社労士試験の受験資格とは?高卒・実務経験なしでも受験可能?などわかりやすく解説

社会保険労務士(以下、社労士)試験に挑戦したいけれど、自分が受験資格を満たしているか不安な方も多いのではないでしょうか?「高卒でも受験できるの?」と気になっている方もいるかもしれません。
本記事では、社労士試験の受験資格について、学歴や実務経験に関する条件を中心にわかりやすく解説します。注意点も紹介していますので、受験を考えている人はぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.社労士試験とは?
1-1.社労士の仕事とは
1-2.社労士試験はどんな試験?
2.社労士試験の受験資格
2-1.「学歴」の要件
2-2.「実務経験」の要件
2-2-1.受験資格を満たしているか確認する方法
2-3.「試験合格」の要件
3. 受験資格を満たしていることを証明する方法(提出書類)
3-1.「学歴」の受験資格証明書類
3-2.「実務経験」の受験資格証明書類
3-2-1.実務経験証明書にはどんなことを記載する?
3-3.「試験合格」の受験資格証明書類
3-4.過去受験
4. 高卒者が受験資格を満たす方法
5. よくある質問(FAQ)
6.まとめ
1.社労士試験とは?
社労士試験は、厚生労働大臣が実施する国家資格試験です。社労士として業務を行なっていくためには、原則として社労士試験に合格し、全国社会保険労務士会連合会に登録しなければなりません。
1-1.社労士の仕事とは
社労士は労働・社会保険・年金の専門家です。社労士が行う業務は、具体的には以下のように定められています。
①労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成②申請書等の提出代行
③申請等についての事務代理
④都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続の代理
⑤都道府県労働局における障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法及びパートタイム・有期雇用労働法の調停の手続の代理
⑥個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理 (紛争価額が120万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
⑦労務管理その他の労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導
このうち①〜③の業務については、社労士の資格がない者は他人から報酬を得て行なってはいけない、いわゆる「独占業務」とされています。また社労士試験合格後、さらに紛争解決手続代理業務試験に合格すると④〜⑥の労使紛争トラブルのあっせん業務も行うことが可能です。
(参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト|社会保険労務士制度について)
このように社労士の業務範囲は法律によって厳格に定められており、一定の社会的地位が保証されているといわれています。
1-2.社労士試験はどんな試験?
社労士試験は、労働法や社会保険関連法令に関する専門的な知識を有し、労働者や企業に対して適切なアドバイスやサポートを提供する資格を得るための試験です。
社労士試験について気になるポイントをまとめました。
◉試験形式はすべてマークシート。文章記述や口述試験はない。
◉出題される科目は労働基準法、健康保険法、厚生年金保険法など、大きく10科目。
◉合格者の約8割が社会人で、多くの人が働きながら勉強し合格している試験である。
※社労士試験の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→社労士試験とは?試験日程や科目・合格点など試験内容について分かりやすく解説
→社労士の難易度は?合格率や勉強時間など他資格と比較して分かりやすく解説!
2.社労士試験の受験資格
社労士試験の受験資格の種別は『①学歴』『②実務経験』『③厚生労働大臣の認めた国家試験合格』の3つに分けられ、この中のいずれか1つを満たしている必要があります。
2-1.「学歴」の要件
「学歴」を満たすための要件は、以下の項目のいずれかに該当している必要があります。
《注意》
「高等学校卒業」は学歴要件を満たしません。
学歴 | |
コード | 受験資格 |
01 | 大学、短大、高専等卒業 学校教育法による大学、短期大学、専門職大学、専門 職短期大学若しくは高等専門学校(5年制)を卒業した者 又は専門職大学の前期課程を修了した者 |
02 | 大学(短期大学を除く)における修得単位数 上記の大学(短期大学を除く)において62単位以上の 卒業要件単位を修得した者 上記の大学(短期大学を除く)において一般教養科目 と専門教育科目等との区分けをしているものにおいて 一般教養科目36単位以上を修得し、かつ、専門教育科 目等の単位を加えて合計48単位以上の卒業要件単位を 修得した者 |
03 | 旧法令による旧制高校、大学予科、専門学校卒業 旧高等学校令による高等学校高等科、旧大学令による 大学予科又は旧専門学校令による専門学校を卒業し、 又は修了した者 |
04 | 厚生労働大臣が認めた学校(88種)卒業 前記01又は03に掲げる学校等以外で、厚生労働大臣が 認めた学校等を卒業し又は所定の過程を修了した者 |
05 | 専門学校卒業 修業年限が2年以上で、かつ課程の修了に必要な総授業 時間数が1700時間(62単位)以上の専修学校の専門課 程を修了した者 |
14 | 各種学校等卒業 全国社会保険労務士会連合会において個別の受験資格 審査により学校教育法に定める短期大学を卒業した者 と同等以上の学力があると認められる者(各種学校等) |
2-2.「実務経験」の要件
「実務経験」を満たすための要件は、以下の項目のいずれかに該当している必要があります。
《注意点》
いずれも「通算して3年以上」の従事期間が必要です。また、単純事務では条件を満たしません。実務経験により受験資格を満たせるかどうかは次章「3. 受験資格を満たしているか確認する方法」も参考にしてください。
実務経験 | |
コード | 受験資格 |
08 | 労働社会保険諸法令の規定に基づき設立され た法人の役員又は従業者 労働社会保険法令の規定に基づいて設立された法人の 役員(非常勤の者を除く) 又は従業員として同法令の実施事務に従事した期間が 通算して3年以上になる者 |
09 | 国又は地方公共団体の公務員等・日本郵政公 社の役員又は職員・全国健康保険協会又は 日本年金機構の役員又は従業員 国又は地方公共団体の公務員として行政事務に従事し た期間及び行政執行法人(旧特定独立行政法人)、 特定地方独立行政法人(旧特定独立行政法人)、 特定地方独立行政法人又は日本郵政公社の役員又は 職員として行政事務に相当する事務に従事した期間が 通算して3年以上になる者 |
11 | 社会保険労務士又は弁護士の補助者 社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人又は 弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護 士共同法人の業務の補助の事務に従事した期間が通算 して3年以上になる者 |
12 | 労働組合の専従役員・会社その他の法人 (法人でない社団又は財団を含む)の労務 担当役員 ・労働組合の役員として労働組合の業務に専ら従事 (専従)した期間が通算して3年以上になる者 ・会社その他の法人(法人ではない社団又は財団を 含み、労働組合を除く。以下「法人等」という。) の役員として労務を担当した期間が通算して3年以上 になる者 |
13 | 労働組合の職員又は法人等若しくは事業を 営む個人の従業者 労働組合の職員又は法人等若しくは事業を営む個人の 従業者として労働社会保険諸法令に関する事務に従事 した期間が通算して3年以上になる者 |
2-2-1.受験資格を満たしているか確認する方法
実務経験について受験資格を満たしているか判断に迷った場合は、試験申込の受付期間外でも試験センターに問い合わせをして事前に確認することができます。
問い合わせは定型の様式によって行う必要がありますので、詳しくは「社会保険労務士試験オフィシャルサイト|受験資格・免除資格の事前確認」ページを確認してください。
2-3.「試験合格」の要件
「試験合格」を満たすための要件は、以下の項目のいずれかに該当している必要があります。
試験合格 | |
コード | 受験資格 |
06 | 社労士試験以外の国家試験(79種)合格 社会保険労務士試験以外の国家試験のうち厚生労働大 臣が認めた国家試験に合格した者 |
07 | 司法試験予備試験等の合格 司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一 次試験、旧司法試験の第一次試験又は高等試験予備試 験に合格した者 |
10 | 行政書士試験の合格 |
コード06の「社労士試験以外の国家試験」の詳細は「厚生労働大臣が認めた国家試験」にて確認ができます。
(参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト|受験資格について)
3. 受験資格を満たしていることを証明する方法(提出書類)
社労士試験の受験申込時には、それぞれの受験資格を満たしていることの証明書類が必要で、出願時に一緒に提出します。資格コードによって必要書類が異なりますので、確認しておきましょう。
3-1.「学歴」の受験資格証明書類
「学歴」を証明するためには、以下の書類が必要です。
学歴 | ||
コード | 受験資格 | 提出書類 |
01 | 大学、短大、高専等卒業 | 次のいずれか。 (1)卒業証明書若しくは修了証明書 又はその写し (2)卒業証書の写し (3)学位記の写し |
02 | 大学(短期大学を除く) における修得単位数 | 大学の成績証明書又はその写し |
03 | 旧法令による旧制高校、 大学予科、専門学校卒業 | 次のいずれか。 (1)卒業証明書若しくは修了証明書 又はその写し (2)卒業証書の写し |
04 | 厚生労働大臣が認めた 学校(88種)卒業 | 次のいずれか。 (1)卒業証明書若しくは修了証明書 又はその写し (2)卒業証書の写し ※外国語の証明書の場合は全文を 和訳した文書を添付してください |
05 | 専門学校卒業 | 次のいずれか。 (1)「専門士」若しくは「高度専門 士」の称号が付与されていること を証明する書面又はその写し (2)【試験センター様式】専修学校 修了者受験資格証明書又はその写し |
14 | 各種学校等卒業 | 次のいずれか。 (1)卒業(修了)証明書又はその写し (2)成績(単位修得)証明書 又はその写し (3)カリキュラム等又はその写し (修業年限、授業時間数、授業科目 数、必要単位数等が記載されてい るもの) |
3-2.「実務経験」の受験資格証明書類
「実務経験」は、いずれの場合も試験センターが用意している様式を使用します。
実務経験 | ||
コード | 受験資格 | 提出書類 |
08 | 労働社会保険諸法令の規定に基づき 設立された法人の役員又は従業者 | (試験センター様式) 実務経験証明書 又はその写し |
09 | 国又は地方公共団体の公務員等・日 本郵政公社の役員又は職員・全国健 康保険協会又は日本年金機構の役員 又は従業員 | |
11 | 社会保険労務士又は弁護士の補助者 | |
12 | 労働組合の専従役員・会社その他の 法人(法人でない社団又は財団を 含む)の労務担当役員 | |
13 | 労働組合の職員又は法人等若しくは 事業を営む個人の従業者 |
3-2-1.実務経験証明書にはどんなことを記載する?
実務経験は自己申告だけでは受験資格として認められず、第三者による証明が必要です。
証明者=職歴上の代表者・事業主・任命権者ということになるため、複数の事業所の経験期間を通算する場合などは前の雇用主に連絡を取る必要が出てくることもあるでしょう。
【証明者が記入する事項】
・証明者の情報(社名、役職など)・受験申込者の実務経験に関すること
①従事期間
②会社等の名称
③所属部署名
④従事した事務内容(箇条書きで具体的に記載)
証明書には原則として、証明者の「社判(会社印)」及び「代表者等の役職印」の2つの押印が必要です。実務経験の証明をする場合は、時間に余裕をもって準備した方がよいでしょう。
(参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト|様式集)
3-3.「試験合格」の受験資格証明書類
「試験合格」を証明するためには、以下の書類が必要です。
試験合格 | ||
コード | 受験資格 | 提出書類 |
06 | 社労士試験以外の 国家試験合格 | 原則として、次のいずれか。 (1)合格証明書又はその写し (2)合格証書の写し |
07 | 司法試験予備試験 等の合格 | |
10 | 行政書士試験の合格 | 次のいずれかとします。 (1)合格証明書又はその写し (2)合格証書若しくは証票 又は会員証の写し |
3-4.過去受験
その他、過去に社労士試験を受験したことがある場合などは、以下の書面を添付することで受験資格の証明とすることができます。
・直近3年間に実施された社労士試験の受験票または成績(結果)通知書・社労士試験科目の一部免除決定通知書の写し
受験資格の証明には一苦労する場合もありますので、試験を受けたあとの受験票や成績(結果)通知書は破棄せず大切に保管しておくことをおすすめします。
(参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト|受験資格及び受験資格証明書)
4. 高卒者が受験資格を満たす方法
2章で解説したとおり、高校卒業では「学歴」要件を満たさないため、別の要件を満たす必要があります。ここでは高卒者が社労士試験の受験資格を満たすための、おすすめの方法をご紹介します。
<おすすめの3つの方法>
①行政書士試験に合格する
社労士試験の受験資格を得るために行政書士試験に合格する、というのは一見遠回りのように思う人もいるかもしれませんが、社労士と行政書士は業務の関連性が高い資格です。
社労士・行政書士のダブルライセンスで活躍の場を広げることができるため、行政書士資格を取得しておいて無駄になることはないでしょう。また行政書士試験は、効率よく勉強すれば600〜1,000時間ほどの勉強時間で取得可能な試験です。
働きながらでもおよそ10ヵ月〜11ヵ月で合格できる可能性があるという計算になるので、もっとも短期間で社労士試験の受験資格を獲得しうる方法といえます。
※行政書士試験については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→行政書士試験 資格・試験ガイド
→行政書士試験合格に必要な勉強時間とは?目安や平均・最短合格のポイントについて解説
※社労士と行政書士のダブルライセンスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→社労士と行政書士の難易度の違いは?どっちが先?ダブルライセンスもおすすめ
②短期大学を卒業する
働いている人や家庭がある人にとって、四年制大学や専門学校を卒業することは時間や費用の面からハードルが高くなりがちです。しかし短期大学であれば、四年制大学よりも短期間で卒業でき、費用も比較的抑えることができるため挑戦しやすいかもしれません。なかには通信制や土日に授業がある学校もあり、仕事や家庭との両立も可能でしょう。
また、社労士試験の試験科目に関連した学部(法学部や経済学部など)を専攻できれば、試験勉強もアドバンテージがある状態からスタートできるという点もメリットです。さらに社労士試験の勉強をしながら短期大学を卒業できれば、最短2年ほどで社労士試験の受験が可能になるので効率的でもあります。
③社労士事務所で補助者の仕事に就く
この方法は少なくとも3年以上の期間が必要ですが、実務の経験を積みながら社労士試験の勉強をしていけば合格後のキャリア形成もスムーズにいくことが期待できます。実際の社労士の仕事を身近に感じることができる点もメリットです。
なお、一般企業で「実務経験」の受験資格を満たすことも可能ですが、自分の希望した部署に配属され、かつ必要な期間配置転換なく継続して実務に携わることができるかどうかはわかりません。そのため実務経験でより確実に受験資格を得るためには、社労士事務所で補助者の仕事に就くことをおすすめします。
5. よくある質問(FAQ)
◉社労士試験の受験資格に年齢制限はありますか?
社労士試験の受験資格には、年齢制限はありません。未成年者でも、受験資格を満たしていれば受験は可能です。例えば社労士試験の受験資格の一つに「行政書士試験合格」がありますが、行政書士試験の受験資格は「年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます」となっていますので、所定の資格試験に合格さえしていれば年齢は関係なく未成年でも受験可能です。
なお、令和5年度社労士試験合格者の最年少者は21歳、最高齢者は76歳でした。
社労士試験は、何歳からでも、何歳になっても挑戦できる資格です。
(参考:一般財団法人 行政書士試験研究センター)
(参考:【第55回社会保険労務士試験合格者の年齢別・職業別・男女別構成】)
◉大学を中退していても受験できますか?
大学を中退していても、修得単位数によっては受験資格を満たす可能性があります。
「学歴」のコード02の条件を確認してみましょう。
◉外国籍でも受験できますか?
社労士試験の受験資格には国籍の制限はありません。
外国籍の人も、条件を同じように満たすことで受験ができます。ただし外国の大学卒業の場合、学歴要件を満たす基準が日本国内の大学の場合と異なりますので、注意が必要です。詳しくは社労士試験センターに確認しましょう。
(参考:厚生労働大臣が認めた学校等(受験資格コード04関係))
6.まとめ
最後に、今回の記事の要点をまとめます。
◉社労士試験の受験資格を満たすには、「学歴」「実務経験」「試験合格」のいずれかの要件を満たす必要がある。
◉学歴が高校卒業でも、受験資格を得られる可能性がある。
◉「実務経験」の受験資格要件の証明には事業主等の協力が必要なので早めの確認、準備を。
社労士は、社労士にしかできない独占業務が存在する社会からの信頼性が高い資格です。
そして簡単に取得できる資格ではないからこそ、社会において求められるスキルを持っているといえるでしょう。
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著者:伊藤塾 社労士試験科
伊藤塾 社労士試験科が運営する当コラムでは、社会保険労務士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。