営業保証金と弁済業務保証金分担金の違いとは?宅建の出題ポイントを解説

宅建の試験科目である宅建業法では、営業保証金や弁済業務保証金などの保証金制度について出題されます。保証金制度についてしっかり理解しておかないと、本番で出題された際にどちらの保証金の話なのかを混同してしまう恐れがあります。
満点を狙える宅建業法において、頻出分野である保証金制度に関する問題を落とすのは致命的です。試験合格を目指すためにも、2つの保証金の違いを正確に理解しましょう。
この記事では、営業保証金と弁済業務保証金の違いをわかりやすく解説します。
【目次】
1.宅建業法における保証金制度とは?
1-1.保証金制度の仕組み
1-2.営業保証金と弁済業務保証金の違い
1-3.保証金制度の対象外となるケースも
2.営業保証金のポイント
2-1.営業保証金とは
2-2.営業保証金の供託手続き
2-3.営業保証金の保管替え
2-4.営業保証金の還付
2-5.営業保証金の取戻し
3.弁済業務保証金のポイント
3-1.弁済業務保証金とは
3-2.弁済業務保証金分担金とは
3-3.弁済業務保証金の還付
3-4.還付充当金の納付
3-5.弁済業務保証金の取戻し
4.受験指導校を利用して保証金制度を正確に理解しよう
5.まとめ
1.宅建業法における保証金制度とは?
宅建業法上の保証金制度とは、不動産取引における宅建業者以外の一般顧客を守るための制度です。
不動産取引は一般に高額になることが多いです。不動産を顧客から購入した宅建業者が、経営の悪化等で購入代金を支払えなくなるケースもないわけではありません。このようなケースでは、プロである宅建業者を信頼して取引したにも関わらず、一般の顧客は多大な損害を被ることになります。
保証金制度は、こうした宅建業者との取引によって発生した損害を保証するために定められています。宅建業法では、購入者等の利益保護を目的として保証金制度を定めているのです。
1-1.保証金制度の仕組み
宅建業法が規定する保証金制度は、「営業保証金制度」と「弁済業務保証金制度」の2つです。両制度は細かな違いはあるものの、宅建業者と取引きをした顧客にとっては、どちらも保証金の支払いを受けられる点で共通しています。
宅建業者は、あらかじめ供託所(法務局)に決められた金額を保証金として預けておきます。もし、宅建業者が顧客に支払いができなくなった場合には、供託所に預けてあったお金から支払いがなされます。宅建業者は営業を開始する前に保証金を預けるため、経営の悪化により保証金が減ってしまうことはありません。
1-2.営業保証金と弁済業務保証金の違い
営業保証金と弁済業務保証金の大きな違いは、供託所に供託するまでの流れにあります。営業保証金の場合、宅建業者が直接供託所にお金を預けます。
一方で、弁済業務保証金の場合、複数の宅建業者が弁済業務保証金分担金を保証協会に支払い、保証協会が供託所にお金を預けます。つまり、宅建業者と供託所の間に保証協会が入るか入らないかが大きな違いとなっているのです。
なお、弁済業務保証金分担金の場合、複数の宅建業者で保証金を支払う分、金額が営業保証金よりも少なくなっています。基本的には弁済業務保証金分担金を選択するケースが多いですが、何らかの理由で保証協会に加入できない場合には、高額な営業保証金を支払うことになります。
1-3.保証金制度の対象外となるケースも
不動産取引の場面では、売主・買主が双方とも宅建業者であるケースも多いです。不動産取引のプロ同士だったとしても不測の損害は発生する可能性がありますが、この場合には、保証金の支払い対象にはなりません。
保証金制度の保護対象は、専門的知識のある宅建業者と取引をした一般顧客です。不動産取引のプロであれば、そこで発生した損害については自分で対処すべきだと考えられているからです。
2.営業保証金のポイント
宅建業法で保証金制度について出題がなされた場合には、まずはどちらの保証金の話なのか正確に理解しましょう。その上で、営業保証金制度について正確に理解する必要があります。
2-1.営業保証金とは
営業保証金とは、その名の通り、宅建業者の営業を保証する資金のことです。宅建業者は、営業を開始する前に供託所に営業保証金を預けます。
もしも何らかの理由により宅建業者の支払いが滞った場合には、あらかじめ預けてあった営業保証金から顧客に対して支払いがなされます。
2-2.営業保証金の供託手続き
営業保証金の供託手続きにつき、詳細を確認していきましょう。
供託する場所 | 本店(主たる事務所) の最寄りの供託所 |
金額(金銭) | 本店:1,000万円 支店:500万円 ※事務所ごとに支払う |
金額 (有価証券等) | 国債証券 →額面の100% 地方債証券、政府保証債証券 →額面の90% その他の有価証券 →額面の80% |
なお、営業開始後に支店が増えた場合には、追加の供託を行う必要があります。
2-3.営業保証金の保管替え
営業保証金は、本店の最寄りの供託所に供託する必要があります。つまり、本店を移転した場合には、移転先の最寄りの供託所に営業保証金を供託し直す必要が出てきます。この際に、営業保証金の保管先を変更することを「営業保証金の保管替え」と呼びます。
保管替えは、もともとの供託先に「新たな供託所に保証金を移して欲しい」ことを伝えることで行います。ただし、有価証券もしくは金銭・有価証券を併用して供託していた場合には、保管替えの請求ができないことに注意が必要です。この場合、本店の移転後に最寄りの供託所に1度供託し、その後、移転前の供託所から保証金を取り戻すことになります。つまり、一時的に二重供託の状態が発生することになります。
2-4.営業保証金の還付
宅建業者が何らかの理由で支払いができなくなった場合には、供託所に預けられた営業保証金から顧客に支払い(還付)が行われます。
宅建業者と宅建業に関する取引をしたことで発生した損害であれば、保証金の支払いが行われます。一方で、「宅建業に関する取引」以外の部分で発生した損害については、たとえ相手が宅建業者であっても保証金を受け取れません。例えば、広告料を払ってもらえない広告業者や宅建業者から給与を払ってもらえない従業員などについては、営業保証金から還付を受けることはできません。
還付請求は、支払いが滞っている宅建業者ではなく供託所に直接行います。また、還付されて減った分の営業保証金については、「不足分の営業保証金を通知を受けた日から2週間以内」に新たに供託を行う必要があります。
2-5.営業保証金の取戻し
一定のケースに該当する場合、宅建業者は供託している営業保証金の全部または一部を取り戻すことができます。
【営業保証金を取り戻せるケース】・免許が失効もしくは取り消しになったとき
・本店の移転で新たに営業保証金を供託したとき
・事務所の一部を廃止したことにより、営業保証金が法定額を上回ったとき
・宅建業者が保証協会に加入し、営業保証金の供託義務が免除されたとき
【営業保証金を取り戻す方法】
・宅建業者の債権者に対して、原則6ヵ月以上の期間を定めてその期間内に権利を申し出るよう官報で公告する
・期間内に権利の申し出がなかった場合、免許権者(国土交通大臣もしくは各都道府県知事)に届出を行う
・証明書を受け取ったら、供託所に対して取戻し請求を行う
なお、以下の3つのケースでは、営業保証金を取り戻す際の公告は不要になります。これらのケースでは、公告をしなくても債権者に迷惑がかからないからです。
・本店の移転先の供託所に営業保証金を供託したとき
・宅建業者が保証協会に加入したとき
・取戻し事由が発生してから10年を経過し、債権が時効で消滅している場合
3.弁済業務保証金のポイント
ここからは、弁済業務保証金のポイントについて解説していきます。
3-1.弁済業務保証金とは
弁済業務保証金制度は、営業保証金制度と同じように一般顧客の損害を保証するための制度です。
弁済業務保証金制度を利用する場合、宅建業者は加入する保証協会に弁済業務保証金分担金(以下、分担金と言います。)を納付します。保証協会は、納付された分担金を弁済業務保証金として供託所(法務局)に供託することになります。
3-2.弁済業務保証金分担金とは
宅建業者が実際に支払うことになる分担金の詳細は、以下の通りです。
納付先 | 保証協会 |
金額 | 本店:60万円 支店(事務所ごとに):30万円 ※ 有価証券で納付は不可 |
なお、保証協会が供託する際には一定の有価証券での供託が認められていますが、宅建業者が納付する弁済業務保証金分担金については、有価証券での納付はできないことに注意が必要です。
3-3.弁済業務保証金の還付
弁済業務保証金の還付を希望する場合、供託所に還付請求する前に、保証協会の認証の申し出を行う必要があります。なお、還付限度額は、宅建業者が保証協会の社員でなかった場合に供託すべきであった営業保証金と同額です。実際に納付した分担金額とは異なる点に注意しましょう。
3-4.還付充当金の納付
還付によって不足した保証金について、宅建業者は「保証協会から通知を受けた日から2週間以内」に、不足額を保証協会に納付する必要があります。還付上限額は営業保証金と同額なので、分担金を超える多額の保証金が必要になる場合もあります。
納付を怠ると、保証協会の社員としての地位を失います。そこから1週間以内に営業保証金を供託しない場合には、指示処分・業務停止処分・免許取消処分などの監督処分の対象となります。
3-5.弁済業務保証金の取戻し
以下に該当する場合には、弁済業務保証金を取り戻せる場合があります。
・宅建業者が保証協会の社員ではなくなったとき・事務所の一部を廃止したことにより、分担金が法定額を上回ったとき
保証協会の社員ではなくなった場合には、6ヵ月以上の期間を定めて官報で公告を行う必要があります。
一方、事務所の一部を廃止した場合には、官報の公告は不要となります。なお、取り戻し請求は宅建業者ではなく保証協会が行う点にも注意しましょう。
※宅建士試験の初心者が最短合格を目指す勉強方法について、こちらにて解説をしています。
→ 宅建士試験初心者の勉強方法を6つのステップで解説!科目別の攻略法も
※宅建士試験を独学合格を目指す方法について、こちらにて解説をしています。
→ 宅建にゼロから独学合格は可能?きつい?一発合格を目指すための戦略
4.受験指導校を利用して保証金制度を正確に理解しよう
「営業保証金」と「弁済業務保証金」について、もっとわかりやすく説明してほしいと思われたなら、受験指導校の質の高い講義を利用することをお勧めします。文章だけではよくわからない制度も、図表を用いたテキストに沿ってわかりやすく解説してもらうことで、より深く理解することができます。
宅建士試験において、宅建業法は得点源にすべき科目です。満点もしくは9割得点したいと考えると、出題頻度の高い保証金制度については、落とせない問題だと言えます。一見すると難しく感じる保証金制度ですが、出題されるポイントさえ掴んでしまえば、角度を変えて出題されたとしても確実に得点することができるでしょう。
「保証協会って何?」「支払う金額が安いなら営業保証金を利用するメリットがないのでは?」など、より深く制度を理解したい場合には、受験指導校の講義を受けることをお勧めします。
5.まとめ
◉保証金制度の目的は、宅建業者と取引をする一般顧客の利益保護
◉保証制度は「営業保証金」と「弁済業務保証金」の2種類
◉営業保証金は、宅建業者が直接供託所にお金を預けるため高額になる
◉弁済業務保証金は、複数の業者が保証協会に分担金を納付することになるため低額になる
宅建業法で保証金制度を勉強する際は、制度趣旨や両者の違いを意識することが重要です。また、供託(納付)から還付までの流れを図で頭に入れておくと、どちらの話をしているのか判断しやすいでしょう。
ただし、どうしても理解しきれない場合には、宅建試験に精通している受験指導校のサポートを受けることをお勧めします。本気で宅建試験合格を目指すなら、伊藤塾でぜひ一緒に勉強しましょう。
「今年はさらにバージョンアップしたコースをご用意!!「2025年合格目標 宅建士合格講座」 のご紹介です!」
伊藤塾の「宅建士合格講座」は、2025年からバージョンアップし、よりカリキュラムが充実しました。
◉本試験の分析を徹底して行い、重要事項はもちろん、出題され易いテーマや、合格後の実務を見据えて、把握しておいた方が良い個所を重点的に学習
◉受験生のビジョンに合わせた「3コース」をご用意
◉ゼロから宅建士試験合格を目指せる「スタンダードコース」
◉難しい「権利関係」の講義時間を手厚くした「スタンダードコースプラス」
◉民法の学習経験者を対象とした「法律既修者コース」
◉分かりやすい講義でテキストを解説するので理解できる
◉講義内で問題の解き方もマスターできる
◉試験傾向を徹底分析して出題されやすいテーマを効率良く講義していくので結果、学習時間が少なくて済む
◉1コマ30分でスキマ時間でも勉強可能
◉スクーリング(4時間)やオンライン質問会(2回)もあるので、わからないことは講師に直接質問が可能など、受講生からの要望に応え、独学のデメリットも解消するため、講座全体を徹底的に改良しました。2025年の宅建士試験に合格したい方は、ぜひ伊藤塾をご活用ください。
→2025年 宅建士合格講座

著者:伊藤塾 宅建士試験科
伊藤塾宅建士試験科が運営する当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、宅建士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。