司法書士と行政書士はどっちがいい?5つのポイントから徹底比較!
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「司法書士と行政書士、どっちがいいんだろう?」と迷っている方は多いのではないでしょうか?
司法書士と行政書士は、どちらも法律の専門家として活躍できる素晴らしい資格です。仕事内容や難易度、働き方などが違うため、優劣をつけることはできません。
司法書士が向いている人もいれば、行政書士が適している人もいます。合格後の目標や興味のある仕事をふまえて、自分にあった資格を選びましょう。
【司法書士と行政書士の比較】
司法書士 | 行政書士 | |
業務範囲 | 法務局、裁判所の手続き | 官公署の手続き |
難易度 | 非常に高い | 高い |
働き方 | どちらも独立開業しやすい | |
平均年収 | どちらも年収1000万以上を目指せる | |
将来性 | どちらも高い(AIでは代替できない) |
本記事では、司法書士と行政書士を比較して、それぞれの特徴や魅力、向いている人を解説します。どちらの資格を目指すべきか迷っている方は是非ご一読ください。
【目次】
1.司法書士と行政書士はどっちがいい?
2.司法書士と行政書士を5つのポイントから徹底比較
2-1.業務範囲
2-2.試験の難易度
2-3.働き方
2-3-1.独立開業する
2-3-2.就職して事務所に所属する
2-3-3.企業の法務部門などで働く
2-4.平均年収
2-5.AI時代の将来性
3.司法書士が向いている人
3-1.独立開業だけではなく、就職も視野に入れている人
3-2.手続き面だけではなく、裁判にも携わりたい人
4.行政書士が向いている人
4-1.取り組みたい分野が決まっていない人
4-2.短期間で合格・独立したい人
5.司法書士と行政書士でどっちがいいか迷ったら、ダブルライセンスもあり
5-1.行政書士から司法書士を目指すメリット
5-2.司法書士から行政書士を目指すメリット
6.まとめ
1.司法書士と行政書士はどっちがいい?
司法書士と行政書士は、それぞれ異なる特徴を持った資格です。
どちらも専門性をもった難関資格であり、社会に必要な仕事を扱っています。2つの資格に優劣はなく、どちらが「良い」と一概にはいえません。
2つの資格で迷っている方は、ぜひ合格後の自身の姿をイメージしてみてください。
資格は単に取得することが目的ではありません。合格後、法律家として力を発揮してはじめて、目的が達成されたことになるのです。まずは「自分が合格後に何をしたいのか」「どのようなキャリアを歩みたいのか」を明確にすることが大切です。2つの資格の特徴を理解し、自分に適した資格を選びましょう。
それぞれの資格の特徴や違いは、次章で解説します。
※司法書士、行政書士の具体的なイメージを掴みたい方は、こちらのページもご一読ください。
・合格後を考えた取り組み 「明日の司法書士講座 」
・合格後を考えた取り組み 「明日の行政書士講座」
2.司法書士と行政書士を5つのポイントから徹底比較
司法書士と行政書士は、どちらも法律に関する専門家として活躍できる資格です。
ただし、業務内容や試験の難易度、働き方などに違いがあります。司法書士と行政書士の違いを、5つのポイントから比較してみましょう。
2-1.業務範囲
司法書士と行政書士の最大の違いは、扱っている仕事の範囲(職域)です。それぞれ独自の役割を持っており、カバーしている範囲が異なります。
司法書士 | 行政書士 | |
主な 業務 | ①不動産の登記 ②商業登記 (会社設立、役員変更など) ③裁判所、検察庁、法務局に 提出する書類の作成 ④企業法務 ⑤成年後見業務 ⑥遺言、相続業務など | ①官公署に提出する書類の作成 ・飲食業の営業許可申請 ・外国人の在留資格の申請など ②権利義務に関する書類の作成 ・遺産分割協議書の作成 ・離婚協議書の作成 など ③事実証明に関する書類の作成 ・実地調査に基づく各種図面類 の作成 ・各種議事録や会計帳簿の作成 など |
司法書士の仕事は、法務局や裁判所での手続きが中心です。不動産登記や、商業登記を独占的に扱っているほか、簡易裁判所における訴訟代理なども行っています。市民の生活を法律面からサポートしているのが司法書士です。
一方、行政書士は、官公署に提出する書類の作成や手続きの代理が主な業務です。飲食業の営業許可申請や外国人の在留資格申請など、様々な手続きを独占業務としており、扱っている書類の数は「9000種類」を超えています。さらに、他の資格で独占されていないものも仕事にできるため、士業の中でも特に広い業務範囲を持っています。
※仕事内容は、次の記事で詳しく解説しています。
「司法書士ができることとは?独占業務や他の士業との違いについて解説」
「行政書士の独占業務一覧!業務範囲やできない事について解説」
2-2.試験の難易度
【難易度の比較】
司法書士 | 行政書士 | |
合格率 | 4%〜5% | 10%〜14% |
勉強時間 | 3000時間が目安 | 600〜1000時間 |
試験の難易度は、司法書士の方が高いと感じる人が多いでしょう。
合格率を比べると、司法書士試験は約5%しかありませんが、行政書士試験は10~14%程度で推移しており、司法書士試験よりも高い合格率となっています。必要な勉強時間も、司法書士試験では約3,000時間が目安ですが、行政書士試験は600~1,000時間が目安です。
したがって、短期間でも合格しやすいのは行政書士試験だといえるでしょう。
ただし、行政書士から司法書士試験を目指す人もいれば、司法書士になって行政書士試験を受ける人もいます。どちらも難関試験であることに変わりはなく、十分な勉強が必要です。
※試験の難易度は、次の記事で詳しく解説しています。
「司法書士試験の難易度は?他資格との比較や合格するためのポイントを解説」
「行政書士試験の難易度ランキングや偏差値は?合格するとすごいと言われる理由も解説」
2-3.働き方
司法書士と行政書士の働き方には、大きく3つの選択肢があります。
司法書士 | 行政書士 | |
独立開業 | どちらも独立開業しやすい | |
事務所に 就職 | ・まずは、司法書士事 務所へ就職して、数年 後に独立する人が多い | ・就職もできるが、求 人数は少ない ・合格後、すぐに独立 開業する人が多い |
企業の 法務部門 | 法律の知識を活かして、 会社の法務部門で働く人もいる |
2-3-1.独立開業する
最も一般的なのは独立開業です。
司法書士も行政書士も、独立開業しやすい資格だといわれています。試験勉強を通じて実務に必要な知識を学べるため、即独(合格後すぐに独立すること)する人も珍しくはありません。高価な設備や、仕入れが必要ないため、開業費用も比較的安く抑えられます。また、「国家資格」という参入障壁があるので、他の業種ほど過度な競争にさらされていないのも大きなメリットです。
※独立開業については、次の記事で詳しく解説しています。
「司法書士の独立開業は厳しい?年収は?魅力や注意点を実体験を元に解説」
「行政書士が独立開業するには?年収・資金・成功のポイントを解説!」
2-3-2.就職して事務所に所属する
どちらの資格も、就職して事務所に所属することもできます。
司法書士の場合、合格後はまず勤務司法書士として働くケースが多く、就職に困ることは少ないです。行政書士も就職はできますが、求人数は多くありません。合格後すぐに独立開業するケースが一般的です。
※就職については、次の記事で詳しく解説しています。
→司法書士は就職できない?40代や未経験は?就職先を探す5つの方法
→行政書士は就職できないって本当?行政書士資格がおすすめな理由を徹底解説!
2-3-3.企業の法務部門などで働く
最後に、法律知識や専門性を活かして企業の法務部門で働く人もいます。
特に司法書士は、組織内司法書士として働いたり、会社の法務部門に転職する人が少なくありません。
2-4.平均年収
平均年収も比較してみましょう。厚生労働省のデータによれば、司法書士と行政書士の平均年収は次のとおりです。
司法書士 | 行政書士 | |
平均年収 | 1121.7万円 | 551万円 |
出典:令和5年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成(司法書士・行政書士)|厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag
一見すると、司法書士の方が明らかに高いように見えます。しかし、これは統計データの集計方法が原因なので、あくまでも参考値として考えてください。
※令和5年賃金構造基本統計調査では、「司法書士」の平均年収に弁護士などの職種が含まれています。一方、「行政書士」は「他に分類されない専門的職業従事者」として集計されており、司法書士とは異なる分類で扱われています。つまり、元となっているデータが違うのです。数字ほど大きな差はありません。
平均年収は、資格そのものの違いよりも、個人の働き方や経験年数、実績によって変わってきます。行政書士であっても、独立開業して軌道にのると年収1000万を超えるケースは珍しくないのです。
実際に、行政書士の現役実務家でもある伊藤塾の井内講師は、自身の「行政書士としての年収」が1000万を超えていることを下記動画の中で語っています。
司法書士、行政書士、どちらの資格もすぐに高収入を得られるわけではありませんが、経験を積むことで着実に収入を増やしていけるでしょう。
行政書士で年収1,000万円を超えるための5つの秘訣~真のリーダーシップとは何か?~
※司法書士、行政書士それぞれの年収については、以下の記事で詳しく解説しています。
→司法書士の年収の現実とは?平均年収から収入を上げる方法まで徹底解説
→行政書士の年収の現実は?女性・雇われ・開業・中央値など比較解説
2-5.AI時代の将来性
「AIの進化により仕事がなくなるのでは?」と考える人もいるかもしれません。確かに司法書士・行政書士ともに書類の作成が多い仕事です。どうしてもAIに仕事が奪われる未来をイメージしてしまうでしょう。
しかし、AIが仕事をサポートすることはあっても、仕事がなくなることはありません。司法書士、行政書士、どちらもAIでは代替できない部分があるからです。
例えば、行政書士に求められるのは、「許認可申請の知識」だけではありません。依頼者と信頼関係を築いたり、行政庁の担当者と綿密な調整を行ったり、関係機関と打ち合わせしたりするコミュニケーション力が必要です。
司法書士についても同様です。緻密なコミュニケーションをとって、依頼者の背景や感情を汲み取る力がなければ、役割を果たすことはできません。
こういった「きめ細やかな対応」は、AIには代替不可能です。むしろAIを活用することで、行政書士や司法書士は人間にしかできない仕事に注力できるでしょう。行政書士や司法書士の役割は、今後もさらに大きくなっていくはずです。
※2つの資格の将来性については、次の記事で詳しく解説しています。
→AI時代の司法書士の将来性と活躍の秘訣について解説
→【市場規模が倍増?】行政書士に将来性がある理由について徹底解説!
3.司法書士が向いている人
司法書士と行政書士は、どちらも法律の専門家として活躍できる魅力的な資格です。
しかしその特性の違いから、向いている人のタイプは異なります。2つの資格の違いを踏まえつつ、司法書士がオススメできる人を見ていきましょう。
3-1.独立開業だけではなく、就職も視野に入れている人
「独立開業にも興味があるが少し不安」「安定した就職も視野に入れたい」という方は、司法書士が良いでしょう。司法書士は独立開業だけでなく、就職もしやすい資格だからです。
求人数が多いため、年齢や性別に関わらず「就職活動で困った」という声を聞くことは少ないです。就職すると、独立開業ほどの年収や自由は得られませんが、代わりに安定した収入を得られます。
すぐに独立することが不安な場合も、まずは司法書士事務所で働いて経験を積めるでしょう。就職して安定した収入を得つつ、しっかりと準備を行って独立開業もできるのは、司法書士の大きなメリットです。
3-2.手続き面だけではなく、裁判にも携わりたい人
登記などの手続き面だけでなく、裁判などで直接依頼者を守りたい方も司法書士が向いています。
認定司法書士になれば、訴額(争いとなっている額)が140万円を超えない簡裁事件について、本人の代理人として法廷に立つことができます。和解交渉もできるので、当事者間のトラブルを直接サポートして解決に導けるでしょう。
ただし、司法書士は弁護士とは異なる資格なので、できることには制限があります。
例えば、訴額が140万円を超える事件や、刑事事件などは扱えません。司法書士の業務範囲を超えると「非弁行為」となってしまうため、十分な注意が必要です。
とはいえ、単なる書類作成にとどまらず、裁判などを通じて依頼者の権利を直接守ることができるのは、行政書士にはない魅力です。
※認定司法書士については、次の記事で詳しく解説しています。
→認定司法書士とは?司法書士との違いや特別研修・認定考査についても解説
4.行政書士が向いている人
次に、行政書士の資格が向いている人を見ていきましょう。
4-1.取り組みたい分野が決まっていない人
「取り組みたい分野が分からない」「ジャンルを絞らず様々な仕事に挑戦したい」という人には、行政書士が良いでしょう。
行政書士は、士業の中でも特に業務範囲の広い資格だからです。扱える書類の数は9000種類を超えており、様々なジャンルから自分の得意分野を見つけることができます。
・国際行政書士として、外国人の入管業務を専門に扱う・高齢社会をふまえて、相続業務に力を入れる
・ニーズの高い建設業許可申請、自動車登録、飲食業の営業許可申請などを行う など
開業後も新しい分野にチャレンジしやすく、社会のニーズに合わせて柔軟に業務範囲を広げることができます。はっきりと専門分野を決めていなくても、実際に業務を行いながら自分に合った分野を見つけられるのです。
合格後に様々な可能性に挑戦できるのは、行政書士ならではの強みでしょう。
4-2.短期間で合格・独立したい人
「短期間で合格したい」「早く独立開業したい」という人にも、行政書士がオススメです。
行政書士は、司法書士と比べて合格までの道のりが短いです。学習期間は半年〜が目安とされていますが、超合理的に勉強すれば3ヶ月ほどで合格する人もいます。
司法書士の場合、2〜3年の学習が必要とされているので、かなり短い期間で目標を達成できるでしょう。
合格後も、すぐに開業するケースが多いです。司法書士の場合、事務所勤務を経験してから独立するケースが一般的ですが、行政書士はそのステップを踏む必要がありません。つまり、独立までの道のりが非常にスムーズです。
すぐに資格を活かして働きたい方や、自分のペースで仕事を始めたい方にとっては、理想的な資格といえるでしょう。
※短期合格のための勉強法などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→行政書士試験3ヶ月で合格できる?独学でも可能?合格事例・勉強法など解説
5.司法書士と行政書士でどっちがいいか迷ったら、ダブルライセンスもあり
実は、司法書士と行政書士、両方の資格を取得するという選択肢もあります。
ダブルライセンスを目指すなら、まずは興味のある資格を取って実務をこなしつつ、もう一方の資格を目指すアプローチが良いでしょう。
「行政書士から司法書士を目指すケース」、逆に「司法書士から行政書士を目指すケース」、いずれのケースでもダブルライセンスのメリットは非常に大きいです。
【司法書士】 行政書士受験経験者のための司法書士最短最速合格法~ネクストライセンス「司法書士」のススメ~
※ダブルライセンスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→司法書士と行政書士の違いとは?難易度や仕事・ダブルライセンスのメリットとは?
5-1.行政書士から司法書士を目指すメリット
行政書士は、各種許認可申請のプロフェッショナルですが、登記申請は行えません。そのため、自分が引き受けた依頼でも、登記申請だけは司法書士に依頼する必要があります。
例えば、相続関係の仕事では、相続登記の部分だけ司法書士にお願いすることになるでしょう。会社設立の仕事でも、法人の設立登記を司法書士に依頼するケースが通常です。
もちろん、近場の司法書士と親しくなって「互いに専門分野を紹介し合う」スタイルでも問題はありません。しかし、依頼者の満足度や事務所の利益を上げたいのであれば、やはりダブルライセンスを取得するのが効果的です。
司法書士の資格を取得すれば、登記業務まで一人で完結できるようになります。行政書士では対応できない部分もカバーできるので、クライアントにとってより頼れる存在となるでしょう。
5-2.司法書士から行政書士を目指すメリット
一方、司法書士から見ても、行政書士になるメリットは大きいです。
司法書士は、基本的に登記業務がメインです。その他の許認可申請は行政書士の独占業務なので扱うことはできません。
行政書士の資格を取得すれば、業務の幅は大きく広がります。例えば、会社設立の登記を行った後、各種届出や許認可申請、更新手続きなどにも対応できるようになります。司法書士の知識を活かしつつ、行政書士としてビジネスコンサルティングに取り組むこともできるでしょう。
司法書士と行政書士のダブルライセンスは、それぞれの強みを活かすことで高い相乗効果を得られる方法です。法律家として活躍したい方にとって、大きなアドバンテージになるはずです。
6.まとめ
最後に、記事のポイントをまとめます。
◉司法書士と行政書士は、それぞれ違う業務範囲や特徴を持っている
・どちらも専門性のある難関資格、優劣はつけがたい
・合格後のキャリアを考えて、自分にあった資格を選ぶことが重要
◉司法書士と行政書士の比較
試験の難易度:司法書士試験の方が合格率が低く、学習期間も長め
働き方:どちらも独立開業に適しているが、就職する選択肢もある
平均年収:個人差が大きいが、どちらも年収1000万以上を目指せる
将来性:AIでは代替できない専門性を持っており、仕事がなくなる可能性は低い
◉司法書士がオススメな人
・独立開業だけでなく、就職も視野に入れている人
・手続きだけでなく、裁判にも携わりたい人
◉行政書士がオススメな人
・取り組みたいジャンルが決まっていない人
・短期間で合格し、早期に独立開業したい人
◉迷ったらダブルライセンスという選択肢もある
以上です。
司法書士と行政書士はどちらも素晴らしい資格です。しかし目的は「資格を取ること」ではありません。大切なのは、資格取得を一つのステップにして人生を切り拓くことです。
合格後のキャリアを考えたうえで、自分に適した資格に挑戦しましょう。
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著者:伊藤塾 司法書士試験科
伊藤塾司法書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法書士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。
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