真の法律家・行政官を育成する「伊藤塾」
 
2009.01.03

第161回 2009年 謹賀新年

今年は、貧困・格差の問題がより深刻化するのみならず、アフガニスタンでの国際貢献のあり方をめぐって憲法9条関連の議論が再燃するでしょう。裁判員制度が始まることによって、刑事裁判のあり方がよかれ悪しかれ、劇的に変わるはずです。そして、総選挙がありますから、政権交代、政界再編の可能性もあり激動の年となるでしょう。

塾生の皆さんの生活にもさまざまな変化があるかもしれません。弁護士増員時代という環境変化にどう対応するのか。法律家としての司法書士という時代の要請にどう応えていくのか。試験に合格した後も変化への対応が求められます。

こうした社会や環境の変化に直面したときの身の処し方は、その人の生き方にも関わってくる問題です。いくつかの対処法があるように思います。

まず、時代の流れに逆らうことなく、変化する環境に身を任せるという方法があります。自然体と言ってもいいかもしれません。風に乗ってひらひら舞う木の葉のように、先行きを思い煩うことなく、たどり着いたところが自分の運命の場所というような考え方です。

これは一見、何も考えない楽な生き方のように見えて、実は環境に合わせて常に自分を変えていかなければなりませんから、かなり強い意志の力が必要です。柔軟に自分を変えることは思ったほど簡単ではありません。

もう少し主体性を持って、環境を自分で選択して生きるという方法もあります。現在の環境が自分に合わないということであれば、自分に合う環境を探してそこに移っていくのです。自分に合ったよりよい環境を求めて努力するといってもよいでしょう。しかし、その選択が正しいかどうかわかりませんから、常に不安と隣り合わせです。

さらに自分を強く出して、時代や環境に抗いながら、今の自分をそのままに維持していく生き方もあります。抵抗も強く、生きづらい不器用なやり方です。強引、頑固に見えるかもしれません。自分を取り巻く環境が変わったとしても、自分の生き方を変えないわけですから心理的な不安やプレッシャーは相当なものとなることがあります。

最後に、自分を取り巻く環境自体を自分に合うように変えてしまおうという生き方もあります。本人が意図して周りを変えるときもあれば、自然に周りが変わっていくこともあるでしょう。これは個人の生き方のレベルを超えて、社会に影響を与える生き方といってもよいものです。

こうしてみるとどれも楽ではありません。環境や時代の変化に対応するということは、どのような対応方法をとったとしても、精神的には負荷がかかり、つらいものです。ならばいっそのこと、あえて時代に抗い、自分の信念に基づいて社会を変えるくらいのつもりで生きる方が自分も成長でき、かつ大きな価値を生むように思えるのです。

時代に抗う。そして、ぶれない。
こういう不安定な時代だからこそぶれないことが大切だと感じます。

原理原則をもって生きる。ぶれない。
基本を大切にする。ぶれない。
個人の尊重という憲法価値。ぶれない。
志の高い法律家になるという夢。ぶれない。
戦争のない平和な社会の実現をめざす。ぶれない。

今年一年そんな生き方ができたらと思います。




 

伊藤真塾長

伊藤 真

伊藤塾 塾長

司法試験・公務員試験対策の「伊藤塾」塾長・伊藤真の連載コーナーです。
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