認定司法書士とは?司法書士との違いや特別研修・認定考査についても解説

簡易裁判所での訴訟代理人業務や支払督促手続きなどをできる司法書士を認定司法書士と言います。認定司法書士になると、従来の司法書士よりも幅広い業務を担当できるようになります。
認定司法書士になるには、特別研修の受講と認定考査の合格が必要です。認定司法書士を目指している方の中には、特別研修や認定考査の内容が気になる方もいらっしゃるでしょう。
今回は、認定司法書士と司法書士との違いに触れたうえで、認定司法書士になる方法や認定司法書士ができること、認定司法書士になるメリット・デメリットを解説します。認定司法書士とは何かについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1.認定司法書士と司法書士との違い
2.認定司法書士になる方法
2-1.特別研修を受講する
2-2.認定考査に合格する
3.認定司法書士ができること
4.認定司法書士になるメリット・デメリット
4-1.メリット
4-2.デメリット
5.まとめ
1.認定司法書士と司法書士との違い
認定司法書士とは、簡裁訴訟代理等能力認定考査(認定考査)に合格して、法務大臣から認定司法書士としての認定を受けた司法書士のことです。
認定司法書士になると、簡裁訴訟代理等関係業務ができるようになります。簡裁訴訟代理等関係業務とは、簡易裁判所の管轄となる訴額140万円以下の事件について訴訟代理人として活動する業務のことです。
具体的には、次の10個の業務について代理する業務が簡裁訴訟代理等関係業務となっています。
◉民事訴訟手続
◉訴え提起前の和解(即決和解)手続
◉支払督促手続
◉証拠保全手続
◉民事保全手続
◉民事調停手続
◉少額訴訟債権執行手続
◉裁判外の和解手続
◉仲裁手続
◉筆界特定手続
参照:司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務の認定|法務省
認定司法書士の制度が始まったのは2002年からです。それ以前は、簡易裁判所が管轄する事件を含む、全ての訴訟代理業務は弁護士の独占業務でした。
認定司法書士の制度が導入されたことで、司法書士はそれまでに弁護士だけが担当していた業務を含む、幅広い業務を担えるようになりました。
認定司法書士と司法書士との違いは、通常の司法書士業務に加えて簡裁訴訟代理等関係業務をできるか否かという点です。
2.認定司法書士になる方法
認定司法書士になるには、まずは司法書士試験に合格する必要があります。そのうえで、日本司法書士連合会主催の特別研修を受講し、その後に行われる認定考査に合格することで、認定司法書士になることができます。
※司法書士試験に合格するための勉強法はこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
→司法書士は独学で合格できる?1年で合格するための勉強法も解説
→司法書士試験の難易度は?他資格との比較や合格するためのポイントを解説
ここでは、特別研修と認定考査の詳しい内容について見ていきましょう。
2-1.特別研修を受講する
令和6年の特別研修は、5月22日から6月30日にかけて行われます。
例年、3月上旬が研修の申込受付期間で、5月末ころから6月にかけて研修が行われています。
特別研修の受講料は、14万5,000円です。研修に必要な参考書籍の購入費用や研修後の考査については別途費用がかかります。
研修内容は、次のパートに分けられており、Web会議システムと会場での集合研修を併用して研修が進められます。
◉基本講義 12時間
◉グループ研修 37時間
◉ゼミナール 18時間
◉実務研修 16時間
◉模擬裁判 13時間
◉総合講義 4時間
特別研修には地域ごとに定員が設けられているため、受講を検討している方は早めの申し込みをおすすめします。
特別研修は、平日に司法書士事務所で勤務しながら受講することも可能です。しかし、平日に集合研修の日程が組みこまれる場合もあるため、司法書士試験に合格してから就職するまでに受講しておくのが良いでしょう。
参照:第23回司法書士特別研修|日司連研修総合ポータル
新人司法書士の方は、新人研修を終えたタイミングで特別研修を受講するのがおすすめです。
※新人研修の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→司法書士合格後の流れとは?研修から登録までの詳細を徹底解説
2-2.認定考査に合格する
認定考査は、例年9月に実施されています。試験時間は2時間で、全問記述式の試験です。
認定考査で問われるのは、事実認定能力、立証活動能力、弁論、尋問技術、倫理など訴訟代理人として活動するのに必要な能力が備わっているか否かです。
認定考査の合格率(認定率)は、過去5年間においては概ね70%台となっています。数字だけを見ると司法書士試験よりも簡単な試験と感じるかもしれませんが、認定考査の受験者は特別研修を受講した司法書士だけです。
そのため、認定考査は、特別研修を受講した司法書士でも約3割が不合格となる、厳しい試験と言うことができるでしょう。
年度 | 考査受講者数 | 認定者数 | 認定率 |
令和5年 | 728人 | 562人 | 77.2% |
令和4年 | 643人 | 420人 | 65.3% |
令和3年 | 591人 | 417人 | 70.6% |
令和2年 | 625人 | 494人 | 79.0% |
令和元年 | 936人 | 746人 | 79.7% |
3.認定司法書士ができること
先に述べた通り、認定司法書士は、通常の司法書士業務に加えて簡裁訴訟代理等関係業務ができます。
改めて簡裁訴訟代理等関係業務の内容を記載します。
◉民事訴訟手続
◉訴え提起前の和解(即決和解)手続
◉支払督促手続
◉証拠保全手続
◉民事保全手続
◉民事調停手続
◉少額訴訟債権執行手続
◉裁判外の和解手続
◉仲裁手続
◉筆界特定手続
認定司法書士になると、請求する金額が140万円以下の事件について、民事訴訟の代理人になることができます。
たとえば、依頼者が100万円の貸金の返済を求めて訴訟を行う際には、依頼者に代わって訴状を提出したり、裁判に出席したりすることが可能です。
司法書士の多くは登記関連の業務をメインとしていますが、認定司法書士になると、債務整理や過払い金、裁判業務なども幅広く対応できるようになります。
4.認定司法書士になるメリット・デメリット
ここでは、認定司法書士になるメリットとデメリットを解説します。
4-1.メリット
認定司法書士になるメリットは、幅広い業務に対応できることです。
司法書士として登記業務をメインに取り扱う場合であっても、他の法律問題について相談を受けることは珍しいことではありません。
認定司法書士であれば、借金問題や相続トラブルなどの法律問題にも自分自身で対応できます。
現在では、司法書士のうち約80%が認定司法書士です。このまま認定司法書士の割合が増加すれば、認定司法書士でなければ依頼者の需要に応えるのが難しい状況になる可能性もあるでしょう。
認定司法書士になれば、司法書士が取り扱う全ての業務に対応できるため、依頼者の需要に応え続けることができます。
4-2.デメリット
認定司法書士になるデメリットとしては、認定を受けるための研修・考査に時間と費用がかかることが挙げられます。
もっとも、時間と費用をかけて認定司法書士になってしまえば、それ以後のデメリットは何もありません。
認定司法書士の会費は他の司法書士の会費と同額です。また、更新手続きや有効期限などもありません。
そのため、司法書士試験に合格したら翌年の特別研修を受講して、就職前に認定司法書士となることをおすすめします。就職前の時間を活用すれば、認定を受けるための時間がかかるというデメリットも問題にならないでしょう。
5.まとめ
認定司法書士になると、従来の司法書士よりも幅広い業務に対応できるようになります。
特別研修と認定考査には時間と費用もかかりますが、司法書士としての需要を確保し、依頼者の需要に応えるためには認定司法書士になるメリットは大きいです。
司法書士としての業務がスタートすると、特別研修を受講する時間の確保が難しくなります。認定考査を受ける場合には、司法書士試験合格、新人研修、特別研修という流れがおすすめです。
なお、直近5年間では概ね70%台の合格率(認定率)となっている認定考査ですが、令和4年が65.3%、平成30年は43.1%と決して油断ができない試験であることも確かです。
伊藤塾では、確実に認定考査を突破するための、基本の「き」から合格レベルまでサポートする認定考査対策講座を開催しています。ぜひ、ご活用ください。

著者:伊藤塾 司法書士試験科
伊藤塾司法書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法書士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。
