてください。伊藤塾が、あなたの挑戦を全力でサポートいたします。
さらに演習を強化!「2025年合格目標 行政書士合格講座 スタンダードコース」のご紹介

著者:伊藤塾 行政書士試験科
伊藤塾行政書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの行政書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、行政書士試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。
