中小企業診断士の実務補習は働きながらではきついのか?日程や費用なども解説

中小企業診断士の登録を申請するためには、『中小企業診断士2次試験に合格後、3年以内に「実務補習を受講した日数」または「実務に従事した日数」の合計が15日以上であること』が必要です。
実務補習とは日本中小企業診断士協会連合会(旧 中小企業診断協会)が主催する、中小企業診断士としての実務経験を積むための実習制度です。
実際には、多くの人が実務補習を受講し、中小企業診断士に登録しています。そのため、実務補習について気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では中小企業診断士の実務補習について、日程や費用、働きながら参加できるのか、実務補習を受けなくても登録は可能なのかなど、皆さんが気になっている点を中心に詳しく解説していきます。
実務補習を受講するか迷っている方や、中小企業診断士に興味をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.実務補習とは
1-1.実務補習の概要
1-2.受講資格
1-3.実務補習の日程・スケジュール
1-4.費用(受講手数料)
1-5.実施地区
1-6.申込方法
2.実務補習の具体的な流れ
3.実務補習と実務従事の違いは?
4.中小企業診断士の実務補習に関するよくある質問
4-1.実務補習初日の持ち物や服装は?名刺は必要!
4-2.実務補習は落ちる?
4-3.実務補習は働きながらでも参加できる?きつい?
4-4.実務補習を免除できる?受けなくても登録できる?
4-5.実務補習の5日間コースは無くなった?
5.まとめ
1.実務補習とは
ここでは、実務補習の概要や受験資格、日程や費用について紹介します。
(参考:令和7年2月実施中小企業診断士実務補習について|日本中小企業診断士協会連合会)
1-1.実務補習の概要
中小企業診断士の実務補習は、資格取得後に実務経験を補うための訓練で、15日間コースを1回、もしくは8日間コースを2回のどちらかで実施されます。
(令和7年2月をもって、従来行われてきた5日間コース(×3回)は廃止となります。)
実務補習は日本中小企業診断士協会連合会が主催し、実際の企業を対象に指導員1人と受講生5〜6人がグループとなって診断活動を行い、診断報告書を作成・提出します。
(班によっては副指導員がいる場合があります。)
企業分析、経営課題の発見、改善提案などを通じて、診断士としての実践力を身につけることが目的です。
1-2.受講資格
受講資格は「中小企業診断士試験 2次試験 合格者」かつ「中小企業診断士の登録を受けていない人」です。(2次試験合格の有効期限は3年です。)
そのため、実務従事等を経て、中小企業診断士に登録した後に実務補習を受講することはできません。
1-3.実務補習の日程・スケジュール
実務補習は8日間コースと15日間コースがあります。そのため、実務補習のみで中小企業診断士として登録するためには、8日間コースを2回受講するか、15日コースを1回受講することが必要です。
なお、実務補習は連続して8日間や15日間受講するのではなく、土日を中心に日程が組まれています。
実務補習の実施時期は2月〜3月と、7月〜9月です。詳細の日程は開催地区によって異なります。
実務補習は土日だけでなく、金曜や月曜も実施されるため、会社員の人は有給休暇等を活用して参加する場合が多いです。また、15日間コースは2月〜3月のみの募集となっており、1企業目が8日間、2企業目が7日間というスケジュールです。
1-4.費用(受講手数料)
令和7年度の実務補習の受講手数料は以下の通りです。
テキストを持っている場合 | テキストを持っていない場合 | |
8日間コース | 104,300円(税込) | 105,000円(税込) |
15日間コース | - | 209,300円(税込) |
支払い方法は銀行振込です。申し込みを行った日より2営業日以内に受講手数料を払い込む必要があります。なお、申込後のキャンセル料は以下の通りです(令和7年2月実施分)。
日程区分 | キャンセル料 |
申込締切日まで | キャンセル料なし (全額返金) |
申込締切日以降から実施8日前まで | 受講料の30% (70%返金) |
実施7日前から実施前日まで | 受講料の50% (50%返金) |
実施当日・開始後・無連絡 | 受講料の100% (返金なし) |
1-5.実施地区
実務補習は札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7地区で開催されています。
各地区の中小企業診断士協会が窓口となっています。
1-6.申込方法
申込方法は「インターネットによる申込み」のみです。また、先着順となります。
実務補習は、2次筆記試験の合格発表後に申込が可能となります。
(申込期間例)
<令和6年度の第2次試験において口述試験を受験する資格を得た方>
令和7年1月16日(木)午前10時00分~令和7年1月21日(火)午後5時00分
もし、口述試験が不合格となった場合は全額返金されます。
2.実務補習の具体的な流れ
実務補習の具体的な流れは次の通りです。
1企業あたりの日程 | 主な内容 |
実施4〜5日前 | 指導員からメールにて、企業概要の提示や事前準備作業 の指示を行います。 |
第1日目 | オリエンテーション、経営診断・ヒアリングの進め方、 企業情報収集、役割分担などを行う。 |
第2日目 | 企業等の訪問・調査、資料分析など |
第3日目 | 現状分析、経営課題の抽出、診断方針設定など |
第4日目〜第6日目 | 全体調整、診断報告書の作成 |
第7日目 | 診断報告書の完成、報告会の準備など |
第8日目 | 企業等への報告会など |
*:15日コースの場合は、2企業目の時の第1日目は省略されます。
第1日目の役割分担では、経営戦略、営業、財務、運営管理、人事労務、情報システムのような役割を班員で分担します。
経営戦略を担当する人は、班長も兼任する場合が多いです。また、診断先の企業の状況や、班員の人数によって役割を兼任する場合もあります。実務補習では、得意分野を担当しても良いですし、あえて専門性の低い分野を担当することで自身の成長に繋げることも良いでしょう。
最終的な成果物となる診断報告書は、班員がそれぞれ10〜20ページ程度の報告書を作成し、合計100ページ前後となります。基本的にWordが使用されるため、事前に簡単な使い方を学んでおくと良いでしょう。
3.実務補習と実務従事の違いは?
中小企業診断士の登録を申請するためには、『中小企業診断士2次試験に合格後、3年以内に「実務補習を受講した日数」または「実務に従事した日数」の合計が15日以上であること』が必要です。
実務に従事した日数(実務従事)とは「中小企業者に対する経営の診断助言業務」または「経営の窓口相談業務」を実施した日数のことを指します。その中でも民間団体等が開催する実務補習のような実習研修を実務従事サービスと言います。
したがって、実務補習と実務従事サービスの違いは開催する団体や実習内容です。実務従事サービスは実施団体によって、実習の内容が異なります。
実務補習と同様に、企業への総合的な診断を行う場合もあれば、新規事業提案のように企業のニーズに合わせた内容となる場合もあります。例えば、実務従事サービスでは実務補習ではカバーしていない補助金申請支援について学べる場合があります。そのため、実務補習を一度受講して、残りは実務従事を受講して合計15日として診断士に登録する人もいます。
実務従事サービスは開催場所や日時も開催団体によって異なり、オンライン開催や土日のみの開催の場合もあります。場所や日程の都合で、実務補習の参加が難しい場合に実務従事サービスを検討する人も多いです。
※中小企業診断士試験の実務従事については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→中小企業診断士の実務従事とは?要件は?知り合いの会社でも大丈夫?
4.中小企業診断士の実務補習に関するよくある質問
ここでは中小企業診断士の実務補習に関するよくある質問に回答します。
4-1.実務補習初日の持ち物や服装は?名刺は必要!
実務補習の持ち物は、指導員より前もってメールにて案内されることが多いため、それに準ずれば大丈夫です。
多くの場合、実務補習の初日の持ち物は実務補習テキスト、筆記用具、パソコン、名刺、印鑑です。パソコンは必須ですので、事前に準備しておきましょう。また、初日は名刺交換することが一般的なため、本業の名刺を持っていく事をオススメします。
なお、学生や主婦等で名刺がない場合は、無理に作成する必要はありません。服装は、企業へ訪問するときはスーツで、それ以外は私服となります。
4-2.実務補習は落ちる?
実務補習は、報告書の質が低いから落ちるというようなことはありません。きちんと出席し、報告書作成に取り組めば、全員が実務補習修了証を得ることができます。
4-3.実務補習は働きながらでも参加できる?きつい?
実務補習は土日だけでなく、平日も参加が必要なため、本業とのスケジュール調整が必要です。「実務補習はきつい」「大変だった」という受講生もいるため、本業との兼ね合いを考慮し、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。
4-4.実務補習を免除できる?受けなくても登録できる?
実務補習を免除して、中小企業診断士に登録する方法は2つあります。
1つは実務従事を経て登録する方法、もう1つは養成課程を受講する方法です。
中小企業診断士に登録するためには、中小企業診断士2次試験に合格後、3年以内に「実務補習を受講した日数」または「実務に従事した日数」の合計が15日以上であることが必要です。
そのため、実務補習を受講しない場合は、実務に従事した日数を15日以上確保することにより、中小企業診断士に登録することができます。また、中小企業診断士に登録する方法として、養成課程という選択肢もあります。
養成課程を受講すれば、2次試験と実務補習を免除することができます。ただし、養成課程は費用が高額であり、期間も半年〜2年程度必要なため、2次試験に合格した人のほとんどは実務補習または実務従事を受講し、診断士に登録しています。
※中小企業診断士試験の登録については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→中小企業診断士の登録方法は?費用・期間・手続きを解説!
4-5.実務補習の5日間コースは無くなった?
かつて、実務補習は5日間コースと15日間コースの2コースが開催されていました。しかし、令和6年度より8日間コースが新設され、5日間コースは令和7年7月以降に廃止される予定です。
5.まとめ
今回の記事では中小企業診断士の実務補習のスケジュールや費用、具体的な内容について紹介しました。まとめると以下の通りとなります。
◉実務補習は一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会(旧:中小企業診断協会)が主催
◉1つの班は指導員1人と受講者6人以内で構成される
◉実際に中小企業の経営者にヒアリングを行い、分析と助言を行う
◉実務補習は8日間コースと15日間コースがある
◉実務補習の5日間コースは廃止される
◉実務補習は全国7地区で開催される
◉申し込みはインターネットのみで、先着順となっている
◉実務補習では班員で役割を分担する
◉役割は経営戦略、営業、財務、生産管理、人事労務、情報システムなどがある
◉診断報告書は各班員が10〜20ページ程度の報告書を作成する
実務補習には、多くの中小企業診断士試験の合格者が参加しています。
実務補習を通じて中小企業にコンサルティングを行う経験は、診断士として今後独立する、しないに関わらず、大きな財産となるでしょう。
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著者:伊藤塾 中小企業診断士試験科
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