【宅建士の独立開業】成功のコツと失敗しやすい4つの要因を解説
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宅建士の独立開業は、非常に魅力的な選択肢です。
働き方の自由度が高く、高い年収を実現することも、決して難しくありません。
しっかりと準備して開業し、宅建士として自分の理想の働き方を実現した方がたくさんいます。
もちろん、独立開業するからには、一定のリスクは伴います。
しかし、宅建士の場合、失敗しやすい原因もある程度共通事項があるため、しっかりと準備さえしておけば、成功の可能性を格段に高めることができるのです。
本記事では、
・宅建士で独立開業する魅力
・独立開業にかかる費用
・開業するための具体的な手順
・宅建士が独立開業で失敗する要因
などについて、解説します。
宅建士の独立開業に興味がある方は、ぜひご一読ください。
※宅建士の資格の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【完全版】宅建とは?試験の詳細や宅建士の仕事内容など資格のすべてを徹底解説!
【目次】
1.宅建士は独立開業もできる資格
2.独立に必要な開業資金は300万
2-1.宅建業免許の申請手数料(3万3,000円)
2-2.保証協会又は保証協会の費用(100万円〜)
2-3.事務所の開業費用(125万円〜)
2-4.その他の諸経費(20万〜)
2-5.当面の営業維持費(60万〜)
2-6.人件費(人を雇う場合)
3.宅建士が独立開業するまでの流れ
3-1.【STEP①】宅建士証を交付してもらう
3-2.【STEP②】事務所を設置する
3-3.【STEP③】宅建業免許の申請をする
3-4.【STEP④】保証協会へ加入する
4.儲かるの?宅建士が独立開業した場合の年収
5.宅建士で独立開業するメリット
5-1.自由が手に入る
5-2.在庫を抱えるリスクがない
6.宅建士が独立開業で失敗する原因
6-1.集客に苦戦する
6-2.固定費が高い
6-3.開業する場所が悪い
6-4.未経験又は実務経験が不足している
7.宅建士の独立開業にはダブルライセンスが効果的
8.まとめ
1.宅建士は独立開業もできる資格
宅建士は、独立開業も十分に目指せる資格です。
特に不動産仲介業では、会社で一定の経験を積んだ後、独立開業する人が数多く見られます。
宅建士が、独立開業しやすいのは、次のような理由からです。
・新規参入者でも、容易に物件を探すことができるから・開業資金が比較的安いから
不動産物件の情報は、「レインズ」などの情報システムを通じて公開されているため、新規開業者でも、容易に物件を探すことができます。
さらに、ビジネスモデル的に、在庫を確保する必要もないため、在庫管理のコストもかかりません。
つまり、宅建士の資格を活かして独立開業すれば、少ない資金で自分の力を試すことができるのです。
経営が順調に進めば、大きな収入を得ることも夢ではありません。
ただし、開業後の成功には、営業力や経営力が求められます。独立開業を目指す際は、しっかりとしたスキルを身に着けて、入念に事前準備を行いましょう。
※【Q&A】レインズとは?不動産仲介業者が、物件情報を確認するためのシステム。
多くの物件が一元的に公開されているため、レインズを利用することで、新規参入者でも、多くの物件を紹介することができるのです。
2.独立に必要な開業資金は300万
不動産保証協会によれば、宅建士が宅建業者として開業するために必要な資金は、「約400万〜1000万」とされています。
もっとも、これには当面の生活費なども含まれています。純粋な開業費用は「最低300万程度」が目安になるでしょう。
【開業費用の内訳】
免許の申請 | 3万3000円 |
営業保証金 | (1000万) |
保証協会の費用 | 90万円 |
事務所の初期費用 | 125万〜410万 |
その他の諸経費 | 20万〜150万 |
当面の営業維持費 | 60万〜200万 |
人件費 | ー |
内訳について、それぞれ説明します。
2-1.宅建業免許の申請手数料(3万3,000円)
宅建業を開業するには、宅建士資格とは別に「宅地建物取引業免許」が必要です。
免許の申請費用は、「3万3,000円」です。
2-2.保証協会又は保証協会の費用(100万円〜)
宅建業を開業する場合、「営業保証金の供託」または「保証協会への加入」が必要です。
【それぞれの費用】
営業保証金を納付する場合 | 1000万 |
保証協会に加入する場合 | 90万程度 |
新規の開業時に「1000万」を準備することは現実的ではありません。そこで、多くの会社が「保証協会」を利用しています。
保証協会に加入する場合、
「弁済業務保証金分担金(60万)+加入費や会費などの初期費用(40万程度)」
が発生します。
なお、保証協会には、
・全国宅地建物取引業保証協会(通称:ハトマーク)
・不動産保証協会(通称:ウサギマーク)
の2種類がありますが、どちらに加入しても、差し支えありません。
それぞれ、必要な初期費用や加入者数が異なるため、自分の状況に応じて選択しましょう。
2-3.事務所の開業費用(125万円〜)
事務所の開設には、次のような費用がかかります。
・物件の費用(敷金、礼金、家賃、リフォーム代など)
・オフィス用品の購入
・通信環境の整備(インターネット、電話など)
事業用として、物件を賃借する場合、初期費用として半年から1年分の敷金が必要となる場合も多いです。そのため、物件費だけで100万円程度は見積もっておく必要があるでしょう。
事務用品や通信費も含めると、トータルで125万円程度の資金が必要です。
2-4.その他の諸経費(20万〜)
その他の諸経費としても、最低20万円以上は見積もっておきましょう。
例えば、
・事務用品(消耗品)
・名刺や印鑑
などが必要です。
また、集客のために広告を作成したり、ホームページを作成する場合もあるでしょう。車を所有していない場合、営業車も準備する必要があります。
さらに、開業当初から法人としてスタートする場合、会社設立費用としても「20万円程度」が必要です。
2-5.当面の営業維持費(60万〜)
毎月の維持費についても、最低数カ月分は確保しておく必要があります。
例えば、賃料、光熱費、通信費、備品のリース代などは、売上が上がっていなくても、毎月必ず発生します。
営業維持費は、事業の体力そのものです。
多めに見積もっておくほど、営業に時間をかけれるため、開業が成功する可能性が高くなります。
2-6.人件費(人を雇う場合)
人を雇う場合は、人件費も必要です。
ただし、開業時からいきなり従業員を雇用するケースは、あまり多くはないでしょう。
どうしても雇用が必要な場合は、給与体系にインセンティブ制度などを活用することで、比較的安く抑えることができます。
3.宅建士が独立開業するまでの流れ
宅建士が独立開業するまでの基本的な流れは、次のとおりです。
① 宅建士証を交付してもらう② 事務所を設置する
③ 宅建業免許の申請をする
④ 保証協会へ加入する
それぞれ見ていきましょう。
3-1.【STEP①】宅建士証を交付してもらう
宅建士試験に合格しただけでは、宅建士として働くことはできません。
宅建士になるには、試験合格後に「資格登録」を行い、宅建士証を交付してもらう必要があります。
なお、資格登録には、
・2年以上の実務経験
・登録実務講習の受講
のいずれかが必要です。
※資格登録〜宅建士証交付の流れについては、次の記事で詳しく解説しています。
→宅建士登録の流れとは?必要書類や費用など宅建士証交付までの手順を全解説!
3-2.【STEP②】事務所を設置する
事務所は、必ず「宅建業免許の申請」よりも前に設置する必要があります。
事務所を設置していないと、宅建業免許を取得することができないからです。
なお、自宅(戸建て)と兼用でも構いませんが、必ず次のような条件を満たす必要があります。
・専用の出入り口があること
・居住スペースと明確に区切られており、独立性があること
・事務所としての機能を備えていること
自宅で開業しようとしている場合も、リフォーム等で思わぬ費用が発生する可能性があります。
・条件にあった事務所を確保できるか
・(自宅で開業する場合)自宅が条件を満たせそうか
については、十分に確認しましょう。
場合によっては、専門の行政書士などに相談することも一案です。
3-3.【STEP③】宅建業免許の申請をする
事務所の設置が完了したら、「宅建建物取引業免許」の申請を行います。
宅建業免許を取得するためには、次の条件を満たすことが必要です。
・条件を満たした事務所を設置している・専任の宅建士を配置している
・欠格事由に該当しない
1人で開業する場合、自分が専任の宅建士になります。そのため、事務所要件さえ満たしていれば、大きな問題が生じるケースは少ないです。
申請先は、設置する事務所の数によって異なります。
申請先 | |
1つの都道府県内に 設置する場合 | 都道府県知事 (各都道府県の窓口) |
複数の都道府県に 設置する場合 | 国土交通大臣 (地方整備局の窓口) |
個人で新規に開業する場合、基本的に「各都道府県の窓口」に申請するケースが多いです。
3-4.【STEP④】保証協会へ加入する
前述のとおり、営業保証金「1000万円」を供託しない場合、保証協会への加入も必要です。
・全国宅地建物取引業保証協会(通称:ハトマーク)
・不動産保証協会(通称:ウサギマーク)
いずれかの団体に加入して、必要な費用(弁済業務保証金分担金など)を納付したら、いよいよ営業スタートです。
4.儲かるの?宅建士が独立開業した場合の年収
宅建士が独立開業した場合の年収は、個人の努力やスキルによって異なります。
独立開業は、下限も上限もない世界です。つまり、収入が安定しないリスクがある一方で、頑張り次第で、高収入を得られるチャンスもあるのです。
例えば、開業した会社が大きくなった結果、年収1億円以上を稼げるようになった宅建士もいます。もちろん、そのためには優秀な営業力と経営能力が必要不可欠です。
独立当初は集客に苦戦することもあるでしょう。事務所の家賃や固定費で、経営が苦しくなることもあるかもしれません。安定した収入を得るためには、一定の時間と努力が必要です。
しかし、着実に実績を積み重ねていけば、徐々に収入も増えていきます。
開業から数年で、年収1000万円を達成する宅建士は珍しくありません。宅建士の独立開業は、リスクもありますが、夢も大きい世界です。自分の力を信じて、一つ一つ成果を積み重ねていけば、高い年収を得ることも十分に可能です。
ただし、安易に独立することは禁物です。まずは、独立開業に必要なスキルや経験を身に着けて、事業計画の作成や開業資金の確保など、必要な準備を行っていきましょう。
5.宅建士で独立開業するメリット
宅建士が独立開業するメリットには、大きく分けて2つあります。
1つ目は「自由が手に入る」こと、2つ目は「在庫を抱えるリスクがない」ことです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
5-1.自由が手に入る
宅建士が独立開業する最大のメリットは、自由が手に入ることです。
会社に勤めている間は、決められた時間や場所で、上司の指示に従って働く必要があります。しかし、独立開業すれば、自分の意思で仕事を選べるようになるのです。
働く時間や場所、休日の設定など、全て自分の裁量で決めることができます。
例えば、
・家族との時間を大切にする
・今しかない子供との時間を楽しむ
・売上拡大を目標に限界まで働く
・プライベートな時間を大切にする
など、自分の価値観に応じて、自由に稼働時間を調整することができるのです。
もちろん、顧客からの要望に応えることは必要ですが、選択する権利を持っているのは自分です。
会社から拘束されず、自分のペースで自由に働けるのは、独立開業の最大の魅力だといっても過言ではないでしょう。
5-2.在庫を抱えるリスクがない
在庫を抱えるリスクが無いことも、宅建業の大きなメリットです。
例えば、販売業や飲食業など、多くの業種では、在庫管理が最大のリスクになります。
仕入れをしないと売上が伸びない一方で、仕入れ方を間違えると売れ残りが発生して、莫大な損失を抱えてしまうからです。
在庫管理の失敗が原因となって、廃業に追い込まれるケースも珍しくありません。
しかし、賃貸物件の仲介では、物件そのものを仕入れる必要はありません。
物件情報を集めて、顧客のニーズに合う物件を紹介するビジネスモデルなので、在庫リスクが極めて低いのです。仮に、紹介した物件が成約に至らなかったとしても、仲介手数料が発生しないだけで、在庫を抱えるおそれはありません。
つまり宅建業では、固定費さえ稼げれば廃業しないため、低リスクで開業できるのです。
そして、仕入れの必要が無いにも関わらず、経営が軌道に乗ると、売上は青天井に拡大していきます。
ローリスクで開業できる上、大きな収入を目指せることは、宅建士ならではのメリットだと言えるでしょう。
6.宅建士が独立開業で失敗する原因
ここでは、宅建士が独立開業で失敗する主な原因について説明します。
宅建士が失敗しやすい原因を把握し、事前に備えておくことで、独立開業の成功率を格段に高めることができます。
【宅建士が独立開業で失敗する原因】・集客に苦戦する
・固定費が高い
・開業する場所が悪い
・未経験または実務経験が不足している
それぞれ見ていきましょう。
6-1.集客に苦戦する
宅建士が独立開業で失敗する最大の原因は、集客に苦戦することです。
宅建業界は競争が激しく、新規参入者が顧客を獲得するのは容易ではありません。
特に、開業当初は知名度も低く、営業活動に苦労することが多いです。
集客に成功するためには、自分の強みを活かしたマーケティング戦略を立てて、地道な営業活動を続けていく必要があります。
例えば、開業前から人脈を構築したり、SNSなどを使って情報発信し、知名度を上げておいたりすることが効果的です。
6-2.固定費が高い
独立開業すると、事務所の賃貸料や人件費など、一定の固定費が発生します。
収入が安定しない開業当初は、固定費の負担が重くのしかかるでしょう。
特に、最初から大きな事務所を契約したり、人を雇ったりしていると、固定費が経営を圧迫し、収支が悪化する可能性が高くなります。
事業が軌道に乗るまでは、できる限り固定費を抑えることが賢明です。
資金が少ない場合は、自宅を事務所として利用できないか検討するなど、スモールスタートを心がけましょう。
6-3.開業する場所が悪い
宅建業では、立地が収益に大きく影響します。
「集客の難易度」「売上の金額」「賃料などの固定費」などの様々な要素が、立地によって大きく変わってくるからです。
そのため、開業する場所を誤ってしまうと、経営が苦しくなる可能性が高くなります。
例えば、都心の一等地に事務所を構えれば集客は容易ですが、賃料が高額になってしまいます。安定して収益を上げるには、単価の高い物件を中心に扱うなどの工夫が必要になるでしょう。
一方で、人通りの少ない場所に事務所を構えると、集客の難易度は上がりますが、固定費も安くなります。WEBなどを上手く活用できれば、固定費を抑えつつ営業できるかもしれません。
開業する場所によって、独立開業の成功率は大きく変わってきます。
集客の見込みと賃料のバランス、物件の需要や競合状況を十分に調査し、慎重に開業場所を選ぶことが必要です。
6-4.未経験又は実務経験が不足している
宅建士が独立開業しやすい資格であることは、間違いありません。
しかし、当然ながら、資格を取得しただけで独立開業することは難しいです。
例えば、資格取得後、未経験から独立したり、実務経験が不足した状態で独立すると、失敗する可能性は高くなります。
営業面で苦戦するだけでなく、契約書の作成や各種手続きなど、業務全般に支障をきたす恐れもあるため、注意が必要です。
まずは、宅建士として会社に勤務し、必要な経験やスキルを身につけましょう。
並行して、事業計画の作成や、人脈の構築などを行い、一定の実績を積んでから、独立することをオススメします。
7.宅建士の独立開業にはダブルライセンスが効果的
宅建士の独立開業を成功させるためには、ダブルライセンスの取得が効果的です。
宅建士に加えて、司法書士や行政書士などの資格を取得することで、幅広いサービスを提供できるようになるからです。
例えば、宅建士と司法書士のダブルライセンスであれば、不動産取引の契約書作成だけでなく、登記手続きまで一貫して対応可能です。
行政書士の資格があれば、飲食店の営業許可申請や建設業の許可申請なども、宅建士の知識を活かして請け負えるでしょう。
ダブルライセンスを活かせば、他社にはない強みをアピールできます。
開業後の収益アップにもつながるため、宅建士の独立開業を目指す方は、積極的に検討したい選択肢の1つです。
※宅建士とのダブルライセンスやトリプルライセンスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
→宅建士とのダブルライセンスがおすすめな資格9選!独立に役立つ資格も
→司法書士・行政書士・宅建士のトリプルライセンスが最強!難易度も解説
8.まとめ
最後に、今回の記事の要点をまとめます。
◉ 宅建士は、独立開業しやすい資格
◉ 独立開業に必要な資金は300万が目安
◉ 仕入れが必要ないため、開業リスクが低い
◉ 失敗しやすい要因もある程度決まっている
◉ 低リスクだが、大きな収入も目指せるのが魅力
宅建士の独立開業は、自由度が高く、年収1000万以上も目指せる非常に魅力的な選択肢です。しっかりと準備して開業すれば、リスクを最小限に抑えつつ、自分の理想とするワークスタイルを実現できるでしょう。
宅建士になりたいという強い想いがある方は、ぜひ法律専門指導校である伊藤塾をご活用ください。
伊藤塾の「宅建士合格講座」は、2025年からバージョンアップし、よりカリキュラムが充実しました。◉本試験の分析を徹底して行い、重要事項はもちろん、出題され易いテーマや、合格後の実務を見据えて、把握しておいた方が良い個所を重点的に学習◉受験生のビジョンに合わせた「3コース」をご用意
◉ゼロから宅建士試験合格を目指せる「スタンダードコース」
◉難しい「権利関係」の講義時間を手厚くした「スタンダードコースプラス」
◉民法の学習経験者を対象とした「法律既修者コース」
◉分かりやすい講義でテキストを解説するので理解できる
◉講義内で問題の解き方もマスターできる
◉試験傾向を徹底分析して出題されやすいテーマを効率良く講義していくので結果、学習時間が少なくて済む
◉1コマ30分でスキマ時間でも勉強可能
◉スクーリング(4時間)やオンライン質問会(2回)もあるので、わからないことは講師に直接質問が可能など、受講生からの要望に応え、独学のデメリットも解消するため、講座全体を徹底的に改良しました。2025年の宅建士試験に合格したい方は、ぜひ伊藤塾をご活用ください。
→2025年 宅建士合格講座
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著者:伊藤塾 宅建士試験科
伊藤塾宅建士試験科が運営する当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、宅建士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。